令和7年7月の職業紹介状況統計が公表され、労働市場の最新動向が明らかになりました。沖縄県内で事業を展開される経営者の皆様にとって、これらの数値は今後の人材戦略を練る上で重要な指針となります。単なる数字の羅列では済まされない、現場で直面する人材確保の課題を統計から読み解き、具体的な対策をご提案いたします。
沖縄労働市場の現在地:統計が示すリアル
全国水準を下回る求人倍率の深刻さ
令和7年7月の有効求人倍率(季節調整値)は全国で1.22倍となり、前月と同水準となりましたが、沖縄県の有効求人倍率(就業地別)は1.12倍と、全国平均を0.1ポイント下回っています。
この数値が示すのは、県内における「求人と求職者のミスマッチ」の深刻さです。求職者100人に対し、求人は112件しかない計算となり、選択肢の少なさが浮き彫りになっています。
業種別動向から見える採用チャンス
一方で、業種別の新規求人数を詳しく見ると、採用活動において狙い目となる分野が見えてきます。
業種 | 対前年同月比 | 採用戦略のポイント |
教育,学習支援業 | +9.8% | 積極採用のチャンス |
情報通信業 | +2.7% | 専門性アピールが有効 |
サービス業(他に分類されないもの) | +2.2% | 多様な働き方提案 |
宿泊業,飲食サービス業 | -9.7% | 条件改善による差別化 |
卸売業,小売業 | -4.7% | 長期雇用安定性の訴求 |
効果的な人材確保に向けた3つの戦略
戦略1:未就業人材の積極的な掘り起こし
令和6年1年間の入職者数は7,473.7千人、離職者数は7,195.3千人で、入職者が離職者を278.4千人上回っています。このデータは、適切なアプローチにより人材確保が可能であることを示しています。
特に注目すべきは職歴別入職率で、未就業入職率が5.0%となっている点です。これまで働いていなかった方々を労働市場に呼び込む余地が十分にあります。
具体的な施策
- 子育て世代向けの柔軟な勤務制度導入
- シニア層の豊富な経験を活かせる職場環境整備
- 未経験者向けの丁寧な研修プログラム構築
戦略2:離職防止による人材定着の強化
パートタイム労働者は、入職者数3,135.9千人、離職者数2,963.6千人で、入職者が離職者を172.3千人上回っていますが、依然として離職率の高さが課題となっています。
離職防止のための実践的手法
- 入職後3ヶ月、6ヶ月の定期面談実施
- 職場の人間関係構築支援(メンター制度等)
- 従業員のキャリアビジョン共有と成長機会提供
- 適正な労働条件と処遇の見直し
戦略3:地域特性を活かした採用ブランディング
沖縄県の持つ独自の魅力を採用活動に活用することで、他県からの人材流入も期待できます。
アピールポイント | ターゲット層 | 具体的な訴求方法 |
ワークライフバランス | 働き盛り世代 | 通勤時間短縮、自然環境の良さ |
多様な働き方 | 子育て世代 | 時短勤務、在宅勤務の選択肢 |
地域貢献性 | Uターン希望者 | 地元経済への貢献実感 |
新規事業チャレンジ | 専門職・管理職 | 成長市場での裁量権拡大 |
今こそ求められる「攻め」の人材戦略
統計数値を見る限り、沖縄の労働市場は確かに厳しい状況にあります。しかし、これを「人材が取れない理由」とするのではなく、「他社との差別化を図るチャンス」と捉えることが重要です。
求人倍率が低いということは、求職者にとって選択肢が限られているということでもあります。つまり、魅力的な条件と職場環境を整備することで、優秀な人材を確実に獲得できる可能性が高いのです。
労務管理の専門家として皆様をサポート
人材確保から定着まで、総合的な労務課題の解決には専門的な知識と実践経験が欠かせません。就業規則の整備、評価制度の構築、労働条件の適正化など、法令遵守と従業員満足の両立を図りながら、持続可能な組織づくりを進めることが不可欠です。
統計から読み解ける現状を踏まえ、御社の実情に合わせた具体的な人材戦略をご提案いたします。沖縄県内の労働環境改善と企業成長の両立に向けて、お気軽にご相談ください。
つばさ社会保険労務士事務所
代表 玉城翼
社会保険労務士・キャリアコンサルタント
沖縄県内中小企業の人事労務課題解決をトータルサポート
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
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