履歴書の嘘で解雇はできる?沖縄の企業が知っておきたい経歴詐称への正しい対応

最近、人手不足を背景に採用活動を急ぐあまり、面接時の確認が不十分なまま採用を決定してしまうケースをよく耳にします。その結果、入社後に「履歴書に書かれていた資格を持っていなかった」「聞いていた職歴と全く違う」といった経歴の嘘が発覚し、頭を抱える経営者の方もいらっしゃいます。

このように経歴を偽って入社した従業員に対して、会社はすぐに解雇を言い渡すことができるのでしょうか。結論から申し上げますと、嘘をついていたからといって直ちに解雇できるとは限りません。対応を間違えると、かえって会社側が労働トラブルに巻き込まれる危険への備えが必要です。

ここでは、従業員の経歴に嘘が発覚した際に、会社が取るべき正しい対応手順と注意点について、わかりやすく解説します。

 

経歴の嘘を理由に解雇はできるのか?

会社が従業員を解雇する手続きの中で、最も重い処分となるのが「懲戒解雇」です。懲戒解雇は従業員に対する制裁という意味合いが強く、その後の再就職にも大きな影響を与えるため、非常に厳しい基準で判断されます。

経歴を偽っていたことを理由にこの懲戒解雇を行うためには、以下の2つの条件を満たしている必要があります。

 

1つ目は、会社のルールブックである「就業規則」に、経歴を偽って入社した場合は懲戒解雇の対象になるという決まりが明記されていることです。就業規則に書かれていない理由で重い罰を与えることはできません。

 

2つ目は、その嘘が「重大な経歴の偽り」であることです。つまり、「もし最初からその事実を知っていたら、絶対に採用しなかった」と客観的に言えるほどの大きな嘘でなければ、懲戒解雇は認められにくいということです。

 

重大な経歴の偽りとはどのようなケースか

では、どのような嘘が「重大な」ものと判断されるのでしょうか。代表的な3つのケースをご紹介します。

 

・学歴の偽り

大卒以上という条件で募集したにもかかわらず、高卒であることを隠して入社した場合などです。学歴は給与の基準や配属先を決める重要な要素となるため、重大な偽りと判断される可能性が高いです。一方で「学歴不問」の募集であった場合は、採用の決定に影響を与えないため、重大な偽りとは認められにくい傾向があります。

 

・職歴の偽り

中途採用の場合、過去の経験やスキルを期待して採用を決定します。例えば「プログラミングの実務経験が5年ある」と聞いて採用したのに、実際は全くの未経験だった場合などは、業務に大きな支障をきたすため重大な偽りとなります。沖縄県内でも、特定の専門スキルを期待して採用したのに実力が伴っていなかったというご相談は多く寄せられます。

 

・犯罪歴の隠ぺい

履歴書の賞罰欄に記載すべき過去の犯罪歴(有罪判決が確定したもの)を隠していた場合です。特に、お金を扱う経理担当者が過去に横領事件を起こしていた場合などは、会社の信用や業務に深刻な影響を与えるため、重大な偽りと判断されやすくなります。

 

 

会社を守るための正しい対応手順

経歴の嘘が発覚した場合、感情的になってその場で解雇を言い渡すのは大変危険です。後から「不当解雇である」と訴えられ、多額の未払い賃金を支払うことになった事例もあります。以下の手順で冷静に対応を進めましょう。

 

・事実関係を正確に調査する

まずは、本当に経歴を偽っているのかを客観的な資料で確認します。学歴であれば卒業証明書、資格であれば資格証明書などの提出を求め、事実関係をはっきりとさせます。

 

・本人の言い分を聞く機会を設ける

調査の結果、嘘が明らかになった場合でも、必ず従業員本人に事実を伝え、言い分を聞く機会を設けてください。これを怠ると、手続きに不備があったとして処分が無効になる恐れがあります。

 

・退職を勧める選択肢も検討する

重い処分である解雇に踏み切る前に、まずは会社から「退職してほしい」と伝え、本人の同意のもとに自主的な退職を促すこと(退職勧奨といいます)をおすすめします。双方が納得して退職の合意に至れば、後々の裁判トラブルなどを防ぐことができます。

 

よくある質問

専門家がお答えします(Q&A)

Q. 経歴の嘘が発覚して解雇する場合、予告なしに即日解雇してもよいのでしょうか?

A. 原則として、30日前の解雇予告、または解雇予告手当(30日分の給与)の支払いが必要です。 非常に悪質なケースであれば、労働基準監督署の認定を受けることで即日解雇が認められることもありますが、認定には厳格な調査と時間がかかります。つまり、トラブルを防ぐためには原則通りの手続きを踏むのが安全ということです。

Q. 小さな嘘だったのですが、会社の秩序を乱すので解雇したいです。可能でしょうか?

A. 採用の判断に影響しない程度の小さな嘘であれば、解雇は重すぎる処分として無効になる可能性が高いです。 その場合は、注意指導やより軽い処分にとどめる必要があります。専門家に相談することで、嘘の程度に応じた適切な対応方法を知るメリットがあります。

経歴の項目 重大な偽りと判断されやすい例
学歴 大卒以上が応募条件の求人に、高卒であることを隠して応募した
職歴・資格 業務に必須の国家資格を持っていると嘘をつき、実務経験を偽った

沖縄の労務管理・就業規則見直しのご相談なら

御社の実情に合わせた、リスクに強い雇用契約書の作成をサポートします。 まずはお悩みをお聞かせください。

初回無料相談を予約する

🔒 秘密厳守 ⏱ 24時間受付中


このコラムを書いている人

玉城翼の写真

玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

▶コラム: 私が社労士になった理由