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名目賃金は上がってるのに生活は苦しい? ― 実質賃金マイナスが続く背景とは

沖縄の企業や人事担当者のみなさん、こんにちは。
つばさ社会保険労務士事務所の玉城です。

厚生労働省が公表した「令和7年3月分 毎月勤労統計調査(速報)」によると、名目賃金は3年以上連続で上昇しています。
一見すると、給料が順調に増えているように見えますが
実際には、実質賃金は3カ月連続でマイナスという結果に。

今回は、この“名目はプラス・実質はマイナス”という現象について、企業経営の視点から解説していきます。

 

💴名目賃金とは?実質賃金とは?

  • 名目賃金:支給された給与の金額そのもの

  • 実質賃金:物価変動を考慮した「購買力としての賃金」

物価が上がれば、たとえ名目上の給料が増えていても、実際に買えるモノやサービスは減ることがあります。
今回の統計では、名目賃金が前年比+2.1%である一方、実質賃金は-2.1%(消費者物価指数ベース)でした。

 

📈消費者物価の上昇が止まらない

調査によると、消費者物価指数(総合)は前年同月比で+3.6%の上昇となりました。
とくに、コメや野菜、加工食品などの食品価格が上昇したことが大きな要因とされています。

 

つまり、給与は増えていても、日々の生活コストのほうが早いペースで上がっているため、実質的な購買力は下がってしまうのです。

 

🏢企業への影響と今後の見通し

企業にとっては、「人件費の増加」は経営を圧迫する要因となり得ます。
しかし一方で、実質賃金の低下が続けば、従業員の生活満足度やモチベーションに影響が出ることも。

とくに中小企業では、以下の点に注意が必要です。

✅注目ポイント:

  • 物価上昇に見合う賃上げの検討(ただし無理のない範囲で)

  • 非金銭的報酬の強化(福利厚生、柔軟な勤務制度など)

  • 補助金や助成金の活用(業務改善助成金など)

💬まとめ|賃上げの“質”が問われる時代へ

名目賃金の上昇は一見ポジティブですが、物価高を背景に実質的な生活の質はむしろ後退している可能性があります。
沖縄の中小企業こそ、無理のない範囲で「働きやすさ」と「やりがい」をどう提供していくかが問われています。

 


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

▶コラム: 私が社労士になった理由