沖縄の中小企業向け|普通解雇の適正な進め方と注意点

こんなお悩み、ありませんか?

「何度指導しても改善されない従業員がいる」「協調性に欠けて職場の雰囲気が悪化している」「能力不足で業務に支障が出ている」――沖縄県内の中小企業の経営者・人事担当者の方から、こうした声をよくお聞きします。

従業員との雇用関係を解消する手段として「普通解雇」がありますが、適切な手続きを踏まなければ、後に不当解雇として訴えられるリスクがあります。本記事では、普通解雇の要件や懲戒解雇との違い、具体的な進め方について、社会保険労務士・キャリアコンサルタントの立場からわかりやすく解説します。

 


普通解雇とは?懲戒解雇との違いを理解する

普通解雇の定義

普通解雇とは、懲戒解雇のような特別な制裁としての解雇ではなく、従業員の能力不足や協調性の欠如、業務命令違反、病気による就業不能、余剰人員の整理といった理由で行われる解雇を指します。

企業が一方的に雇用契約を終了させる手段であるため、労働者保護の観点から法律上厳しい制約が設けられています。

懲戒解雇との主な違い

 

普通解雇と懲戒解雇は、どちらも従業員との雇用を終了させる点では共通していますが、その目的と法的な取り扱いが大きく異なります。

項目 普通解雇 懲戒解雇
**解雇の目的** 雇用契約の終了 制裁としての解雇+組織の規律維持
**解雇理由の例** 能力不足、病気による就業不能、協調性の欠如など 業務上横領、重大なハラスメント、無断欠勤など
**解雇予告義務** 原則30日前の予告が必要 労働基準監督署の認定があれば不要
**退職金** 規程どおり支給 減額や不支給の場合あり

沖縄の企業でよくある事例として、長期にわたる業務命令違反や勤怠不良がある従業員について、まずは指導や注意を繰り返したものの改善が見られず、最終的に普通解雇に至るケースが多く見られます。


普通解雇が認められる4つの要件

普通解雇を有効に行うためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

要件1:正当な解雇理由があること

労働契約法第16条では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の解雇は無効とされています。

具体的には以下のポイントが重要です

  • 就業規則に解雇事由として明記されている事項に該当すること
  • 従業員に対して十分な指導や改善の機会を与えたこと
  • 指導しても改善の見込みがないこと

たとえば能力不足を理由とする場合、「何度指導しても業務の水準に達しない」「配置転換も検討したが適切な部署がない」といった事情が必要です。単に「能力が低い」というだけでは、裁判で不当解雇と判断されるリスクがあります。

 

要件2:法律により解雇が制限される場面に該当しないこと

労働基準法第19条により、以下の期間中の解雇は禁止されています。

  • 労災による療養のために休業している期間とその後30日間
  • 産前産後の休業期間中とその後30日間

これらの時期に該当する場合、たとえ正当な理由があっても解雇は違法となりますのでご注意ください。

 

要件3:原則として30日前に解雇予告すること

労働基準法第20条により、解雇する場合は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。即日解雇を行う場合は、解雇予告手当の支払いが必須です。

 

要件4:従業員に解雇を通知すること

解雇は従業員への通知(意思表示)によって効力が生じます。口頭での通知も法的には可能ですが、後のトラブルを防ぐため、解雇通知書を書面で交付し、受領の記録を残すことを強くお勧めします


普通解雇を進める際の実務上の注意点

指導記録を必ず残しておく

普通解雇が裁判で争われた場合、「会社として十分な指導や改善の機会を与えたか」が重要な判断基準となります。

指導の記録として以下を文書で残しましょう

  • いつ、誰が、どのような内容で指導したか
  • 従業員からどのような反応があったか
  • 改善が見られたか、見られなかったか

こうした記録は、万が一の労働審判や訴訟の際に、会社側の正当性を証明する重要な証拠となります。

解雇ではなく退職勧奨も検討する

普通解雇は企業にとって大きなリスクを伴います。裁判で不当解雇と判断されれば、解雇時からさかのぼって賃金の支払いを命じられる可能性があり、その金額が1000万円を超えることも珍しくありません。

そのため、可能であれば従業員との話し合いによる合意退職(退職勧奨)を目指すことが、企業のリスクを最小限に抑える現実的な方法です。


沖縄の中小企業が押さえるべきポイント

沖縄県内の中小企業では、従業員との関係が密接であるがゆえに、問題が表面化しにくい傾向があります。しかし、問題を放置すれば、職場環境の悪化や他の従業員への悪影響につながります。

地元企業としての対応のコツ

  • 問題が小さいうちに、丁寧な面談と指導を行う
  • 指導内容は必ず書面に残し、従業員にも確認してもらう
  • 地域の助成金制度(沖縄県の雇用環境改善支援など)も活用しながら、職場環境の整備を進める
  • 解雇を検討する前に、社会保険労務士などの専門家に相談する

まとめ|普通解雇は慎重に、専門家のサポートを

【本記事のポイント】

  • 普通解雇は、懲戒解雇とは異なり、能力不足や協調性の欠如などを理由とする解雇
  • 有効な普通解雇には、正当な理由、法律遵守、解雇予告、通知の4要件が必須
  • 指導記録を残し、改善の機会を十分に与えることが不可欠
  • 可能な限り退職勧奨による合意退職を目指すことがリスク管理上重要

普通解雇は、企業にとって大きな法的リスクを伴う重要な判断です。適切な手続きを踏まなければ、後に高額な金銭的負担や企業イメージの低下を招く恐れがあります。

 

当事務所では、沖縄県内の中小企業の皆様に寄り添い、労務管理の予防的なサポートを行っております。従業員との雇用に関するお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 


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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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