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【腰痛でも労災になる?】 業務上の腰痛が認定される「腰痛の労災認定基準」とは

こんにちは。つばさ社会保険労務士事務所の玉城です。
本記事では、腰痛が労災と認定される条件やそのハードルの高さ、そして事業所としてどう向き合うべきかをわかりやすく解説します。

💡 まず知っておきたい「腰痛の労災認定基準」

厚生労働省では、腰痛を次の2種類に分類し、それぞれに異なる認定基準を設けています。
※いずれも、医師が療養の必要を認めた場合に限られます。

 

✅ ①災害性の原因による腰痛(=突発的な出来事が原因)

以下の2つの条件を両方とも満たす必要があります:

  • 仕事中の突発的な出来事(例:転倒や急な荷物持ち上げ)によって腰に強い力が加わった

  • その力が原因で腰痛が発症、または悪化したと医学的に確認できる

👉いわゆる「ぎっくり腰」でも、急激な力が加わったと医学的に説明できれば労災認定の可能性があります。

 

✅ ②災害性の原因によらない腰痛(=日々の作業負担が原因)

突発的な事故がなくても、業務内容や作業環境によって慢性的に腰部に負荷がかかり、筋肉疲労や骨の変化が生じた場合は、労災として認定される可能性があります。

▼【筋肉疲労が原因】(約3ヶ月以上の従事)

以下のような業務が該当します:

  • 20kg以上の重量物を繰り返し中腰で取り扱う

  • 毎日極めて不自然な姿勢を数時間続ける

  • 長時間立ち上がれず、同じ姿勢を続ける(例:長距離運転)

  • 腰に強い振動が加わる作業

▼【骨の変化が原因】(約10年以上の継続従事)

  • 30kg以上の重量物を3時間以上扱う業務

  • 20kg以上の重量物を4時間以上扱う業務

👉長期間にわたり腰に過度な負荷がかかっていたと医学的に証明されることが必要です。

 

🪑 椅子に座っての業務(=事務職)は労災になるの?

結論から言うと、事務職のように座り続ける業務は、労災認定が極めて難しいのが現状です。

  • 腰を適度に伸ばすことができると判断される

  • 「不自然な姿勢の持続」や「立ち上がれない業務」には該当しない

つまり、椅子に長時間座っている=不自然な負担とは見なされにくいのです。

 

📋 判断に必要な調査項目とは?

災害性のない腰痛が業務起因と判断されるかどうかは、次のような観点で検討されます:

  • どれくらいの就労期間中か

  • どれくらいの労働時間か

  • どのような重さの物を、どのような頻度で運んでいたか

  • どのような姿勢をとる必要があったのか

  • 筋肉疲労や骨の変化が医学的に確認できるか

  • その腰痛の原因が、医学的に「業務によるもの」といえるか

  • 同種業務に従事している他の労働者の状況

👉こうした詳細な事実確認が必要なため、認定までに時間がかかることも多く、申請のハードルも高いのが実情です。

 

🤝 それでも、希望があれば支援を

被災した従業員が「労災申請をしたい」と希望する場合、企業としては可能な限り支援することが望まれます。

  • 勤務実態の説明や勤務記録の提出

  • 申請書類への記入

  • 医師や労基署からの問い合わせ対応への協力

たとえ最終的に認定されなかったとしても、「会社が支えてくれた」という安心感は、従業員の信頼や職場へのエンゲージメント向上につながります。

 

✍ まとめ|腰痛の労災認定は「申請できても、簡単に認められるとは限らない」

腰痛は、加齢や生活習慣などの私的要因も多く関係するため、業務起因性を証明するハードルが高いのが実情です。
労働者自身が申請できる制度ではありますが、認定までの道のりは簡単ではありません。

だからこそ、企業側としては

  • 腰痛の予防(姿勢・作業環境の整備)

  • 申請希望者へのサポート

 

この両面から、職場環境の改善と従業員の安心を支える姿勢が求められます。


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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