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2025年年金制度改革で沖縄企業が知っておくべきポイント

沖縄の経営者・人事担当者の皆さま、こんにちは。つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。

 

2025年5月、国会で年金制度改革法案の審議が大きな山場を迎えています。特に注目すべきは「基礎年金底上げ案」の復活議論です。この制度改正は、沖縄県内の中小企業にも大きな影響を与える可能性があります。今回は、この年金制度改革について、沖縄の企業経営の視点から解説いたします。

 ※5月27日時点。今後の国会審議において修正される可能性があります。

▲法案説明資料(厚生労働省)

🌟 今回の年金制度改革法案の概要

主要な改正ポイント

2025年5月16日に閣議決定された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」では、以下の項目が盛り込まれています:

  • 被用者保険の適用拡大
  • 在職老齢年金制度の見直し
  • 遺族年金の見直し
  • 標準報酬月額の上限の段階的引上げ
  • 個人型確定拠出年金の加入可能年齢の引上げ

これらの改正は、働き方の多様化に対応し、ライフスタイルや家族構成の変化を踏まえた制度設計を目指しています。

 

注目の「基礎年金底上げ案」とは

 

当初削除されていた基礎年金底上げ案が、与野党協議により復活の可能性が高まっています。この案は、財政が比較的良好な厚生年金の積立金を活用して、就職氷河期世代以降の低い年金給付を防ぐ仕組みです。

🏢 沖縄企業への具体的な影響

1. 被用者保険適用拡大の影響

沖縄県内の中小企業では、パートタイム従業員の割合が比較的高い業種が多いため、この適用拡大は特に重要です。

対応のポイント:

 

  • 短時間労働者の労働条件見直し
  • 社会保険料負担の増加に対する準備
  • 従業員への丁寧な説明とコミュニケーション

 企業規模要件の撤廃スケジュール

 短時間労働者が社会保険の対象となる企業の規模は、今後10年かけて段階的に縮小・撤廃されます。

従業員数(常時) 社会保険の適用開始時期
36人以上 2027年10月~
21人以上 2029年10月~
11人以上 2032年10月~
10人以下 2035年10月~

(注1)企業規模のカウント方法に注意

この「従業員数」は、厚生年金の通常の被保険者数(週30時間以上などフルタイムの4分の3以上)が基準になります。被保険者数は下記サイトで調べることができます。

厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム(日本年金機構)

 

(注2)法人単位で判断される

 複数の店舗や事業所があっても、別法人であれば個別に判定されます。
グループ企業で一体的に運営していても、法人ごとに要件を満たさなければ強制適用にはなりません 

 

2. 在職老齢年金制度見直しの活用

沖縄では、定年後も働き続ける意欲の高いシニア世代が多いのが特徴です。在職老齢年金制度の見直しにより、高齢者雇用がより柔軟になる可能性があります。

活用のメリット:

  • 経験豊富なシニア人材の継続雇用促進
  • 人手不足の解消への貢献
  • 世代間の知識・技術継承の円滑化

📋 企業が今すぐ取り組むべき対策

制度理解と社内周知

まずは経営陣と人事担当者が制度改正の全体像を正確に把握することが重要です。その上で、従業員への適切な情報提供を行いましょう。

就業規則・賃金制度の見直し準備

年金制度改革に伴い、就業規則や賃金制度の見直しが必要になる場合があります。特に以下の点を検討してください:

  • パートタイム従業員の労働条件
  • 高齢者雇用に関する規定
  • 退職金制度との整合性

従業員のライフプラン支援強化

年金制度の変更は、従業員の将来設計に大きく影響します。企業として、従業員のライフプラン支援を強化することで、エンゲージメント向上につながります。

 

🌺 沖縄特有の課題と対策

県外企業との人材競争

沖縄では県外企業との人材確保競争が激しさを増しています。年金制度改革を機に、従業員の老後安心につながる制度設計を行うことで、人材確保・定着の差別化要因とすることができます。

観光・サービス業での活用

沖縄経済の基盤である観光・サービス業では、パートタイム労働者が多く、年金制度改革の影響を受けやすい業界です。制度改正を前向きに捉え、従業員の処遇改善につなげることで、サービス品質の向上も期待できます。

 

💪 今後の展望と準備

年金制度改革法案は5月中の衆院通過、今国会での成立が濃厚です。施行時期や具体的な内容が確定次第、速やかな対応が求められます。

準備のステップ:

  1. 最新情報の継続的な収集
  2. 社内体制の整備・見直し
  3. 従業員への適切な情報提供
  4. 専門家との連携強化

🤝 まとめ

年金制度改革は、単なる制度変更ではなく、従業員の将来安心と企業の持続的成長を両立させる機会でもあります。従業員一人ひとりが安心して働き続けられる環境づくりに取り組んでいきましょう。

 

制度改正への対応でお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。つばさ社会保険労務士事務所では、沖縄の企業様の実情に合わせたきめ細かなサポートを提供いたします。


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

▶コラム: 私が社労士になった理由