▲令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 事業所調査結果(厚生労働省)
はじめに:なぜ今、メンタルヘルス対策が重要なのか
沖縄県でも、職場のストレスは深刻な課題となっています。令和6年の厚生労働省調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は全国で63.2%に達しており、もはや「やるかやらないか」ではなく「どのように効果的に実施するか」が問われる時代になりました。
特に沖縄県内の中小企業では、限られた人材と予算の中で従業員の心の健康をどう守るかが、事業継続と成長の重要な鍵となっています。この記事では、社会保険労務士として多くの沖縄県内企業をサポートしてきた経験から、すぐに実践できるメンタルヘルス対策をご紹介します。
メンタルヘルス不調の現状:沖縄県内企業が直面する課題
全国データが示す深刻な実態
項目 | 割合 | 前年比 |
---|---|---|
メンタルヘルス不調による1か月以上休業・退職者がいた事業所 | 12.8% | ▲0.7ポイント |
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所 | 63.2% | ▲0.6ポイント |
ストレスチェック実施事業所(対策実施事業所中) | 65.3% | +0.3ポイント |
これらの数字から読み取れるのは、メンタルヘルス対策の必要性が広く認識される一方で、まだ約4割の企業が具体的な取り組みを行っていないという現実です。
沖縄県内中小企業特有の課題
沖縄県内の中小企業では、以下のような特有の課題が見受けられます:
- 人材不足による一人当たりの業務負荷増加
- 観光業の季節変動による雇用の不安定さ
- 台風など自然災害による事業継続への不安
- 専門的な産業保健スタッフの確保困難
これらの課題に対し、コストを抑えながら効果的な対策を講じることが求められています。
中小企業でも始められる実践的メンタルヘルス対策
1. まずは「気づく」仕組みを作る
ストレスチェックの活用(50人以上の事業所は義務)
50人以上の事業所では年1回のストレスチェック実施が義務付けられていますが、単に実施するだけでなく、結果を活用することが重要です。
実施のポイント:
- 個人結果だけでなく、部署別の集団分析を実施
- 高ストレス部署には環境改善策を検討
- 外部機関との連携でコストを抑制
日常的な観察とコミュニケーション
50人未満の事業所でも、管理職による日常的な観察が効果的です。
チェックすべきサイン:
- 遅刻・早退・欠勤の増加
- 表情の変化、口数の減少
- 業務効率の明らかな低下
- 同僚とのコミュニケーション回避
2. 相談しやすい環境づくり
相談窓口の設置
全国調査では、94.6%の労働者が職場でストレスを相談できる人がいると回答していますが、相談内容によって適切な窓口を設けることが大切です。
相談先 | メリット | 沖縄県内での活用 |
---|---|---|
上司・同僚 | 身近で相談しやすい | 管理職研修で相談対応スキル向上 |
産業保健総合支援センター | 専門的なサポート | 沖縄産業保健総合支援センター(那覇市)の活用 |
外部EAP(従業員支援プログラム) | 匿名性・専門性 | 複数企業での共同契約でコスト削減 |
3. 職場環境の改善
働き方の見直し
長時間労働は重要なストレス要因です。調査によると、月80時間超の時間外労働があった労働者は1.5%でしたが、この数字を0に近づける努力が必要です。
具体的な取り組み:
- ノー残業デーの設定
- 有給休暇取得促進(沖縄の美しい自然を活用したリフレッシュ推奨)
- テレワーク・フレックスタイム制の導入検討
コミュニケーション活性化
- 定期的な1on1ミーティング
- チーム懇親会(沖縄らしい交流の場づくり)
- 感謝や成果を共有する仕組み
法的義務と助成金の活用
ストレスチェック制度の法的要件
50人以上の事業所では以下が義務付けられています:
- 年1回のストレスチェック実施
- 実施者(医師・保健師等)の選任
- 結果の適切な管理と活用
まとめ:一歩踏み出すことから始める
メンタルヘルス対策は、一朝一夕で完成するものではありません。しかし、63.2%の企業が既に取り組んでいる現在、対策を講じないことは企業にとって大きなリスクとなります。
沖縄県内の中小企業の皆様には、まず「できることから始める」姿勢で取り組んでいただきたいと思います。従業員の心の健康は、企業の持続的成長と地域社会への貢献につながる重要な投資です。
当事務所では、沖縄県内の中小企業に特化したメンタルヘルス対策のコンサルティングを行っております。法令遵守はもちろん、実務に即した効果的な仕組みづくりをサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
つばさ社会保険労務士事務所
代表:玉城翼(社会保険労務士・キャリアコンサルタント)
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このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
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