
こんにちは、つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。
沖縄県内の企業経営者の皆さんから「労働保険の手続きが複雑で分からない」「何から始めればいいのか」といったご相談を多数いただきます。労働保険は労働者を一人でも雇う事業主の義務ですが、適切に理解すれば従業員と企業の双方を守る強力な制度です。
今回は、労働保険制度の基本から実際の手続き方法まで、沖縄の企業環境に合わせて詳しく解説いたします。
労働保険制度の基本構造
労働保険は労災保険と雇用保険の総称で、どちらも事業主にとって必須の制度です。
労災保険(労働者災害補償保険)
業務上の事由や通勤により労働者が負傷・疾病・死亡した場合に、被災労働者や遺族を保護するための保険です。沖縄県内では建設業や製造業で労災事故が発生しやすく、観光業でも繁忙期の過重労働による精神的疾患が問題となるケースがあります。
雇用保険
労働者の失業時や雇用継続が困難になった際の生活安定と再就職促進を図る保険です。沖縄県の場合、観光業の季節変動や台風による一時的な事業停止などに対応する重要な制度といえます。
労働保険の適用事業と成立手続き
適用事業の範囲
農林水産業の一部を除き、労働者を一人でも雇用していれば適用事業となります。正社員だけでなく、パート・アルバイトも含まれるため、沖縄県内の多くの中小企業が対象となります。
成立手続きの流れ
手続き順序 | 提出書類 | 提出期限 | 提出先 |
---|---|---|---|
1 | 保険関係成立届 | 成立日の翌日から10日以内 | 労働基準監督署 |
2 | 概算保険料申告書 | 成立日の翌日から50日以内 | 労働基準監督署 |
3 | 雇用保険適用事業所設置届 | 設置日の翌日から10日以内 | ハローワーク |
4 | 雇用保険被保険者資格取得届 | 資格取得の翌月10日まで | ハローワーク |
△保険関係成立届(記入例)
労働保険料の算定と年度更新
保険料の計算方法
労働保険料は以下の計算式で算出されます:
(全労働者の賃金総額)×(労災保険率+雇用保険率)
沖縄県内での具体例
那覇市内で食料品小売業を営む企業(年間賃金総額330万円)の場合:
- 労災保険率:3/1000
- 雇用保険率:14.5/1000
- 年間労働保険料:57,750円
年度更新の重要性
毎年6月1日から7月10日までの期間に「年度更新」手続きが必要です。前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付します。
年度更新で準備すべき書類
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 労働条件通知書
沖縄県内でのよくある課題と対策
観光業の季節雇用への対応
観光業では繁忙期に短期雇用が増加します。31日以上の雇用見込みがある場合は雇用保険の被保険者となるため、適切な資格取得手続きが必要です。
建設業の一人親方問題
建設業では一人親方の労災保険特別加入制度があります。元請企業は下請の労働者性を適切に判断し、必要に応じて保険関係の整理を行う必要があります。
労働保険未加入のリスク
成立手続きを怠った場合、以下のリスクが発生します:
リスクの種類 | 具体的な内容 |
---|---|
保険料の遡及徴収 | 過去に遡って保険料を徴収(追徴金も含む) |
費用徴収 | 労災事故時の給付費用を事業主が負担 |
助成金の不支給 | 雇用関係助成金が受給できない |
社会的信用の失墜 | 取引先や金融機関からの信頼低下 |
まとめ:適切な労働保険管理で安心経営を
労働保険制度は複雑に見えますが、基本を理解し適切に運用することで、従業員の安心と企業の安定経営の両立が可能です。
今すぐ実践すべき3つのポイント
- 現在の労働保険加入状況の確認
- 年度更新手続きの準備(毎年5月から開始)
- 労働保険事務組合や社会保険労務士との連携体制構築
沖縄県内の中小企業の皆さんが、労働保険制度を適切に活用して従業員と共に発展していけるよう、私たち専門家がサポートいたします。労働保険に関するご不明な点やお困りのことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
労働保険・雇用保険に関するご相談は「つばさ社会保険労務士事務所」へ
代表:玉城翼(社会保険労務士・キャリアコンサルタント)
専門分野:労務管理、組織づくり、人材育成
沖縄中部地域を中心に、地域密着型サービスを提供しています。
無料初回相談実施中 - 労働保険の成立手続きから年度更新まで、丁寧にサポートいたします。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由