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給与を引く=減給?それ、違法かもしれません|欠勤控除と懲戒減給の違いとは

「遅刻や欠勤が多いから、給料から引いておいた」
「指導も兼ねて減給処分にしたよ」

「うちは慣例として1分でも遅刻したら1時間の欠勤としている」

でもそのやり方、法律的には危ないかもしれません。

今回のテーマは、「欠勤控除=働かなかった時間分だけ控除できる」という大原則です。
そして誤解されやすい「懲戒減給との違い」もあわせて整理します。

 

✅ 欠勤控除とは?働かなかった時間分の賃金を払わないこと

まず基本から。
欠勤控除は、働かなかった時間分だけ賃金を支払わないことをいいます。

これは「懲戒処分」ではありません。
単に労働契約で決まった労務提供がなされなかった分、報酬が発生しないだけのことです。

📌 たとえば…

  • 始業9:00のところ9:30に出勤 → 30分分の給与を控除

  • 無断欠勤1日 → その日の給与は発生しない

これが「欠勤控除」です。
それ以上の控除はできません。

 

❌ 働いた時間を超えて給与を引いたら違法になる!

「1時間遅刻したから2時間分引く」
「半日休んだけど、手当全額カットする」

これはすべて違法な賃金控除になりかねません。
なぜなら、労働基準法第24条は「賃金は全額払いが原則」だからです。

欠勤控除できるのは、あくまでも働いていない時間に相当する金額だけ

 

⚠ 減給(懲戒処分)とはまったく別物です

欠勤控除と混同されやすいのが、「懲戒減給」。

 

これは、遅刻や無断欠勤などの企業秩序違反に対する制裁として行う処分で、法律で厳しく制限されています。

区分 欠勤控除 減給処分(懲戒)
意味 働かなかった時間分だけ給与を払わない 懲戒として賃金を減らす
根拠 就業規則、労働契約(就業実態) 労働基準法第91条、就業規則、労働契約
上限 働いていない分まで 1回あたり平均賃金の0.5日分
合計で賃金の10%まで
手続き 欠勤・遅刻の事実があれば可能 弁明の機会など、正当な手続きが必要

 

📄 欠勤控除も就業規則に明記を

欠勤控除は法律で明記された制度ではないため、就業規則や賃金規程でルール化しておくことが実務上重要です。

📝 記載例(賃金規程)

第◯条(賃金の控除)
従業員が欠勤・遅刻・早退した場合は、勤務しなかった時間に応じて基本給および諸手当から控除する。

🚫 減給処分でも「やりすぎ」はNG|懲戒権の濫用に注意

たとえ就業規則に違反していたとしても、過剰な減給処分は「懲戒権の濫用」とされ無効になる可能性があります。

これは労働契約法第15条により、懲戒処分には次の要件が求められているからです。

⇒客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められること

📌 注意したいケース:

  • 1回の遅刻でいきなり減給

  • 同じ行為に対して社員によって処分が異なる

  • 手続きや説明を省略して給与から差し引く

 

🟡 まとめ|引いてよいのは「働いていない時間分だけ」

  • 欠勤控除は「労働の不提供」に対する当然の処理

  • 懲戒減給とは別物で、厳格な上限と手続きが必要

  • 欠勤控除も、就業規則で明文化するのがベスト

  • 引きすぎ・曖昧な処理は、違法リスクに直結

🧭 ご相談ください|ルールの整備から実務対応までサポートします

  • 控除や懲戒のルールが曖昧で不安

  • クラウド勤怠と就業規則の整合性がとれていない

  • 昔のままの規程で実態に合っていないかもしれない

 

そんな時は、つばさ社会保険労務士事務所へ。
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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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