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「うちには関係ない」は通用しない!見落としがちな法令違反の落とし穴

厚生労働省が発表する「労働基準関係法令違反に係る公表事案」では、毎年多くの企業が労働基準法や労働安全衛生法に違反していることが明らかになっています。特に、長時間労働の問題や安全対策の不備が目立ちます。本記事では、どのような違反が多いのか、企業がどのような点に注意すべきかを解説します。

 

1. 代表的な違反事例

厚生労働省の公表事案を基に、代表的な違反事例を紹介します。

① 違法な長時間労働

労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働は原則として禁止されており、時間外労働を行う場合は36協定を締結しなければなりません。しかし、多くの企業でこのルールが守られておらず、

  • 36協定の締結・届出を行わずに時間外労働をさせる

  • 36協定の延長時間を超える労働をさせる

といった違反が後を絶ちません。

違反事例:

  • 36協定の届出なしに違法な時間外労働を行わせる → 送検

  • 12か月間の時間外労働に対する割増賃金を支払わず → 送検

② 最低賃金法違反

最低賃金を下回る賃金を支払うことは違法です。特に、中小企業や個人事業主の間で発生しやすく、

  • 労働者に定期賃金を支払わない

  • 法定の最低賃金を下回る賃金を支給する

といった事例が報告されています。

違反事例:

  • 労働者に計111万円の賃金未払い → 送検

  • 1か月間分の定期賃金未払い → 送検

③ 労働安全衛生法違反

建設業や製造業では、安全対策の不備が労働災害につながるケースが多数あります。特に、

  • 高所作業での墜落防止措置の欠如

  • 無資格者に危険な作業を行わせる

  • 労働災害が発生した際の報告義務違反

といった違反が目立ちます。

違反事例:

  • 高さ2.7mの屋根上で墜落防止措置を怠る → 送検

  • 無資格者に建設機械を運転させる → 送検

  • 労働災害を偽装し虚偽報告 → 送検

2. 企業が注意すべきポイント

① 適切な労働時間管理を徹底する

長時間労働が発生しないようにするためには、

  • 36協定を締結・届出する

  • 勤怠管理をデジタル化し、労働時間を可視化する

  • 過労死ライン(80時間/月)を超えないよう監視する

といった対策が必要です。

② 賃金支払いの適正化

労働者に適正な賃金を支払うためには、

  • 最低賃金を定期的にチェックする

  • 未払い賃金が発生しないよう、給与計算の見直しを行う

  • 退職者への最終給与支払いを遅延させない

といったポイントを押さえましょう。

③ 労働安全対策の強化

安全対策の不備は重大な労災事故につながります。

  • 高所作業では墜落防止措置(安全帯・ネットなど)を徹底

  • 有資格者のみが特定の業務を行うルールを守る

  • 労働災害が発生した場合は速やかに報告する

これらの対策を実施し、労働者の安全を守ることが企業の責任です。

 

まとめ

労働基準関係法令違反は、労働者の安全や生活に直結する重大な問題です。特に、長時間労働、最低賃金違反、安全対策の不備が多く見られます。企業は、法律を遵守し、労働環境の適正化を進めることで、従業員の満足度向上や企業イメージの向上につなげることができます。

 

「知らなかった」では済まされない労働法規。適切な対応で、健全な職場を作りましょう。