今回は、2025年5月16日に国会へ提出された「年金制度改正法案」の中から、「遺族年金の見直し」にスポットを当てて解説します。
少子化や共働き世帯の増加、家族のかたちが多様化する中で、これまでの制度では不十分だった部分を見直す動きです。
▲法案説明資料(厚生労働省)
🔍遺族年金ってそもそも何?
配偶者や親が亡くなったときに、遺された家族(遺族)に支給される年金のことです。
-
遺族基礎年金:国民年金に加入していた方が対象(主に子のいる配偶者・子どもに支給)
-
遺族厚生年金:厚生年金に加入していた方が対象(子の有無などで受給要件が異なる)
👨👩👦改正のポイントは「男女差の解消」と「子どもへの配慮」
✅ 遺族厚生年金|男女で異なっていた支給要件が改善へ
これまで、妻に比べて夫が遺族厚生年金を受け取るハードルが高く、現実的には受給できないケースが多くありました。
今回の改正では、
-
18歳未満の子どもがいない20代~50代の配偶者(妻も夫も)は、原則5年間の有期給付が新設されます。
-
55歳以上の男性配偶者も、これまでのように「支給対象外」ではなく、女性と同様に遺族年金を受け取れるように。
-
低所得の方には、最長65歳まで給付が継続される仕組み(所得に応じて)も用意されます。
これにより、男女で公平に支給されるように設計が見直されることになります
✅ 遺族基礎年金|子どもが「親の事情」で不利にならないように改善
これまでは、たとえば以下のようなケースで子どもが年金を受け取れないことがありました。
-
父母の離婚後、死亡した親が生計を維持していたが、もう一方の親に引き取られた場合
-
養子縁組で直系親族に引き取られた場合
-
親の再婚などで生計維持の確認が複雑になった場合
今回の改正では、こうした子ども本人に責任のない事情によって、年金の支給が止まらないようにする規定に変更されます
📅 いつから始まるの?
-
遺族年金の見直しの多くは 2028年4月から段階的に施行される予定です。
なお、既に遺族年金を受給している方や、60歳以上の方、18歳未満の子どもがいる家庭については、現行制度が継続されます。
💬 沖縄の皆さんへ|自分の「もしも」に備えるきっかけに
沖縄でも共働き家庭や再婚家庭が増える中、今回の改正は「誰が・どんなときに・どれだけ保障を受けられるのか」を見直す良い機会になります。
-
パートナーに万一のことがあったとき、自分は年金を受け取れるのか?
-
子どもにきちんと保障を残せるのか?
将来への不安を減らすためにも、制度を知ることが最大の備えです。
📌まとめ
改正点 | 内容 | 施行予定 |
---|---|---|
遺族厚生年金 | 男女平等化。子のいない夫も原則5年間の給付対象に | 2028年4月~ |
有期給付加算 | 遺族厚生年金に上乗せする形で給付 | 2028年4月~ |
遺族基礎年金 | 親の再婚・養子縁組等があっても、子への支給が継続可能に | 2028年4月~ |
💡 もっと詳しく知りたい方へ
つばさ社会保険労務士事務所では、ライフプランやご家族の状況に合わせた年金相談も承っています。お気軽にご相談ください。
※5月18日時点。今後の国会審議において修正される可能性があります。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由
コメントをお書きください