こんにちは、つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。
沖縄の経営者・人事担当者の皆様は、最新の県内労働環境の動向を把握されていますか?近年、労働法制は目まぐるしく変化し、企業が対応すべき課題も増加しています。今回は、令和7年度沖縄労働行政運営方針から読み解く、沖縄県の労働環境の現状と、企業として取り組むべきポイントについてお伝えします。
▲令和7年度 沖縄労働行政運営方針(沖縄労働局)
沖縄県の雇用情勢に明るい兆し
令和6年の沖縄県の完全失業率は3.2%、有効求人倍率は1.13倍と、コロナ禍からの回復基調が鮮明になっています。特に正社員有効求人倍率は0.75倍と、2年連続で過去最高を更新しました。観光産業を中心とした経済回復を背景に、企業の正社員での採用意欲が高まっているといえるでしょう。
しかし、こうした回復基調の裏側には、人手不足という新たな課題も浮上しています。特に医療・福祉、建設、警備、運輸などの分野では人材確保が喫緊の課題となっています。
若年層の雇用課題と定着支援の必要性
沖縄県の若年層(15~29歳)の完全失業率は5.6%と、全国平均(3.9%)を大きく上回っています。また、新規学卒者の就職内定率は高校卒で96.8%、大学卒で89.9%と全国平均より低い状況です。
さらに見過ごせないのが、就職後3年以内の離職率です。高卒者で51.2%、大卒者で41.2%と、全国平均をそれぞれ12.8ポイント、6.3ポイント上回っています。特に1年目の離職率が高いことが沖縄の特徴です。
企業が取り組むべきこと
- 入社後のフォロー体制強化(メンターの配置、定期面談など)
- キャリアパスの明確化と成長機会の提供
- 職場のコミュニケーション活性化への取り組み

非正規雇用と格差是正への対応
沖縄県の非正規雇用労働者の割合は38.4%で、全国と比較して高い状況が続いています。特に若年層の非正規割合の高さが課題です。こうした状況を踏まえ、同一労働同一賃金の徹底など非正規雇用労働者の処遇改善が求められています。
令和7年度は、パートタイム・有期雇用労働法に基づく指導がさらに強化されます。特に「年収の壁」を意識せずに働ける環境づくりをサポートする「社会保険適用時処遇改善コース」などの助成金も活用可能です。
企業が取り組むべきこと
- 同一労働同一賃金の点検と是正
- 正社員転換制度の導入・活用
- キャリアアップ助成金などの支援制度の積極的活用
障害者雇用の好調と高齢者活用の推進
沖縄県の障害者実雇用率は3.39%と全国1位を維持し、29年連続で全国平均(2.41%)を上回っています。一方で、法定雇用率達成企業の割合は60.0%と、40%の企業がまだ未達成です。
また、70歳までの就業確保措置を実施している企業の割合は29.2%と全国平均(31.9%)をやや下回っています。今後の高齢化社会に向けて、高年齢者の活用は重要な経営課題となりそうです。
企業が取り組むべきこと
- 障害者雇用に関する社内理解の促進と雇用環境の整備
- 70歳までの就業機会確保に向けた制度設計
- 65歳超雇用推進助成金などの支援制度の活用


企業支援策の積極活用を
沖縄労働局では、企業の労働環境整備を支援するためのさまざまな取り組みを行っています。「沖縄働き方改革推進支援センター」ではワンストップ相談窓口を設置し、働き方改革や人材確保に関する相談に対応しています。
また、「うちなー健康経営宣言」の登録促進など、従業員の健康確保に向けた取り組みも推進されています。企業の持続的成長のためにも、これらの支援策の積極的な活用をお勧めします。
活用すべき主な支援制度
- 業務改善助成金(最低賃金引上げ支援)
- キャリアアップ助成金(正社員化支援など)
- 人材開発支援助成金(従業員の能力開発支援)
- 働き方改革推進支援助成金
まとめ:持続可能な経営のために
沖縄県の労働環境は着実に改善していますが、若年層の就業定着や非正規雇用の処遇改善など、多くの課題も存在します。これらの課題に対応しながら、企業の持続的成長を実現するためには、労働関係法令の遵守はもちろん、従業員のウェルビーイングを高める職場づくりが重要です。
つばさ社会保険労務士事務所では、最新の法改正情報や助成金活用のご相談、就業規則の見直しなど、企業の労務管理に関するあらゆるご相談に対応しています。沖縄の企業の発展と働く人の幸せの両立をサポートしますので、お気軽にご相談ください。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
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