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令和7年分扶養控除等申告書の書き方完全ガイド【沖縄の経営者必見】

はじめに:なぜ今、この申告書が重要なのか

年末が近づくと必ず提出が必要になる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」。多くの企業で「毎年のルーティン」として扱われがちですが、この書類一つで従業員の税負担が大きく変わることをご存知でしょうか。

 

特に沖縄県内の中小企業では、人事担当者が兼任で年末調整業務を行うケースが多く、正確な知識が求められています。今回は、令和7年分の申告書について、実務で使える知識を分かりやすく解説します。

扶養控除等申告書の基本知識

提出が必要な従業員とは

扶養控除等申告書の提出は、すべての給与所得者が対象です。正社員はもちろん、パートやアルバイトの方も含まれます。

ただし、以下の場合は提出不要です:

  • 年間給与所得が2,000万円を超える方
  • 複数箇所で働いており、他社で申告書を提出している方
  • 12月の給与支払日前に退職した方

提出期限と重要性

その年最初の給与支払い日の前日までが提出期限です。新入社員の場合は入社後最初の給与支払い日の前日までとなります。

提出されないと:

  • 扶養控除が適用されない
  • 毎月の源泉徴収税額が高くなる(乙欄適用)
  • 年末調整ができない

令和7年分申告書の記載ポイント

基本情報の記載

申告書上部の基本情報欄では、以下の点にご注意ください:

従業員が記載する項目

  • 氏名(フリガナ含む)
  • 生年月日
  • 住所または居所
  • 世帯主の氏名と続柄

個人番号について 一定の要件を満たす場合、個人番号の記載を省略できます。会社が従業員のマイナンバーを適切に管理している場合は、記載不要となることが多いです。

 

源泉控除対象配偶者

対象となる配偶者の要件

  • 令和7年中の所得見積額が95万円以下
  • 納税者本人の所得見積額が900万円以下
  • 生計を一にしている
  • 青色・白色事業専従者でない

給与収入のみの場合、配偶者は150万円以下、納税者本人は1,095万円以下(所得金額調整控除適用外)が目安です。

 

控除対象扶養親族

16歳以上の扶養親族が対象です。以下の区分に注意しましょう:

一般の扶養親族

  • 16歳以上の方(控除額38万円)

特定扶養親族

  • 19歳以上23歳未満の方(控除額63万円)

老人扶養親族

  • 70歳以上の方
  • 同居老親等:58万円
  • その他:48万円

令和7年から注意すべき重要な変更点

基礎控除額の大幅な見直し

令和7年12月1日から、基礎控除額が所得に応じて大幅に引き上げられます:

主な変更点

  • 合計所得金額132万円以下:95万円(改正前48万円)
  • 合計所得金額132万円超336万円以下:88万円(改正前48万円)
  • 合計所得金額336万円超489万円以下:68万円(改正前48万円)
  • 合計所得金額489万円超655万円以下:63万円(改正前48万円)

給与所得控除の最低保障額引き上げ

給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。

  • 給与収入190万円以下の方が対象
  • 年末調整時の計算に影響

特定親族特別控除の新設

19歳以上23歳未満の親族に新たな控除が創設されました:

対象となる特定親族

  • 年齢19歳以上23歳未満の親族
  • 合計所得金額58万円超123万円以下
  • 生計を一にしている(配偶者・事業専従者は除く)

控除額(所得金額に応じて)

  • 58万円超85万円以下:63万円
  • 85万円超90万円以下:61万円
  • 90万円超95万円以下:51万円
  • 95万円超100万円以下:41万円
  • 100万円超105万円以下:31万円
  • 105万円超110万円以下:21万円
  • 110万円超115万円以下:11万円
  • 115万円超120万円以下:6万円
  • 120万円超123万円以下:3万円

適用のための手続き 「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要

 

扶養親族等の所得要件改正

基礎控除の見直しに伴い、各種控除の所得要件も改正されました:

扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の子

  • 改正前:48万円以下 → 改正後:58万円以下

配偶者特別控除対象の配偶者

  • 改正前:48万円超133万円以下 → 改正後:58万円超133万円以下

勤労学生

  • 改正前:75万円以下 → 改正後:85万円以下

実務でよくある質問と対処法

Q1:年の途中で家族構成が変わった場合は?

A1:変更があった時点で速やかに「異動」として届け出てください。結婚、出産、離婚などがあった場合は、次回給与計算前に修正版の提出を求めましょう。

Q2:パート配偶者の収入が103万円を超えそうな場合は?

A2:配偶者の年収見込みによって、源泉控除対象配偶者から配偶者特別控除に変更となる可能性があります。年末調整時に「配偶者控除等申告書」での申告が必要です。

Q4:令和7年12月から新設される特定親族特別控除とは?

A4:19歳以上23歳未満の親族(大学生など)で、一定の所得がある方に新たな控除が適用されます。合計所得金額58万円超123万円以下の親族1人につき、最大63万円の控除を受けられます。ただし、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要です。

Q5:基礎控除額の変更で何が変わる?

A5:令和7年12月から基礎控除額が大幅に引き上げられます。例えば、年収300万円の方の場合、基礎控除額が48万円から88万円に増額され、年間の税負担が軽減されます。

 

記載ミスを防ぐチェックポイント

従業員への説明事項

  1. 正確な所得見積額の記載
    • 給与収入と所得金額の違いを説明
    • 年末までの見込み額で計算
  2. 続柄の正確な記載
    • 「長男」「長女」など具体的に記載
    • 義理の関係も正確に記載
  3. 住所の統一
    • 住民票上の住所で統一
    • マンション名まで正確に記載

会社側のチェック体制

  • 前年との相違点を必ず確認
  • 令和7年12月からの改正事項への対応確認
  • 新設の特定親族特別控除の適用可能性チェック
  • 基礎控除額・給与所得控除額の変更に伴う再計算
  • 扶養親族の所得要件変更による影響確認
  • 記載漏れや誤記がないかダブルチェック

令和7年12月から適用される新しい申告書

特定親族特別控除申告書(新規様式)

令和7年分から新たに「給与所得者の特定親族特別控除申告書」が追加されます。

提出が必要なケース

  • 19歳以上23歳未満の親族がいる
  • その親族の合計所得金額が58万円超123万円以下
  • 特定親族特別控除の適用を受けたい場合

記載時の注意点

  • 親族の正確な所得金額の把握
  • 生計を一にしていることの確認
  • 他の控除との重複適用の確認

既存申告書の記載変更点

基礎控除申告書

  • 改正後の基礎控除額での記載が必要
  • 所得金額区分の確認

配偶者控除等申告書

  • 給与所得控除額の変更に伴う配偶者所得の再計算
  • 改正後の要件での控除額計算

まとめ:令和7年の大改正に備えた適切な申告書管理を

令和7年12月からの税制改正は、基礎控除額の大幅引き上げ、特定親族特別控除の新設など、従業員の税負担に大きく影響する重要な変更です。

令和7年改正の重要ポイント

  1. 基礎控除額の大幅引き上げ(最大95万円)
  2. 特定親族特別控除の新設(最大63万円)
  3. 給与所得控除最低保障額の引き上げ(65万円)
  4. 扶養親族等の所得要件改正(58万円以下等)

成功のポイント

  1. 改正内容の正確な理解と従業員への周知
  2. 新しい申告書(特定親族特別控除申告書)の準備
  3. 令和7年12月からの適用タイミングの管理
  4. 既存申告書の記載内容見直し支援

 


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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