▲県内における令和6年の労働災害発生状況について(沖縄労働局)
いつもコラムをご覧いただき、ありがとうございます。つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。
令和6年の沖縄県における労働災害発生状況について、とても重要な発表がありました。死傷者数が1,524人と昭和47年以降で最多となり、死亡者数も8人と2年連続で増加しています。
📊 令和6年の沖縄県労働災害の現状
深刻な数字が物語る現実
- 死傷者数:1,524人(前年比57人増・3.9%増)← 昭和47年以降最多
- 死亡者数:8人(前年比2人増・33.3%増)
- 転倒災害:434人(災害全体の28.5%)
- 50歳以上の被災者:56.2%(857人)
これらの数字は、単なる統計ではありません。一人一人の従業員の命と健康、そして企業の未来に関わる重要な警告です。
⚠️ 最も注意すべき3つの災害パターン
1. 転倒災害(28.5%)- 最多発生
転倒災害は沖縄県内で最も多い労働災害です。特に:
- 女性の被災者が67.3%を占める
- 60歳以上が45.4%、50代以上で73.0%
- 平均休業期間:39.2日
2. 動作の反動・無理な動作(17.9%)
腰痛などが代表例で、主に:
- 保健衛生業(80人)
- 商業(55人)
- 中高年齢層に多発
3. 墜落・転落(15.4%)
重篤な災害につながりやすく:
- 建設業(66人)が最多
- 商業(29人)
- 製造業(28人)
💡 今すぐできる効果的な対策
転倒災害の予防策
環境整備
- 通路の整理整頓の徹底
- 段差や凹凸の解消
- 適切な照明の確保
- 滑りにくい床材の使用
従業員への取り組み
- 滑りにくい安全靴の着用
- 歩行時の注意喚起
- 体力維持のための運動推奨
高年齢労働者への配慮
沖縄県では50歳以上の労働者の災害が全体の56.2%を占めています。
実践すべき対策
- 作業負荷の軽減
- 定期的な健康チェック
- 作業環境の改善(照明・温度管理)
業種別の重点対策
商業(270人の被災者)
- 商品陳列時の安全確保
- 台車使用時の注意
- バックヤードの整理整頓
保健衛生業(243人の被災者)
- 患者移乗時の適切な手順
- 腰痛予防教育の実施
- 作業補助具の導入
建設業(197人の被災者)
- 足場の安全点検強化
- 安全帯の適切な使用
- 現場の5S活動徹底
📋 法的責務と企業リスク
事業者の安全配慮義務
労働安全衛生法により、事業者には従業員の安全を確保する義務があります。怠った場合:
- 刑事責任:業務上過失致死傷罪
- 民事責任:損害賠償請求
- 行政処分:営業停止等
- 社会的信用の失墜
労災発生時の企業への影響
- 直接費用:治療費、休業補償
- 間接費用:代替要員確保、生産性低下
- 法的対応費用
- 企業イメージの悪化
🎯 成功する安全管理のポイント
組織的な取り組み
-
トップのコミットメント
- 経営者自らが安全への強い意志を示す
-
定期的な安全教育
- 月1回以上の安全ミーティング
- 業種別の具体的な事例共有
-
リスクアセスメントの実施
- 作業場所ごとの危険要因の洗い出し
- 優先順位をつけた改善計画
継続的改善の仕組み
- ヒヤリハット報告制度の確立
- 安全パトロールの定期実施
- 改善提案制度の導入
🔗 活用できる支援制度
エイジフレンドリー補助金
高年齢労働者の安全衛生対策について:
- 補助率:1/2
- 上限:100万円
- 中小企業事業者が対象
📞 専門家と連携した労務管理を
労働災害の防止は、単なる安全対策にとどまらず、企業の持続的成長と従業員の幸福に直結する重要な経営課題です。
当事務所では、労働法令の実務的解釈から安全衛生管理まで、組織開発の観点からエンゲージメント向上と持続可能な組織づくりを支援しています。
つばさ社会保険労務士事務所では、法令遵守と従業員のウェルビーイングの両立を重視した制度設計をサポートいたします。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由