最近、社内で「遅刻が増えた」「ミスが多い」「なんとなく活気がない」と感じることはありませんか。
沖縄の夏は長く、暑さによる疲れも溜まりやすい環境です。旧盆や地域の行事で忙しく、知らず知らずのうちにストレスを抱えている従業員も少なくありません。
「本人のやる気の問題だ」と片付けてしまうのは簡単ですが、実はその裏に「心の健康問題」が隠れていることがあります。そして、その不調を放置することは、会社にとって見えない大きな損失につながる可能性があるのです。
今回は、難しい専門用語を使わずに、会社と従業員を守るために今日からできる「心の健康づくり」についてお話しします。
出勤しているのに「仕事にならない」状態の怖さ
「病気で休む(欠勤)」ことの損失は目に見えやすいものです。しかし、最新の研究では、それ以上に怖い状態があることがわかってきました。
それは、「出勤はしているけれど、心身の不調で十分に力が発揮できない状態」です。専門的な言葉では「プレゼンティーズム」と呼ばれますが、簡単に言えば「無理をして働いている状態」のことです。
実は、この「無理をして働いている状態」による経済的な損失は、「病欠」による損失よりも圧倒的に大きいというデータがあります。日本全体では年間で約7兆6000億円もの損失が出ているという試算もあり、これは精神疾患の医療費の7倍以上にもなります。
特に沖縄に多い観光業やサービス業、接客業において、従業員が暗い顔で働いていたり、集中力を欠いてミスを連発したりすることは、直接的なお客様の満足度低下につながります。
「休むほどではないから」と無理をさせてしまうと、結果として会社全体の生産性を大きく下げてしまうのです。
参考:メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に(横浜市立大学)
職場ができる「4つのケア」とは
では、会社として何ができるのでしょうか。厚生労働省の指針では、心の健康づくりには「4つのケア」が必要だと言われています。ここでは特に重要な、現場ですぐに意識できるポイントをご紹介します。
・自分のケア(セルフケア) 従業員自身がストレスに気づき、対処することです。会社としては、ストレスチェックを実施したり、相談窓口を周知したりして、自分の状態に気づくきっかけを作ることが大切です。
・管理監督者によるケア(ラインによるケア) これが非常に重要です。現場のリーダーや上司が、部下の「いつもと違う」様子に早く気づくことです。 「挨拶の声が小さい」「服装が乱れている」「報告が遅くなった」。これらは怠けではなく、SOSのサインかもしれません。
・産業医などの専門スタッフによるケア 社内の衛生管理者や、契約している産業医と連携し、専門的な視点でサポートする仕組みです。
・外部の力を借りるケア 社内では話しにくいこともあります。地域の支援センターや医療機関など、外部の専門家につなぐネットワークを持っておくことです。
まずは「声をかける」ことから始めましょう
法律では、従業員が50人以上の事業場には「ストレスチェック(心の負担を調べる検査)」が義務付けられています。50人未満の事業場でも、実施することが推奨されています。
しかし、制度を整えることだけが対策ではありません。
まずは、経営者や上司が「最近、眠れているか?」「仕事で困っていることはないか?」と声をかけること。そして、従業員の話に耳を傾けること。これだけでも、立派な「職場環境の改善」の第一歩です。
沖縄特有の「ゆいまーる(助け合い)」の精神を職場にも取り入れ、お互いに気遣える環境を作ることが、結果として離職を防ぎ、会社の利益を守ることにつながります。
よくある質問
心の健康づくりや労務管理について、経営者の皆様からよくいただくご質問にお答えします。
専門家がお答えします(Q&A)
Q. 従業員が50人未満の小さな会社ですが、ストレスチェックは必要ですか?
A. 法律上の義務ではありませんが、実施することを強くおすすめします。
義務ではなくても「実施するよう努めること(努力義務)」とされています。何より、従業員が突然辞めてしまったり、大きなトラブルになったりする前に不調に気づけるチャンスです。少人数の職場だからこそ、一人の不調が全体に与える影響は大きくなります。
Q. 部下の様子がおかしいのですが、どう接したらいいかわかりません。
A. まずは「いつもと違うね」と事実を伝え、話を聞く姿勢を見せてください。
無理に理由を聞き出したり、励ましたりする必要はありません。「心配している」というメッセージを伝え、話をじっくり聴く(傾聴する)ことが大切です。もし業務に支障が出ているようなら、専門家への相談を勧めることも検討しましょう。
| 病気で休むこと(アブセンティーズム) | 不調のまま働くこと(プレゼンティーズム) |
|---|---|
| 欠勤、遅刻、早退など目に見える不在。 | 出勤はしているが、集中力低下やミスなど能率が落ちている状態。 |
| 企業全体の損失額としては比較的小さい。 | 企業の損失額は欠勤の数倍とも言われ、影響が大きい。 |
まとめ
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



