はじめに:沖縄企業が直面する深刻な健康課題
令和6年の職場における定期健康診断実施結果が発表され、沖縄県は有所見率70.7%で全国ワースト2位という深刻な状況が明らかになりました。全国平均の59.4%と比較すると、実に11.3ポイントも高い結果となっています。
この数字は、沖縄県内の企業経営者や人事担当者にとって看過できない重要なシグナルです。従業員の健康状態は、企業の生産性、労働力確保、そして何より従業員とその家族の幸福に直結する経営の根幹に関わる問題だからです。
沖縄県の健康診断結果から見える課題
深刻な有所見率の実態
令和6年の沖縄労働局の発表によると、以下のような状況となっています:
- 有所見率:70.7%(全国ワースト2位)
- 全国平均との差:11.3ポイント
- 改善傾向:前年比0.1ポイント改善
健診項目別の課題
特に深刻なのは以下の項目です:
健診項目 | 沖縄県の有所見率 | 全国平均 | 差 |
---|---|---|---|
血中脂質 | 39.9% | 31.2% | +8.7ポイント |
血圧 | 25.4% | 18.4% | +7.0ポイント |
肝機能 | 24.2% | 16.2% | +8.0ポイント |
これらの数値が示すのは、生活習慣病のリスクが高い従業員が多いということです。放置すれば、将来的な医療費増大、労働力の低下、そして企業の競争力削減につながりかねません。
業種別で見る特徴的な傾向
業種別の有所見率では、以下の傾向が見られます:
- 製造業:80.3%
- 運輸交通業:76.8%
- 建設業:75.0%
これらの業種では、肉体労働や不規則な勤務が健康状態に影響を与えている可能性があります。該当する企業では、より積極的な健康管理対策が求められます。
企業が取り組むべき具体的な健康管理戦略
1. 健康診断の確実な実施と事後フォロー
労働安全衛生法により、企業には従業員の健康診断実施義務があります。しかし、実施するだけでは不十分です。
重要なポイント:
- 有所見者に対する医師による意見聴取の徹底
- 産業医や保健師による保健指導の実施
- 健康診断結果に基づく適切な就業上の措置
2. 「うちなー健康経営宣言」への参加
沖縄労働局では、令和9年までに5,000件以上の登録を目標として「うちなー健康経営宣言」の登録を推進しています。これは企業の健康経営への取り組みを対外的にアピールできる有効な手段です。
3. 生活習慣病予防対策の強化
血中脂質、血圧、肝機能の異常が多い沖縄の実情を踏まえ、以下の対策が効果的です:
食生活改善の取り組み:
- 栄養指導セミナーの開催
- 地元食材を活用したバランス良い食事の推奨
運動習慣促進の取り組み:
- ウォーキングキャンペーンの実施
- 階段利用の推奨
産業保健サービスの効果的な活用
沖縄産業保健総合支援センターの活用
企業単独では対応が困難な健康管理課題について、専門機関のサポートを受けることが重要です。特に中小企業では、以下のサービスを積極的に活用しましょう:
- 産業医の紹介・斡旋
- 健康管理に関する相談
- 研修会・セミナーの実施
産業医・衛生管理者の選任
法定の選任要件を満たすとともに、実効性のある健康管理体制を構築することが重要です。
従業員数 | 産業医 | 衛生管理者 | 衛生推進者 |
---|---|---|---|
1,000人以上 | 専属産業医 | 必要 | - |
50~999人 | 嘱託産業医 | 必要 | - |
10~49人 | - | - | 必要 |
メンタルヘルス対策との連携
身体の健康と心の健康は密接に関連しています。令和7年度全国労働衛生週間のスローガン「ワーク・ライフ・バランスに意識を向けてストレスチェックで健康職場」が示すように、総合的なアプローチが重要です。
統合的健康管理のポイント:
- ストレスチェックの適切な実施
- 長時間労働の是正
- 働き方改革の推進
- 職場環境の改善
成功事例に学ぶ実践的アプローチ
実際に健康経営に成功している沖縄県内企業では、以下のような取り組みが見られます:
- トップのコミットメント:経営陣が健康経営を重要な経営戦略として位置づけ
- 段階的な取り組み:まずは実施しやすい対策から開始し、徐々に拡大
- 従業員参加型:健康管理を従業員主体の活動として展開
まとめ:持続可能な健康経営への道筋
沖縄県の職場健康診断結果は、確かに全国平均を大きく上回る深刻な状況です。しかし、これを企業の成長機会として捉え、戦略的に健康管理に取り組むことで、以下のような効果が期待できます:
短期的効果:
- 健康診断有所見率の改善
- 従業員満足度の向上
- 医療費負担の軽減
長期的効果:
- 生産性の向上
- 離職率の低下
- 企業ブランドの向上
- 優秀な人材の確保
重要なのは、一過性の取り組みではなく、継続的で体系的なアプローチです。沖縄の豊かな自然環境と温かい職場風土を活かしながら、従業員一人ひとりが健康で生き生きと働ける職場づくりを目指しましょう。
健康経営に関するご相談は、つばさ社会保険労務士事務所までお気軽にお問い合わせください。沖縄県内の中小企業の皆様の健康経営推進を全力でサポートいたします。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由