
こんにちは、つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。沖縄の中小企業経営者・人事担当者の皆さま、いよいよ2025年6月1日から労働安全衛生規則の改正により、職場における熱中症対策が法的義務となります。
特に私たち沖縄県は、年間を通じて高温多湿な環境にあるため、この法改正は他県以上に重要な意味を持ちます。今回は、沖縄の企業が今すぐ取り組むべき熱中症対策について、労働衛生教育の観点から詳しく解説いたします。
📊 沖縄における熱中症の深刻な現状
沖縄の労働災害データが示す現実
沖縄労働局の過去10年間のデータによると、熱中症による休業4日以上の労働災害は、建設業が全体の29.4%と最も多く、次いで警備業が18.8%を占めています。
発生パターンも明確で:
- 時期:6月から8月の3か月間で全体の8割弱
- 時間帯:15時台が最多、次いで9時台以前、17時台
- 年齢:40歳代以降の労働者が全体の7割以上
⚖️ 2025年6月から始まる法的義務とは
新たに義務化される内容
労働安全衛生規則の改正により、以下が法的義務となります:
✅ 熱中症患者の報告体制整備
✅ 症状悪化防止のための具体的措置の準備と周知
✅ 熱中症予防管理者の選任
✅ 労働衛生教育の実施
これらを怠った場合、企業には罰則が科される可能性があります。
💡 効果的な労働衛生教育の三つの柱
1️⃣ 作業環境管理:WBGT値の活用
WBGT値(暑さ指数)**は、気温だけでなく湿度・輻射熱・気流を総合的に評価する指標です。沖縄の高温多湿環境では特に重要で:
- 28℃〜30℃:こまめな休憩と水分補給
- 30℃〜31℃:作業時間短縮と1時間に2回以上の休憩
- 31℃以上:原則として作業中止を検討
2️⃣ 作業管理:暑熱順化の重要性
沖縄特有の課題として、本土からの出張者や転勤者の暑熱順化があります。暑さに慣れていない状態から、計画的に熱へのばく露時間を徐々に長くする期間(通常7〜14日)を設けることが重要です。
3️⃣ 健康管理:個人の体調管理と早期発見
- 朝食の摂取状況確認
- 睡眠不足・体調不良・飲酒の影響把握
- 持病(糖尿病、高血圧症等)を有する労働者への個別配慮
🎯 沖縄企業が今すぐ実践すべき対策
管理者向け教育のポイント
- WBGT値の測定・評価方法の習得
- 熱中症予防管理者の役割と責任の理解
- 緊急時の連絡網と搬送先の整備
- 重篤化防止措置の実施手順作成
作業者向け教育のポイント
- 熱中症の症状と自己判断・相互確認方法
- 適切な水分・塩分補給のタイミングと量
- 沖縄の気候に適した服装の工夫
- 緊急時の応急処置と救急車要請の判断基準
📚 効果的な教育手法の活用
多様な教育ツールの組み合わせ
- 集合研修:中災防等の専門セミナーの活用
- e-ラーニング:厚生労働省の無料動画教材
- リーフレット・掲示物:多言語対応で外国人労働者にも配慮
- 実地訓練:人形を使った搬送・冷却手順の練習
- WBGT値の見える化:リアルタイム表示による意識向上
沖縄ならではの配慮点
- 観光業での外国人労働者への多言語対応
- 建設業での屋外作業時間の見直し
- 製造業での空調設備の効率的運用
✨ まとめ:沖縄企業の競争力向上につながる熱中症対策
熱中症対策は単なる法令遵守ではありません。従業員の健康と安全を守ることで、生産性向上、離職率低下、企業イメージ向上につながる重要な経営戦略です。
2025年6月の義務化を機に、沖縄の高温多湿な環境に適した独自の対策を構築し、他県の企業に先駆けたモデルケースとなることで、沖縄企業の競争力向上を図りましょう。
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熱中症対策の法令遵守から実践的な労働衛生教育の設計まで、沖縄の企業の実情に合わせたサポートを提供いたします。社会保険労務士とキャリアコンサルタントの資格を活かし、従業員のウェルビーイングと企業の持続的成長を両立する制度設計をお手伝いいたします。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由