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【見落とし注意】処遇改善手当は「割増賃金の基礎」に含める必要があります

介護や保育の職場でよく聞く「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」。

これらは、職員の処遇を改善する目的で国から事業者に支給される加算金を原資とした手当です。

実際、多くの事業所ではこの手当を「毎月の給与」として支給していますが、
割増賃金(時間外・休日・深夜手当)の計算に含めていないというケースも少なくありません。

これは、労働基準法上の未払い賃金に該当する可能性があり、注意が必要です。

 

✅ 法律上、原則として「含める」必要があります

労働基準法第37条では、時間外・休日・深夜労働に対しては割増賃金を支払うことが義務付けられており、
その算定基礎に含めなくてもよい手当は、次の7種類のみと明確に定められています。

  1. 家族手当

  2. 通勤手当

  3. 別居手当

  4. 子女教育手当

  5. 住宅手当

  6. 臨時に支払われた賃金

  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

処遇改善手当はこのどれにも該当しないため、原則として割増賃金の基礎に算入すべきとされています。

🔍 実務でも「含めるべき」とされた裁判例

最近の裁判でも、処遇改善加算手当を割増賃金の基礎に含める必要があると判断された事例があります。

介護施設の職員が未払いの時間外手当を請求した事案で、裁判所はこう指摘しました。

「処遇改善加算は介護職員の賃金水準を改善する趣旨の制度であり、
その加算金を使って本来支払うべき割増賃金をまかなってしまうのは制度の趣旨に反する。
また、毎月支払われている処遇加算手当は、割増賃金の計算においても基礎賃金に含めるべきである。」

(松山地判 宇和島支部 令和3年1月22日)

地方裁判所の判断ではありますが、労働基準法とその趣旨に基づいた妥当な見解といえるでしょう。

 

⚠ 沖縄の介護・保育事業者も他人事ではありません

沖縄県内でも、加算金を活用して職員の給与改善に取り組む施設は多く存在します。
しかし、その一方で「補助金だから割増手当に含めなくてよいと思っていた」
「就業規則までは確認していなかった」など、対応が不十分なケースも散見されます。

こうした誤解や見落としが、労働基準監督署の是正指導や訴訟リスクにつながることもあるため、早めの見直しが肝心です。

 

💡 今こそ労務管理の棚卸しを

  • 加算手当は就業規則や賃金規程にどう位置づけているか?

  • 給与明細の記載は適切か?

  • 割増賃金の計算方法は法律に準拠しているか?

これらをきちんと確認し、正しい運用をしていくことが、職員の信頼確保にもつながります。

 

📞 当事務所では、こうしたご相談にも対応しています

つばさ社会保険労務士事務所では、

  • 処遇改善加算の取扱いチェック

  • 賃金制度や規程の見直し支援

  • 労基署調査の事前対策・対応支援

など、現場実務に即したサポートを提供しています。

 

初回相談は無料ですので、「うちは大丈夫かな?」と思ったらお気軽にご相談ください。


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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