高齢化社会で勝ち抜く企業の秘訣:エイジフレンドリーな職場づくりのススメ

沖縄県内の中小企業の皆様、こんにちは。つばさ社会保険労務士事務所の玉城翼です。

最近、経営者の方々から「高齢の従業員が増えているが、どう対応していいかわからない」というご相談を頂くことが増えました。実際、2024年の統計によると、65歳以上の就業者数は930万人と過去最多を更新し、就業者の約7人に1人が65歳以上という時代に突入しています。

これは単なる数字の変化ではありません。企業の持続的成長にとって、避けて通れない重要な経営課題なのです。 

なぜ今、エイジフレンドリーな職場づくりが必要なのか

※エイジフレンドリーとは「高齢者の特性を考慮した」を意味する言葉で、WHOや欧米の労働安全衛生機関で使用されています。

高齢労働者の労働災害リスクが深刻化

厚生労働省のデータを見ると、高齢者の労働災害発生率は若年層より明らかに高く、休業期間も長期化する傾向にあります。60歳以上の労働者の労働災害発生率は、若年層の約2倍から3倍に達し、特に70歳以上では3.72の発生率となっています。

これは企業にとって、以下のような直接的なコストとリスクを意味します:

  • 労災補償費の増加
  • 代替要員確保のコスト
  • 生産性の低下
  • 企業イメージの悪化

人手不足時代における貴重な戦力

一方で、沖縄県内の多くの業界では深刻な人手不足が続いています。高齢者は豊富な経験とスキルを持った貴重な人材であり、適切な環境整備により、企業の競争力向上に大きく貢献できる存在です。

 

実践的なエイジフレンドリー職場づくりの5つのステップ

ステップ1:経営トップの方針表明と体制整備

まずは経営トップが「高齢者の安全と健康確保」を重要な経営方針として明確に表明することから始めましょう。そして、専任の担当者や組織を指定し、労働者の意見を聴く機会を定期的に設けることが重要です。

 

ステップ2:職場環境の改善(ハード面)

改善項目 具体的対策 期待効果
照明環境 作業場所の照度確保、階段への手すり設置 転倒事故の防止
床面環境 段差解消、防滑材の採用 転倒・転落事故の防止
作業補助機器 パワーアシストスーツ、リフト導入 腰痛等の身体負荷軽減
温熱環境 涼しい休憩場所整備、通気性改善 熱中症予防

ステップ3:高齢労働者の健康・体力状況の把握

定期健康診断の確実な実施はもちろん、高齢者特有の健康リスクを把握するための体力チェックシステムを導入しましょう。フレイル(身体機能の虚弱)やロコモティブシンドローム(運動機能低下)の早期発見が、事故防止の鍵となります。

 

ステップ4:個々の状況に応じた適切な業務配置

健康や体力の状況は個人差が大きいため、画一的な対応ではなく、一人ひとりの状況に応じた柔軟な業務配置と労働時間の調整が必要です。

ステップ5:継続的な安全衛生教育の実施

高齢者に対しては、時間をかけた丁寧な教育が効果的です。写真や図、映像等の視覚的教材を活用し、身体機能の低下によるリスクを自覚してもらうことが重要です。

 

導入時の留意点とリスク管理

法的リスクの回避

エイジフレンドリー職場づくりは、労働安全衛生法に基づく事業者の安全配慮義務の一環でもあります。適切な対応を怠ると、労働災害発生時の企業責任が問われるリスクがあります。

 

従業員のプライバシー保護

 健康情報や体力情報を取り扱う際は、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのための指針」に基づき、適切な管理体制を構築する必要があります。

導入フェーズ 期間目安 主な取り組み内容
準備期間 1~2ヶ月 現状調査、リスクアセスメント実施
導入期間 3~6ヶ月 設備改善、教育研修、制度整備
定着期間 6ヶ月~ 継続的改善、効果測定、見直し

今すぐ始められる3つのアクション

  1. 現状把握チェック:職場の危険箇所を高齢者の視点で総点検
  2. 従業員との対話:高齢従業員から直接、困りごとや要望をヒアリング
  3. 簡単な環境改善:段差解消、照明改善等、低コストで実施可能な改善から着手

まとめ:持続可能な経営のための投資

エイジフレンドリーな職場づくりは、単なるコストではなく、企業の持続的成長のための重要な投資です。高齢者が安全で健康に働ける環境は、すべての従業員にとって働きやすい職場環境となり、企業全体の生産性向上と人材確保につながります。

人口減少が進む沖縄県において、経験豊富な高齢者の力を最大限に活用できる企業こそが、今後の競争に勝ち残れるのです。

 


エイジフレンドリーな職場づくりでお悩みの経営者様へ

 

つばさ社会保険労務士事務所では、企業の実情に応じたエイジフレンドリー職場づくりの支援を行っております。現状診断から具体的な改善提案まで、トータルでサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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