
親や家族の介護を理由に、毎年10万人以上が離職していることをご存じでしょうか?
特に今年(2025年)は、団塊世代が75歳を迎え、いよいよ介護が「他人事ではない」時代に突入しました。政府も動き出し、2024年(令和6年)5月の法改正で、企業には【仕事と介護の両立を支える体制づくり】が義務付けられました。
沖縄の中小企業にとっても、放置すれば人材流出や業務の混乱を招く深刻な問題です。
📉介護離職による経済損失は9兆円
厚生労働省や経産省の試算によると、2030年には約9兆円の経済損失が見込まれています。その背景には、介護の長期化、制度への無理解、そして職場の「言いづらさ」があります。
👥介護を経験した人のリアルな声
「もっと早く準備しておけばよかった」
「介護は“話し合い”から始まる」
こうした声が、企業内の研修でも多く聞かれています。
▲「介護離職」10万人超 企業が仕事と介護の両立支援 介護現場では職員の定着が課題(テレビ朝日)
✅企業が取り組むべき5つのステップ(厚労省モデル)
① 実態把握
従業員が「隠れ介護」をしていないか、アンケートやヒアリングで把握します。特に40~50代男性は介護を言い出しにくい傾向にあり、匿名性も工夫が必要です。
② 制度の整備と見直し
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介護休業(最長93日・3回まで)
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介護休暇(年5~10日・時間単位可)
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時差出勤・残業制限・短時間勤務など
これらの制度を就業規則に明記し、従業員に周知することが求められています。
③ 早期情報提供と相談窓口の設置
「親が元気なうちに準備できる職場環境」が理想です。40歳になった従業員に対して制度を案内することも義務化されました。
④ 介護に直面した従業員への支援
面談や個別のプラン(介護支援プラン)を通じて、働きながら介護できる体制を一緒に考えましょう。テレワークやフレックス制度の導入も選択肢です。
⑤ 働き方改革
「制度を作って終わり」ではありません。介護だけでなく、誰もが働きやすい環境づくりが離職防止につながります。
▲【仕事と育児/仕事と介護の両立支援ガイド】[2.7MB]厚生労働省
🧓介護職員の不足も企業に影響
介護サービスを支える職員数は減少傾向で、2024年度は前年比で約2.9万人減。2025年度には25万人が不足すると予測されています。
介護の現場が回らなければ、従業員の家族も十分な支援を受けられず、「自分が介護を担うしかない」という事態にもつながりかねません。
💬まとめ|介護との両立支援は企業の“備え”
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離職リスクを減らす=安定経営につながる
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制度の整備+周知+実践がセットで必要
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沖縄の企業も今こそ「備えるタイミング」
従業員にとっても、企業にとっても、「介護=離職」ではない選択肢をつくることが、これからの時代のスタンダードです。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由