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その支払い、実は違法かも!? 賃金トラブルを防ぐ“基本のキ”とは

企業の総務担当者や給与計算を担当する方にとって、賃金の支払いに関する法令の理解は欠かせません。本記事では、労働基準法に基づく賃金の支払いルールや、実務上注意すべきポイントについて解説します。

1. 賃金の確実な支払い

賃金は労働者にとって生活の基盤となる重要なものです。そのため、労働基準法第24条において、賃金の支払いについて以下の原則が定められています。

  • 通貨払い:現金で支払うことが原則。ただし、労働者の同意があれば銀行振込なども可能。

  • 直接払い:労働者本人に支払う。

  • 全額払い:一部控除などを除き、全額を支払う。

  • 毎月1回以上支払い:少なくとも月に1回以上支給。

  • 一定期日払い:支払日を事前に決め、その日に支払う。

これらの原則を守らないと、労働基準監督署からの指導や是正勧告を受ける可能性があります。給与の未払いは従業員の生活に大きく影響を及ぼすため、確実な管理が求められます。

 

2. 退職金・社内預金の保全措置

退職金制度を設けている場合、その確実な支払いのために保全措置を講じる努力義務があります(賃金の支払の確保等に関する法律第3条、第5条)。

また、社内預金制度(会社が従業員の給与の一部を預かる制度)がある場合、預金の確実な返還措置も必要です。企業が倒産した際に労働者が保護されるよう、一定の対策を取ることが求められています。

 

3. 休業手当の支払い義務

企業側の都合で従業員を休業させた場合、労働基準法第26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。

例えば、

  • 業績不振による一時帰休

  • 自社の設備故障による操業停止 など、使用者側の責任で労働ができない場合は休業手当の支払いが必要です。

一方で、天災や労働者の都合による休業は「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないため、休業手当の支払い義務は生じません。

 

4. 未払い賃金の立替払制度

企業が倒産した場合、未払いの賃金が発生することがあります。このような場合に備え、未払賃金の立替払制度が設けられています。

これは、労働者健康安全機構が事業主に代わって未払い賃金の一部を立替払いする制度で、退職日の6か月前から未払いとなっている賃金や退職金が対象です。

申請には、労働基準監督署への報告と証明書類の提出が必要となりますので、倒産リスクを抱えている企業は事前に対応を検討することが重要です。

 

まとめ

賃金の支払いに関する法令を遵守することは、企業にとって重要な責務です。特に、

  • 賃金の確実な支払い

  • 退職金・社内預金の保全措置

  • 休業手当の適正な支払い

  • 未払い賃金の立替払制度の活用

これらのポイントを押さえ、適切な労務管理を行うことで、企業と労働者の信頼関係を築くことができます。正しい知識を持ち、実務に生かしていきましょう。

つばさ社会保険労務士事務所では、賃金の適正な支払いに関するアドバイスや、労務管理のサポートを行っています。お困りの際は、お気軽にご相談ください。