
沖縄県内の中小企業経営者・人事担当者の皆さま、こんにちは。つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。
7月に入り、沖縄の夏も本格的になってまいりました。連日の猛暑で「今年もまた熱中症対策が心配」とお感じの方も多いのではないでしょうか。
実は、職場での熱中症による労災事故は年々深刻化しており、建設業では過去10年間で1,571人、製造業で1,311人もの方が熱中症で労災認定を受けています。これは決して「本土だけの話」ではありません。
今回は、厚生労働省の最新ガイドラインをもとに、沖縄の事業場でも今すぐ実践できる熱中症対策をお伝えします。
🌡️ なぜ沖縄の企業は熱中症対策が重要なのか
沖縄特有のリスク要因
高温多湿な気候環境
- 年間を通じて湿度が高く、汗による体温調節が困難
- 海風の影響で体感温度と実際の危険度にギャップが生じやすい
- 建設現場や製造現場では、アスファルトや鉄筋の照り返しで更に過酷な環境に
観光・建設業の特殊事情
- 本土から来た作業員の「暑熱順化」が不十分
- 夏季の工期集中による長時間労働
- 屋外作業が多い業種の集積
▲RBC NEWS 2025年6月25日
⚠️ 見逃しがちな熱中症の初期症状
多くの経営者が見落としているのが、熱中症の初期症状です。「倒れてから対応」では手遅れになることも。
従業員自身が気づくべきサイン
- 手足がつる
- 立ちくらみ・めまい
- 吐き気
- 汗のかき方がおかしい(止まらない/出ない)
- 何となく体調が悪い、すぐに疲れる
周囲が気づくべきサイン
- イライラしている
- フラフラしている
- 呼びかけに反応しない
- ボーッとしている
重要なポイント: 専門知識がないと熱中症かどうか判断できません。「おかしい」と思ったら、すぐに作業中止→119番通報→水をかけて全身を急速冷却が鉄則です。
🏢 職場でできる3つの予防対策
1. 前日・当日のチェック体制を確立
前日のチェック項目
✅ 仕事前日の飲酒は控えめに
✅ ぐっすり眠る
✅ 熱中症警戒アラートの確認
仕事前のチェック項目
✅ よく眠れたか
✅ 食事をしたか
✅ 体調は良いか
✅ 二日酔いしていないか
2. 水分・塩分補給の仕組み化
効果的な水分補給のポイント
- 30分ごとにコップ1杯(200ml)程度
- 水分だけでなく必ず塩分も一緒に摂取
- スポーツ飲料や経口補水液を活用
- 「のどが渇く前」の定期的な補給が重要
3. 暑熱順化の計画的実施
暑熱順化とは? 暑さに身体を慣れさせることで、早く汗が出るようになり体温上昇を防ぐ身体の適応能力です。
実践方法
- 5月から開始(暑くなる前から)
- 日常生活で適度に汗をかく習慣
- 数日から2週間程度で効果が現れる
- 注意: 数日休むと効果はゼロに戻るため継続が重要
🏭 業種別の実践的対策
建設業・屋外作業
- テントで日陰を作る
- 大型ファンで気流を確保
- 早朝・夕方の作業時間シフト
- ファン付き作業服の導入
製造業・屋内作業
- 遮熱板で熱源を仕切る
- 窓に遮光シートを設置
- 通気性の良い作業着の採用
- 適切な換気設備の整備
🚨 緊急時の対応手順
万が一、熱中症が疑われる症状が現れた場合:
- 即座に作業中止
- 119番通報
- 応急処置 - 作業着を脱がせ、水をかけて全身を急速冷却
- 救急車到着まで冷却を継続
まとめ:従業員の命を守る経営判断を
熱中症対策は「コスト」ではなく「投資」です。従業員の健康を守ることは、企業の持続的な成長につながります。
特に沖縄の中小企業では、限られた人材一人ひとりが貴重な戦力。だからこそ、今回ご紹介した対策を段階的に導入していただき、安全で働きやすい職場環境の実現を目指していただければと思います。
労務管理や熱中症対策でお困りのことがございましたら、つばさ社会保険労務士事務所まで気軽にご相談ください。沖縄の企業さまの実情に合わせた実践的なアドバイスをご提供いたします。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由