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建設業における一人親方の労災リスクと法改正について

 

近年、建設業における労働災害は減少傾向にあるものの、一人親方等の死亡災害は依然として深刻な課題です。特に、墜落・転落事故が多く、適切な安全対策が求められています。本記事では、最新の労働災害状況と2025年4月に施行される新たな安全対策義務化について解説します。 

建設業の一人親方等の労災状況

厚生労働省の報告によると、2019年から2023年の5年間で、一人親方等の死亡者数は合計435人に上り、その主な原因は以下の通りです。

  • 墜落・転落事故(64%)
  • 崩壊・倒壊(5%)
  • はさまれ・巻き込まれ(5%)
  • 飛来・落下(3%)
  • その他(19%)

特に、建築工事において発生する事故が半数以上を占めており、安全管理の強化が不可欠となっています。

 

2025年4月からの新たな安全対策義務化

2025年4月より、一人親方等に対する安全対策の義務化が施行されます。これにより、事業者は労働者だけでなく、一人親方等に対しても労働者と同等の安全措置を講じることが求められます。

 

主な安全措置のポイント

  • 危険箇所への立入禁止措置
  • 火気使用禁止区域での管理強化
  • 事故発生時の適切な退避措置
  • 保護具の使用義務の周知徹底

これにより、一人親方等の安全が確保されるとともに、事業者側の責任がより明確化されることになります。

 

熱中症対策の重要性

2024年7月、沖縄県今帰仁村の工事現場で70代の作業員が熱中症により死亡しました。労働基準監督署の調査によると、現場には法令で定められた塩あめやスポーツドリンクなどの塩分補給のための備品が置かれていなかった疑いがあり、個人事業主が労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されました。

名護労働基準監督署は、「熱中症は建設業で最も多く発生している。予防対策の注意喚起を行い、重大な事案には厳正に対処していく」とのコメントを発表しています。

熱中症対策は単なる安全管理の一環ではなく、命を守るための必須事項です。現場の責任者は、作業員の健康を守るために、こまめな水分補給や塩分補給を徹底し、適切な休憩時間を確保することが求められます。

 

労災保険の特別加入の重要性

一人親方等は労働基準法上の「労働者」ではないため、通常の労災保険の適用外となります。しかし、労災事故に備えるためには、労災保険の特別加入制度の利用が不可欠です。

 

特別加入のメリット

  • 万が一の事故でも補償を受けられる
  • 療養費や休業補償が適用される
  • 遺族補償があるため家族の安心につながる

特別加入を希望する場合は、特別加入団体を通じて申請する必要があります。詳細は最寄りの労働局または労働基準監督署で確認できます。

 

今後も法改正の動向や最新の安全対策情報を発信していきます。安全第一で業務に取り組みましょう!