📢 はじめに〜急務となる顧客ハラスメント対策〜
沖縄の経営者・人事担当者の皆様、こんにちは。つばさ社会保険労務士事務所の玉城です。
近年、「カスタマーハラスメント」(カスハラ) という言葉を耳にする機会が増えていませんか?実は、この問題は企業にとって看過できない重大な労務課題となっており、2025年6月4日にはカスハラ対策を雇用主に義務付ける法律が国会で可決・成立しました。
今回は、労働施策総合推進法の改正により新設される企業の義務と併せて、企業が実践すべき対策について詳しく解説いたします。
🔍 カスタマーハラスメントとは
そもそもカスタマーハラスメントとは何か?
カスタマーハラスメントとは、顧客等からのクレーム・言動のうち、要求内容の妥当性に照らして、その実現手段・態様が社会通念上不相当なものであって、労働者の就業環境が害されるものを指します。
具体的な判断基準
企業では以下の2つの観点から判断する必要があります:
- 顧客等の要求内容に妥当性はあるか
- 要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か
暴力行為などは、即座にカスタマーハラスメントに該当し、犯罪行為となる可能性もあります。
📊 深刻化する被害の実態
データが示すカスハラの現状
厚生労働省の調査によると:
- 過去3年間でカスハラを経験した労働者:15.0%
- 最も多い被害内容:長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(52.0%)
- 名誉棄損・侮辱・ひどい暴言:46.9%
特に注目すべきは、企業の相談件数においてカスハラがパワハラ・セクハラに続いて第3位となっており、件数が増加傾向にあることです。
従業員への深刻な影響
被害を受けた従業員の影響として:
- 精神的なダメージ:67.6%
- 身体的な不調:46.2%
- 仕事への意欲低下:21.2%
- 休職・離職:8.8%
これらの数字は、カスハラが単なる「困った客」の問題ではなく、従業員の健康と企業の人材確保に直結する重大な課題であることを物語っています。
⚖️ 2025年法改正で新設される「雇用管理上の措置義務」
国会可決・成立!カスハラ対策が法的義務に
2025年6月4日、カスタマーハラスメント対策を雇用主に義務付ける法律が国会で可決・成立しました。この法改正により、労働施策総合推進法が改正され、カスハラ対策が事業主の**「雇用管理上の措置義務」**として新たに位置付けられることになります。
対象となる事業主の範囲
労働者が1人でもいれば、すべての事業主が対象となります。つまり、企業規模に関係なく、パート・アルバイトを含む労働者を雇用している事業主は、全てこの義務の対象となります。
施行時期と対応期限
施行日は早ければ2026年10月頃と予想されており、それまでに事業主は対応を完了させる必要があります。つまり、今から約1年程度の準備期間しかないということになります。
違反した場合の制裁措置
義務に違反した事業主は、以下の行政措置の対象となります:
- 📋 報告徴求命令
- 💬 助言・指導
- ⚠️ 勧告
- 📢 公表
特に「公表」措置は企業の社会的信用に大きな影響を与えるため、法令遵守は必須といえます。
🛡️ 企業が講ずべき8つの対策
実践的なカスハラ対策フレームワーク
① 基本方針・基本姿勢の明確化 🎯
まずは経営トップが明確な方針を示すことが重要です:
- カスハラを許さない企業姿勢の明文化
- 従業員への周知・啓発活動の実施
- 就業規則や対応マニュアルへの明記
② 相談対応体制の整備 📞
従業員が安心して相談できる環境を構築:
- 専用相談窓口の設置
- 相談対応者の明確化
- 内部・外部の相談ルートの確保
③ 対応方法・手順の策定 📋
類型別の対応方法を事前に準備:
主な類型例:
- 時間拘束型
- リピート型
- 暴言型
- 暴力型
- 威嚇・脅迫型
- SNS/インターネット上での誹謗中傷型
④ 教育・研修の実施 📚
全従業員への定期的な教育を通じて:
- カスハラの定義と判断基準の共有
- 対応方法の習得
- エスカレーション手順の理解
⑤ 事実関係の確認と事案対応 🔍
事案発生時の適切な対応:
- 正確な事実関係の確認
- 社内対応ルールに基づく判断
- 必要に応じた外部機関との連携
⑥ 従業員への配慮措置 💙
被害を受けた従業員に対する支援:
- メンタルヘルスケアの提供
- 必要に応じた配置転換や業務軽減
- 職場復帰支援
⑦ 再発防止の取組 🔄
継続的な改善活動:
- 事案の分析と対策の見直し
- システムや手順の改善
- 職場環境の整備
⑧ プライバシー保護と不利益取扱い禁止 🔒
相談者の保護:
- 個人情報の適切な管理
- 相談したことによる不利益取扱いの禁止
- 信頼関係の構築
🤝 取引先等との連携
協力関係の構築が重要
カスハラ対策は自社だけでは完結しません:
取引先からの協力依頼を受けた場合
- 自社従業員が他社でハラスメント行為を行った際の適切な対応
- 事実確認と再発防止策の実施
取引先への協力依頼
- 自社従業員が他社からハラスメント被害を受けた際の連携
- 相互の支援体制構築
⚠️ 注意点: 独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当しないよう、適切な範囲での協力要請が必要です。
💡 対策実施のメリット
投資対効果の高いカスハラ対策
適切な対策実施により以下の効果が期待できます:
経営面でのメリット
- 従業員のエンゲージメント向上
- 離職率の低下
- 採用力の強化
- 企業イメージの向上
法的リスクの軽減
- 安全配慮義務違反による損害賠償リスクの回避
- 労働基準監督署からの指導リスクの軽減
- 労働紛争の予防
🚀 まとめ〜今こそ行動の時〜
カスタマーハラスメント対策は、もはや「やれば良い」レベルではなく、法的義務として必ず実施しなければならない取組みとなっています。
特に沖縄県内の中小企業の皆様におかれましては、2026年10月頃の施行日までに以下の点を重視して対策を進めることをお勧めします:
✅ 経営トップの明確なコミットメント
✅ 従業員が相談しやすい環境づくり
✅ 具体的な対応手順の策定
✅ 継続的な教育・研修の実施
法改正により2026年10月頃から法的義務となるカスハラ対策。「うちは大丈夫」ではなく、「今からでも遅くない」という意識で、ぜひ積極的な取組みを開始していただければと思います。
📞 お困りの際はお気軽にご相談ください
カスタマーハラスメント対策でお悩みの企業様は、ぜひ当事務所までご相談ください。豊富な労務管理経験と産業カウンセラー・キャリアコンサルタントとしての専門知識を活かし、御社の状況に応じた最適な対策をご提案いたします。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由