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男性育休30.1%時代に問われる企業の覚悟 ー 沖縄の中小企業が知っておくべき「これからの当たり前」

皆さん、こんにちは!つばさ社会保険労務士事務所の玉城です。

最近、県内の中小企業の経営者様から「育児休業の取得者が増えているが、どう対応すればよいか」「男性社員からも取得の申し出があったが、準備はできているか」といったご相談を多くいただいています。

 

そこで今回は、厚生労働省が発表した最新の統計データを基に、育児休業制度の動向と企業が押さえるべきポイントについて解説します!

▲令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について (厚生労働省)

📈 急速に変わる男性育休の風景

驚くべきスピードで進む変化

数字を見ると、その変化のスピードに驚かされます:

  • 平成30年度: 7.48%
  • 令和3年度: 13.97%
  • 令和5年度: 30.1%

わずか5年で約4倍の伸びです。これは単なる「統計の変化」ではなく、働く人たちの価値観そのものが劇的に変わっていることを示しています。

「取るだけ育休」ではない現実

さらに注目すべきは取得期間の変化です。男性の約4割が2週間未満の短期取得である一方で、長期間の取得も確実に増えています。これまでの「とりあえず数日取っておけばいい」という時代は終わりを告げようとしています。

 

🎯 若年層の本音が示す未来図

9割が育休取得を希望、3割は半年以上

厚生労働省が実施した若年層調査(18-25歳)の結果は、さらに衝撃的でした:

  • 87.7%が自身の育休取得を希望
  • 29.2%が半年以上の取得を希望
  • 69.7%が就職活動で企業の育休取得情報を重視

これらの数字が意味するのは、「育休を取れない会社は選ばれない」という新しい現実です。

 

仕事とプライベートの両立が「当たり前」

若年層の77.9%が仕事とプライベートの両立を意識しており、**91.2%**が「仕事もプライベートも両立する働き方」に働きがいを感じると回答しています。これは、これまでの「仕事一筋」の価値観とは明らかに異なる世代が、労働市場の主役になりつつあることを物語っています。

 

⚡ 2025年4月からの新たな義務

従業員300人超の企業へ公表義務拡大

これまで1,000人超の企業に限られていた育児休業取得率の公表義務が、2025年4月から300人超の企業に拡大されています。

 

3歳未満児の柔軟な働き方支援が義務化

改正育児・介護休業法により、企業は3歳未満の子を持つ従業員に対して、以下から2つ以上の選択肢を提供することが義務付けられています:

  • 始業時刻等の変更
  • テレワーク(月10日以上)
  • 短時間勤務制度
  • 新たな休暇の付与(年10日以上)
  • その他働きながら子を養育しやすくするための措置

🏢 沖縄企業が今すべきこと

1. 発想の転換:「人手不足対策」として捉える

男性育休への対応を「コスト」と考えるのではなく、「優秀な人材確保」と「離職防止」の戦略的施策として位置付けましょう。育休を取りやすい職場は、結果として働きやすい職場になり、人材定着率も向上します。

2. 働き方改革の推進が鍵

調査結果によると、職場全体で働き方改革を実施している企業は、男性の育休取得日数が約2倍になっています。つまり、育休取得促進のためには、職場全体の働き方を見直すことが不可欠なのです。

3. 「お互い様の職場文化」の醸成

一人が休んでも業務が回る体制作りは、育児中の従業員だけでなく、介護や傷病などあらゆる事情を抱える従業員にとってメリットとなります。これからの時代、多様な働き方に対応できる職場こそが持続的な成長を実現できます。

 

💡 実務的なアプローチ

就業規則の見直しポイント

  1. 育児休業制度の明文化: 法改正に対応した規定整備
  2. 柔軟な働き方の選択肢: テレワーク、フレックス、短時間勤務等
  3. 子の看護休暇の拡充: 小学校3年生まで対象範囲拡大

管理職への意識改革

男性部下から育休取得の相談を受けた際の対応方法について、管理職向けの研修実施をお勧めします。「困った」という反応ではなく、「どうサポートできるか」を考える姿勢への転換が重要です。

 

 

🚀 未来を見据えた経営戦略として

男性育休30.1%という数字は、単なる通過点に過ぎません。若年層の意識や制度改正の流れを見れば、この割合はさらに上昇していくことは確実です。

重要なのは、今この変化に適応し、従業員にとって魅力的な職場を作ることで、優秀な人材を確保し続けることです。

沖縄の企業が持つ「人を大切にする文化」と「柔軟性」は、この時代の変化に対応する上で大きな強みとなるはずです。ぜひこの機会に、自社の人事制度を見直し、「選ばれる企業」への進化を図ってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

働き方改革や育児休業制度の整備でお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。沖縄の企業の実情を踏まえた実践的なソリューションをご提案いたします。


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

▶コラム: 私が社労士になった理由