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沖縄県最低賃金1,023円へ改定|中小企業が今すぐ確認すべきポイント

「最低賃金が上がるって聞いたけど、うちの会社は大丈夫だろうか」「パートやアルバイトの時給、このままで問題ないのかな」——令和7年12月1日から、沖縄県最低賃金が時間額1,023円に改定されます。71円という大幅な引き上げ(引上率7.46%)により、県内の多くの中小企業で賃金体系の見直しが必要になります。

この記事では、社会保険労務士として沖縄中部地域の企業をサポートしてきた経験から、最低賃金改定への実践的な対応方法と、賃金引上げを支援する助成金制度について、明日から実践できる形でお伝えします。

 

令和7年度 沖縄県最低賃金改定の全体像

改定の概要と発効日

沖縄県最低賃金は以下のとおり改定されます。

  • 改定前:時間額952円
  • 改定後:時間額1,023円
  • 引上げ額:71円(引上率7.46%)
  • 発効日:令和7年12月1日(月)

この最低賃金は、正社員・パート・アルバイト・学生など、雇用形態や年齢にかかわらず、沖縄県内のすべての事業場で働く労働者に適用されます。最低賃金額以上の賃金を支払わない場合、最低賃金法第4条違反として罰則の対象となりますので、確実な対応が求められます。

なぜ最低賃金の確認が重要なのか

先日、ある飲食店を経営されている事業主の方から「パートさんの時給を数年前に決めたまま見直していなかった。最低賃金を下回っていないか不安で」というご相談をいただきました。確認したところ、幸い現時点では最低賃金を上回っていましたが、12月1日以降は下回る状況でした。

このように、時給を一度設定した後、見直しをしないまま数年が経過しているケースは珍しくありません。特に今回は71円という大幅な引き上げのため、これまで問題なかった賃金設定が、改定後には最低賃金を下回る可能性があります。

 

最低賃金対応のための実践ステップ

ステップ1:現在の賃金が最低賃金を上回っているか確認する

 

まずは、従業員の賃金が最低賃金を上回っているかを確認しましょう。確認方法は雇用形態によって異なります。

雇用形態 確認方法 注意点
時間給の場合 時間給の額 ≧ 最低賃金額(1,023円) 最もシンプルな比較方法
日給の場合 日給 ÷ 1日の平均労働時間 ≧ 1,023円 所定労働時間で計算
月給の場合 月給 ÷ 1か月の平均労働時間 ≧ 1,023円 諸手当(通勤手当、家族手当など)は除く
出来高払制等の場合 出来高給 ÷ 実労働時間 ≧ 1,023円 実際に働いた時間で計算

重要な注意点:最低賃金の計算に含まれない賃金があります。精皆勤手当、通勤手当、家族手当、臨時の賃金(賞与など)、時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金は、最低賃金の計算から除外されます。月給制の場合は、これらの手当を除いた基本給で計算する必要があります。


ステップ2:12月1日までに賃金改定の準備を進める

最低賃金を下回ることが判明した場合、12月1日の発効日までに賃金改定の手続きを完了させる必要があります。

必要な対応手順:

  1. 賃金規程の見直し:就業規則または賃金規程に定められた賃金額を改定します。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の変更について労働基準監督署への届出が必要です。
  2. 労働条件通知書の更新:賃金額が変更になる労働者には、新しい労働条件を明示した労働条件通知書を交付します。
  3. 従業員への説明:賃金改定の理由と内容について、従業員に丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。最低賃金法に基づく改定であることを明確に伝えましょう。
  4. 給与計算システムの変更:給与計算ソフトや勤怠管理システムを使用している場合、12月1日の給与計算に間に合うよう、システムの設定変更を行います。

 


沖縄の中小企業が活用できる支援体制

沖縄働き方改革推進支援センター(無料相談窓口)

沖縄労働局では、中小企業・小規模事業者を支援するため、「沖縄働き方改革推進支援センター」を設置しています。最低賃金対応や助成金申請について、専門家が無料で相談に応じます。

  • 所在地:那覇市泊2丁目1-18 T&C泊ビル5F-B号室
  • 電話:0120-420-780(フリーダイヤル)
  • 受付時間:平日9:00~17:00
  • 相談方法:電話、メール、来所、オンライン対応可能

企業訪問支援・出張相談会の活用

「事務所まで行く時間がない」という経営者の方も多いかと思います。沖縄働き方改革推進支援センターでは、県内の商工団体等と連携し、出張相談会を開催しています。また、希望される企業への個別訪問支援も実施していますので、お気軽にお問い合わせください。

 

まとめ:12月1日までに確認すべきこと

令和7年12月1日の沖縄県最低賃金改定に向けて、今すぐ確認していただきたいポイントをまとめます。

今すぐ実施すべき3つのアクション:

  1. 現在の賃金が最低賃金(1,023円)を上回っているか確認する:時間給、日給、月給など、雇用形態に応じた正しい計算方法で確認しましょう。通勤手当や家族手当は計算から除外することを忘れずに。
  2. 賃金改定が必要な場合、11月中旬までに手続きを完了する:就業規則の変更、労働条件通知書の交付、給与システムの設定変更など、余裕をもって準備を進めましょう。
  3. 助成金制度の活用を検討する:業務改善助成金やキャリアアップ助成金など、賃金引上げを支援する制度が複数あります。申請には計画書の提出など事前準備が必要なものもありますので、早めに情報収集を始めましょう。

最低賃金法の遵守は、企業の法的義務であると同時に、従業員が安心して働ける職場環境を整える重要な取組です。「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされませんので、この機会に自社の賃金体系を改めて見直してみてください。

対応方法や助成金申請について不安な点がございましたら、社会保険労務士などの専門家にご相談いただくことをお勧めします。沖縄の中小企業の皆様が、安心して事業を継続できるよう、私たち専門家がしっかりとサポートいたします。


無料労務相談のご案内

つばさ社会保険労務士事務所では、沖縄県内の中小企業経営者・人事担当者の皆様を対象に、初回無料相談(60分)を実施しております。

  • 最低賃金対応の具体的な手順がわからない
  • 自社の賃金体系が法令に適合しているか不安

このようなお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。御社の状況に合わせた実践的なアドバイスをご提供いたします。

お問い合わせ:当事務所ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」または電話にてご予約ください。オンライン相談にも対応しております。


 

この記事は、令和7年9月24日に沖縄労働局が発表した情報に基づき、令和7年10月時点の内容で作成しております。最新の情報は厚生労働省および沖縄労働局のウェブサイトでご確認ください。


このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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