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沖縄の中小企業が絶対に知っておくべき夏場の労務管理法|命を守る熱中症対策と企業の責任

こんにちは。つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。

沖縄の強い日差しと高い湿度。美しい自然は私たちの誇りですが、働く人々にとって熱中症は深刻な労働災害の原因となります。特に建設業や製造業、運送業など屋外・屋内を問わず身体的負荷の高い職場では、経営者の適切な対策が従業員の命を左右することもあります。

 

💡 なぜ今、熱中症対策が企業にとって重要なのか

沖縄の労働環境の特殊性

沖縄の気候は本土と大きく異なります。長期間にわたる高温多湿、強い紫外線、そして台風シーズンの蒸し暑さ。これらの要因が重なることで、従業員の体調管理はより複雑になります。

厚生労働省のデータによると、職場での熱中症による救急搬送者数は建設業が最も多く、製造業がそれに続いています。沖縄のような高温多湿の環境では、この数字はさらに深刻な意味を持ちます。

企業が負う法的責任

労働安全衛生法では、事業者に対して従業員の安全と健康を確保する義務が課されています。熱中症対策を怠った場合、業務上災害として認定される可能性があり、企業は損害賠償責任を負うリスクがあります。

 

 

⚠️ 見落としがちな熱中症の初期症状

▲熱中症の症状と重症度分類:熱中症環境保健(環境省)マニュアル 2022より抜粋

 

⚠️ 見落としがちな熱中症の初期症状

従業員が訴える「何となく体調が悪い」を軽視しない

熱中症の恐ろしい点は、初期症状が軽微で見過ごされやすいことです。以下の症状を従業員が訴えた場合は、即座に対応する必要があります:

  • 手足がつる
  • 立ちくらみ・めまい
  • 吐き気
  • 汗のかき方がおかしい(止まらない/全く出ない)
  • 何となく体調が悪い
  • すぐに疲れる

専門知識がなくても熱中症を疑ったら、迷わず119番通報と応急処置を行うことが重要です。

 

🏢 職場環境別の具体的対策

建設現場での対策

  • 日陰の確保: テント設置や作業時間帯の調整
  • 打ち水: 早朝・夕方の実施(昼間は逆効果)
  • 大型ファン: 養生シートで覆われた環境での気流確保
  • 重量物運搬: 台車・リフター活用、2人作業の徹底

製造現場での対策

  • 熱源対策: 遮熱板による仕切り、予防対策グッズの活用
  • 換気改善: グリスフィルターの定期清掃
  • 作業時間: 空調システム稼働時間の延長

その他の現場

  • 配送業: こまめな日陰休憩、給水ボトル携帯
  • 冷蔵・冷凍倉庫: 内外温度差による体温調整困難への対応
  • 調理場: 通気性の良い作業着、排気システムの最適化

📋 実践的な職場管理チェックポイント

前日のチェック項目

  • 翌日の熱中症警戒アラート確認
  • 従業員への注意喚起(飲酒の節制、十分な睡眠)

仕事前のチェック項目

  • 体調確認(睡眠・食事・二日酔い等)
  • 熱中症警戒アラートの最終確認
  • 予防対策グッズの点検

仕事中の管理

  • 30分ごとの水分補給: スポーツドリンクや経口補水液
  • 定期的な現場パトロール: 管理者による従業員の状態確認
  • 単独作業の回避: 必ず声をかけ合える体制の構築

💊 効果的な暑熱順化の進め方

暑熱順化とは、身体を段階的に暑さに慣れさせることです。沖縄では5月頃から開始することを推奨します。

簡単な暑熱順化トレーニング

  • 歩行・軽いジョギング: 週5回、30分程度
  • 自転車: 週3回、30分程度
  • 入浴: 2日に1回、シャワーだけでなく湯船に浸かる
  • 適度な運動: 筋トレやストレッチで汗をかく

重要: 長期休暇後は暑熱順化効果がリセットされるため、再度順化期間が必要です。

 

🚨 緊急時の対応手順

熱中症が疑われる症状が現れた場合

  1. 即座に作業中止
  2. 119番通報
  3. 応急処置: 作業着を脱がせ、水をかけて全身を急速冷却
  4. 救急車到着まで: 継続的な冷却と意識状態の確認

「水かけ」による冷却は、アスリートの世界では一般的な応急処置です。躊躇せずに実施することが命を救います。

 

▲熱中症の応急手当(厚生労働省)※BGMが少し騒がしいです。

 

📞 つばさ社会保険労務士事務所からのご提案

当事務所では、沖縄の中小企業様に向けて以下のサービスを提供しています:

熱中症対策コンサルティング

  • 職場環境リスクアセスメント
  • 労働安全衛生管理体制の構築支援
  • 就業規則への熱中症対策規定の追加

研修・教育プログラム

  • 管理職向け熱中症予防講習
  • 従業員向け安全衛生教育
  • 緊急時対応訓練の実施支援

沖縄の厳しい気候条件下で働く従業員の安全と健康を守ることは、企業の重要な責務です。適切な熱中症対策は、従業員の命を守るだけでなく、企業の持続的な成長にも直結します。

 

労働安全衛生に関するご相談やお困りごとがございましたら、お気軽につばさ社会保険労務士事務所までお問い合わせください。沖縄の企業様が安心して事業を継続できるよう、全力でサポートいたします。


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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