
2025年の旧盆は9月4日〜6日の3日間。ウンケー、ナカビ、ウークイと続く沖縄の大切な行事で、久しぶりに家族が集まる貴重な機会でもあります。
そんな家族団らんの中で、「最近、お父さんの物忘れが多くなった」「お母さんの足腰が弱くなってきた」といった話題が出ることも少なくありません。沖縄では旧暦で行われる行事が多く、家族の絆も深いため、こうした変化により敏感に気づく環境があります。
実際に、厚生労働省の調査によると、介護を理由とした離職者は年間約10万人に上り、そのうち約8割が女性です。沖縄県内の中小企業においても、従業員の介護による突然の退職や長期欠勤といった課題に直面する企業が増えています。
しかし、適切な制度を知っていれば「介護=退職」という選択肢しかない状況は回避できます。今回は、家族の介護が必要になったときに活用できる「介護休暇制度」について、沖縄の企業事情を踏まえながら分かりやすく解説いたします。
介護休暇制度と介護休業制度の違い
介護休暇制度とは?
介護休暇とは、労働者が要介護状態にある対象家族の介護や世話をするために取得できる休暇制度です。労働基準法の年次有給休暇とは別に取得でき、有給か無給かは会社の規定によって決まります。
要介護状態の定義 負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
介護休業制度との違い
項目 | 介護休暇 | 介護休業 |
---|---|---|
目的 | 短時間・単発的な介護ニーズ | まとまった期間の介護・体制構築 |
期間 | 1家族:年5日、2家族以上:年10日 | 1家族につき3回まで、通算93日 |
取得単位 | 1日または時間単位 | 基本的に連続期間 |
経済的支援 | 会社規定による | 介護休業給付金(賃金の67%) |
介護休暇の活用シーン
- 通院の付き添い
- 介護サービスの手続き代行
- ケアマネジャーとの短時間の打ち合わせ
- 介護保険申請などの事務手続き
これらの場面で、まとまった期間ではなく、スポット的に休みが必要な際に非常に有効な制度です。
介護休業給付金について
介護休業を取得した場合、雇用保険の被保険者であれば「介護休業給付金」の支給を受けることができます。給付率は休業開始時賃金の67%で、最大93日分まで支給されます。
この給付金は、介護休業期間中の経済的負担を軽減し、安心して家族の介護に専念できる重要な制度です。
対象となる労働者・家族の範囲
対象労働者
対象家族を介護する男女の労働者(日々雇用を除く)が対象となります。
労使協定により対象外となる場合
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
対象家族
対象家族 | 詳細 |
---|---|
配偶者 | 事実婚を含む |
父母・子 | 養父母・養子を含む |
配偶者の父母 | 養父母を含む |
祖父母・兄弟姉妹・孫 | 法律上の親子関係がある場合のみ |
沖縄県内企業における実践的な活用ポイント
1. 急な通院対応
沖縄県内の医療機関は本島中南部に集中しており、通院には時間がかかることが多いです。介護休暇を時間単位で取得することで、半日有給を使わずに効率的な通院付き添いが可能になります。
2. 台風対策との併用
沖縄特有の台風シーズンでは、高齢の家族の安全確保が重要です。介護休暇を活用して、台風前後の安全確認や避難準備を行うことができます。
3. 島嶼地域への対応
離島に住む家族の介護では、移動時間を含めた対応が必要です。介護休暇と年次有給休暇を組み合わせることで、効率的な介護体制を構築できます。
企業側の対応と準備
就業規則の整備
介護休暇制度の詳細を就業規則に明記し、従業員に周知することが重要です。特に以下の点を明確にしましょう:
- 有給・無給の取り扱い
- 申請手続きの方法
- 必要書類の種類
- 承認プロセス
代替要員の確保
急な介護休暇に対応できるよう、業務の標準化と代替要員の育成を進めることが大切です。
相談窓口の設置
従業員が気軽に相談できる窓口を設置し、制度の利用促進を図りましょう。
まとめ
介護休暇制度は、従業員の仕事と介護の両立を支援する重要な制度です。沖縄県内の中小企業においても、この制度を適切に運用することで、優秀な人材の確保・定着につながります。
2025年4月からは入社6か月未満の労働者の除外規定も廃止され、より多くの従業員が制度を利用できるようになりました。企業としては、制度の理解を深め、適切な運用体制を整備することが求められています。
従業員の皆様にとって働きやすい環境づくりは、企業の持続的成長にも直結します。介護休暇制度を有効活用し、誰もが安心して働ける職場環境の実現を目指しましょう。
つばさ社会保険労務士事務所では、介護休暇制度の導入支援から就業規則の整備まで、トータルでサポートいたします。お気軽にご相談ください。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
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