こんにちは。沖縄の社会保険労務士・玉城です。
新年度が始まったばかりの4月上旬――
「入社してまだ数日なのに、もう退職代行を使って辞める新卒が急増している」という報道が話題になっています。
📺 テレビ朝日『去年の“倍” 入社直後になぜ?相次ぐ退職依頼』(2025年4月3日放送)
「まさかうちの会社でも…?」と思われた方も、決して他人事ではありません。
▶ ️ たった3日で退職代行に31人。理由の多くは「聞いてた話と違う」
退職代行サービス「モームリ」には、わずか3日間で31人の新卒社会人から退職依頼があったとのこと。昨年の倍にあたります。
主な理由は以下のようなもの:
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給与や手当が求人票と異なっていた
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入社後に初めて休日出勤を告げられた
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思っていた研修内容や社風と大きく違った
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指導方法が不適切(高圧的、矛盾した対応)だった
まさに、「そんなはずじゃなかった」が積もった結果です。
▶ ️ 退職理由の6割は“すれ違い”
退職代行サービスの代表によると、相談内容の傾向は以下の通り:
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2割:ブラック企業など企業側に大きな問題
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6割:企業と新入社員のコミュニケーション不足・認識のズレ
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2割:新入社員側のミスマッチや覚悟不足
つまり、意図せずとも“伝わっていない”情報が原因で辞められてしまうケースが過半数を占めているのです。
▶ ️ 人事・総務ができる現実的な対策
1. 採用時の情報開示を「リアルに、丁寧に」
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勤務時間・給与・業務内容を具体的に、わかりやすく提示
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“若手社員の声”や“1日の仕事の流れ”をコンテンツ化して共有
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大変な部分も包み隠さず、正直に伝える
2. 初期配属後のフォロー体制を強化
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初日〜1週間の不安をどうサポートするか、事前に計画
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メンター制度やチューター制度の導入
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質問・相談が“しやすい空気”を職場に根付かせる
3. 入社後の声を“拾う”仕組みを作る
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1週間後、1か月後にヒアリングやアンケートを実施
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無記名式や匿名チャットで本音を聞きやすくする
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回答がない場合は、むしろ注意サインかもしれない
▶ ️ 昔とは違う。早期退職※即「甘え」ではない
今の若者は、情報に敏感です。SNSで他社の働き方や「リアルな声」に日々アクセスできる環境にあり、“違和感”を覚えた瞬間に行動に移す人も増えています。
そして、「退職代行」はそれを可能にする手段の一つとなっています。
企業が取り組むべきは、
・「うちには問題ない」ではなく、
・「すれ違いが起きないように工夫できているか?」を振り返ること。
▶ ️ まとめ:新入社員の離職は“防げること”もある
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採用時点から「正しく伝える」こと
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入社直後に「ちゃんと迎える」こと
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数日後も「話を聞いてあげる」こと
この3つのサイクルを整えるだけで、「たった3日で辞めたい」と思わせてしまうリスクは大きく減らせます。
また、厚生労働省では『若者が定着する職場づくり取組事例集』として、企業の成功事例をまとめています。 職場改善や人材定着のヒントが詰まっているので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
► 厚生労働省|若者が定着する職場づくり取組事例集(PDF)
当事務所では、
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採用前後のギャップを防ぐための採用設計支援
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新入社員向け定着支援研修の企画
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相談窓口の外部委託(第三者相談)サービス など、
人事・労務に関するお悩みに幅広く対応しています。
「うちの職場も、改めて見直したいな」と思われた方は、お気軽にご相談ください!
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由