こんにちは、つばさ社会保険労務士事務所の玉城です。
いよいよ年末調整の季節が近づいてまいりました。今年は基礎控除の見直しをはじめとした重要な改正が複数実施されるため、いつもより慎重な準備が求められています。
沖縄の経営者・人事担当者の皆さまが年末調整業務をスムーズに進められるよう、令和7年分の主要改正事項と実務上の注意点を分かりやすくお伝えします。
今年の年末調整における3つの重要改正
基礎控除と給与所得控除の見直し
令和7年分から、基礎控除額が大幅に変更されました。これまでの一律38万円から、合計所得金額に応じた段階的な控除へと変わっています。
合計所得金額 | 基礎控除額 |
---|---|
132万円以下 | 95万円 |
132万円超336万円以下 | 88万円 |
336万円超489万円以下 | 68万円 |
489万円超655万円以下 | 63万円 |
655万円超 | 58万円 |
また、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられました。これにより、多くの従業員の方で手取り額が増加する見込みです。
扶養親族等の所得要件拡大
扶養控除等の対象となる扶養親族の所得要件が、従来の48万円以下から58万円以下に引き上げられました。この改正により、これまで扶養から外れていたお子さまやご両親が、新たに扶養の対象となる可能性があります。
年末調整の際は、従業員の皆さまに「改正により新たに扶養控除等の対象となった親族がいないか」を必ず確認していただくことが重要です。
特定親族特別控除の新設
年齢19歳以上23歳未満の親族を扶養している場合に適用される「特定親族特別控除」が新たに創設されました。控除額は最大123万円と非常に大きく、該当する従業員の方の税負担が大幅に軽減される可能性があります。
この控除の適用を受けるためには「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要ですので、対象となる従業員の方への案内を忘れずに行いましょう。
年末調整業務をスムーズに進める実務のポイント
スケジュール管理と従業員への周知
今年は改正事項が多いため、従業員への周知を早めに行うことが重要です。10月中には改正内容を説明する資料を配布し、申告書の記載方法について丁寧に説明しましょう。
特に、新たに扶養の対象となる可能性がある親族がいる従業員や、特定親族特別控除の対象となる従業員については、個別にフォローすることをお勧めします。
調書方式による住宅借入金等特別控除への対応
令和7年分から導入される調書方式による住宅借入金等特別控除にも注意が必要です。該当する従業員の方は、従来のような「年末残高証明書」の添付が不要となり、税務署から交付される控除証明書等のみで手続きが可能になります。
ただし、この制度は金融機関が対応している場合に限られるため、従業員から相談があった際は、利用している金融機関が調書方式に対応しているかを確認するよう案内しましょう。
年末調整業務効率化のためのデジタル活用
国税庁が提供する「年末調整計算シート(Excel)」を活用することで、税額計算を効率的に行うことができます。従業員数が多い事業所では、年末調整手続きの電子化も検討する価値があります。
年末調整計算シート(国税庁)
電子化により、申告書の配布・回収・確認作業が大幅に簡素化され、計算ミスのリスクも軽減できます。
手続き | 期限 |
---|---|
年末調整に係る源泉所得税の納付 | 令和8年1月13日(火) |
納期の特例適用の場合 | 令和8年1月20日(火) |
給与所得の源泉徴収票等の提出 | 令和8年2月2日(月) |
まとめ:早めの準備で確実な年末調整を
今年の年末調整は改正事項が多く、通常年よりも慎重な対応が求められます。特に以下の3つのポイントを押さえて準備を進めましょう。
- 従業員への早期周知:改正内容と必要な手続きを10月中に案内
- 個別対応の徹底:扶養状況に変更がありそうな従業員への丁寧なフォロー
- デジタルツールの活用:計算シートや電子化システムで効率化
年末調整は従業員の皆さまの大切な税負担軽減に直結する重要な手続きです。改正により多くの方で手取り額の増加が期待できる一方で、手続きが複雑になる面もあります。
不明な点や具体的な計算でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
つばさ社会保険労務士事務所では、業務のサポートから来年度の労務管理体制強化まで、幅広くご相談を承っております。お困りのことがございましたら、ぜひお気軽にお声かけください。
このコラムを書いている人

玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
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