
2025年4月、LCC「ジェットスター・ジャパン」の客室乗務員に対し、適切な休憩を与えていなかったとして、東京地裁が同社の労基法違反を認定しました。
ジェットスターに賠償命令 客室乗務員ら「休憩なしは違法」訴え
この判決は、「休憩時間とは何か?」「どう与えるべきか?」という基本を企業が見直す大きなきっかけとなります。
今回は、労働基準法における休憩時間の定義と運用上の注意点について、沖縄の企業・人事担当者の皆さまにわかりやすくお伝えします。
1. 休憩時間は法律で定められています
労働基準法第34条では、勤務時間に応じて以下の休憩時間を「途中に」与えることが義務付けられています。
労働時間 | 最低休憩時間 |
---|---|
6時間超~8時間以下 | 45分 |
8時間超 | 60分 |
※「途中に」というのは、始業前や終業後ではなく、労働の合間に与える必要があるという意味です。
2. 自由利用の原則を守れていますか?
休憩時間は、従業員が自由に使える時間でなければなりません。
NG例(違法と判断される可能性あり)
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休憩中に来客対応を命じる
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休憩終了5分前の着席を義務づける
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休憩時間中に合間に清掃業務などを行わせる
急な対応で休憩が取れなかった場合は、代替の休憩時間を確保する必要があります。
3. 休憩を与えなかった場合のリスク
労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
「忙しくて昼休憩が取れなかったが、8時間分の賃金を支払ったから問題ない」――この対応は違法です。
4. 休憩の分割や柔軟な運用も可能です
休憩時間は、原則に則っていれば分割付与も可能です。
例:
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30分+30分で計1時間
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中抜け時間を休憩としてカウントする(在宅勤務等)
5. 裁判例に学ぶ:休憩とみなせる条件とは?
今回の東京地裁判決では、「心身の緊張度が低い時間」でないと休憩とは言えないと判断されました。
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単なる“空き時間”ではNG
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その時間に清掃・安全確認などを行っていれば休憩と認められない
6. 時短勤務・在宅勤務など働き方に応じた対応も必要
働き方が多様化する中で、一律の運用ではなく個別に対応する視点が求められます。
時短勤務
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原則6時間以下なら休憩義務なし
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ただし残業で6時間を超える場合は休憩必須
在宅勤務
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通常勤務と同様に休憩付与が必要
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就業規則や労使協定でルールを明確化しましょう
まとめ:休憩時間は“健康を守るための権利”
今回の判例は、休憩の「名ばかり付与」では通用しないという強いメッセージです。
従業員の健康を守るために、法律を正しく理解し、実態に合わせた運用が必要です。
企業としての信頼性を損なわないためにも、今一度、休憩の取り扱いを見直してみましょう。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
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