こんにちは、つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。
人手不足が深刻化する中、急な欠員や繁忙期対応として「スポットワーク」を活用する沖縄県内の企業様が急速に増えています。しかし、手軽に利用できる一方で、労務管理上のリスクを十分理解せずに活用している企業様も少なくありません。
実際に、厚生労働省が令和7年7月に発表した資料では、スポットワークに関する労働相談や申告が全国で増加していることが明らかになりました。
▲「スポットワーク」の労務管理(厚生労働省)
📊 スポットワークの現状と労務リスク
なぜスポットワークで労務トラブルが増えているのか?
スポットワークは、雇用仲介アプリを通じて短時間・単発の労働契約を結ぶ働き方です。労働者にとっては柔軟な働き方が可能で、事業主にとっては一時的な人手不足を迅速に解決できる便利なサービスです。
しかし、この便利さの裏には重要な落とし穴があります。
主な労務トラブル事例:
- 始業開始前の準備時間に対する賃金未払い
- 労働条件の明示不備
- 休業手当の支払い漏れ
- 労働時間の管理不適切
⚖️ 労働契約成立のタイミングを正しく理解していますか?
「応募=契約成立」の原則
多くの経営者が見落としがちなのが、労働契約の成立タイミングです。
重要ポイント: スポットワークでは、面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人の場合、事業主が掲載した求人に労働者が応募した時点で労働契約が成立すると一般的に考えられます。
つまり、「応募があった瞬間から労働基準法等の義務が発生する」ということです。
契約成立後のキャンセルにも要注意
労働契約成立後の一方的な解約(キャンセル)は、労働者保護の観点から非常に問題があります。事業主都合での直前キャンセルは、労働者の準備を無駄にし、他の就労機会を奪う可能性があるため、十分な配慮が必要です。
💰 見落としがちな賃金・労働時間管理のポイント
準備時間も労働時間です
多くの企業が見落とすポイント:
- 制服への着替え時間
- 業務に必要な準備行為
- 清掃等の後始末
- 事業主の指示による待機時間
これらはすべて労働時間として扱い、適切に賃金を支払う必要があります。
実労働時間の速やかな確認が重要
スポットワーカーから労働時間の修正申請があった場合、事業主は速やかに確認し、労働時間を確定させる必要があります。賃金は労働者の生活の糧であることを十分に理解し、遅滞なく支払うことが求められます。
🛡️ 休業手当の支払い義務
事業主都合で丸1日の休業や仕事の早上がりをさせる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当(平均賃金の6割以上)の支払い義務が発生します。
🔧 適切な労務管理のための実践的対策
1. 労働条件の明示を確実に
労働条件通知書の交付は事業主の義務です。スポットワーク仲介事業者が代行する場合でも、内容の確認は事業主の責任です。
2. 労働時間管理の徹底
- 始業・終業時刻の正確な記録
- 準備時間・後始末時間の適切な管理
- 待機時間の労働時間該当性の検討
3. 安全配慮義務の履行
- 労働安全衛生法に基づく教育の実施
- ハラスメント防止措置の整備
- 労災保険の適用確認
🏥 沖縄の中小企業特有の課題への対応
沖縄県内の中小企業では、観光業や小売業でのスポットワーク活用が特に多く見られます。これらの業種では、以下の点に特に注意が必要です:
- 繁忙期と閑散期の労働時間管理
- 多言語対応を含む労働条件の明示
- 地域特性を踏まえた安全配慮
📞 まとめ:適切な労務管理で安心してスポットワークを活用
スポットワークは適切に活用すれば、事業運営の強力なツールとなります。しかし、「知らなかった」では済まされない法的義務があることを十分に理解し、適切な労務管理を行うことが重要です。
労務トラブルは、企業の信頼失墜や経営リスクに直結します。事前の適切な対策により、これらのリスクを回避し、安心してスポットワークを活用できる環境を整えましょう。
🔹 スポットワークの労務管理でお困りではありませんか?
つばさ社会保険労務士事務所では、沖縄県内の中小企業様向けに、スポットワークを含む柔軟な働き方に対応した労務管理体制の構築支援を行っております。
- 就業規則の見直し・作成
- 労働条件通知書のテンプレート作成
- 労働時間管理体制の整備
- ハラスメント防止措置の策定
無料相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由