「うちは障害者雇用に取り組んでいる」—その認識、令和8年7月以降も通用しますか

沖縄県は全国的に見ても障害者実雇用率が高い水準にあり、多くの企業が障害者雇用に積極的に取り組んできました。観光・ホテル・介護・医療などの現場でも、障害のある方々が戦力として活躍している事例が増えています。

そのような背景もあり、「うちはすでに対応できている」と安心されている担当者様も多いのではないでしょうか。しかし、令和8年7月には法定雇用率が再び引き上げられます。現在の雇用人数や体制が新しい基準を満たしているか、今一度確認が必要な時期に来ています。

さらに、令和7年4月には「除外率制度」の見直しも実施されており、これまで対象外だった業種・企業にも影響が及び始めています。「去年と同じ対応をしているつもりなのに、気づいたら基準を下回っていた」というケースが出てきやすい局面です。


令和8年7月から、法定雇用率が2.7%へ引き上げられます

民間企業に適用される法定雇用率は、令和6年4月の2.5%への引き上げに続き、令和8年7月からさらに2.7%へと引き上げられます。

それに伴い、障害者を雇用しなければならない対象事業主の範囲も変更されます。

従業員数が40人前後の企業様は、令和8年7月以降に新たに対象事業主となる可能性があります。また、すでに対象だった企業様も、雇用率が2.7%となることで、これまでより多くの障害者を雇用する必要が生じるケースがあります。

なお、令和8年度分の障害者雇用納付金については、令和8年6月以前分は2.5%、令和8年7月以降分は2.7%でそれぞれ算定することになります(申告期間は令和9年4月から5月)。


令和7年4月施行済み—除外率の引き下げで「実質的な対象範囲」が広がっています

見落とされがちですが、令和7年4月1日から除外率制度の見直しも施行されました。除外率とは、一定の業種において、職務の性質上、障害者の雇用が困難な業種に対して、実質的な雇用義務人数を軽減する仕組みです。

この除外率が、各業種でそれぞれ10ポイント引き下げられました。これまで除外率10%以下であった業種は除外率制度の対象外となっています。

沖縄県の産業構造に照らすと、次の業種が特に関係してきます。

運輸・医療・介護・保育といった沖縄の基幹産業に密接に関わる業種が並んでいます。除外率の引き下げにより、これまでの計算式で算出していた「雇用義務人数」が実態と異なっている可能性があります。担当者様ご自身で今一度試算されることをお勧めします。

また、精神障害者の算定方法についても変更があります。週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者については、雇用率上1カウントとして算定できます(当分の間)。さらに令和6年4月以降は、週10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者が0.5カウントとして算定できるようになっています。


対応が遅れると、どのような状況が生じるのか

法定雇用率を満たせていない事業主には、不足分に応じて障害者雇用納付金の納付義務が生じます(常用労働者100人超の企業が対象)。納付金の額は1人あたり月5万円が基本となっており、雇用状況が改善されない場合は「雇用状況の公表」という形で社名が公表される可能性もあります。

採用活動への影響も軽視できません。社会的責任への意識が高まる中で、障害者雇用に関する取組状況は、求職者からの企業評価にも影響を及ぼすと言われています。 

一方で、法定雇用率の達成のみを目標とすることには落とし穴があります。厚生労働省が示す「望ましい取組」では、障害者が持てる能力を発揮し、やりがいを持って働き続けられる環境を整えることが事業主に求められています。雇用率を達成するだけでなく、定着と活躍を支援する取組が、長期的な視点から見て企業全体の生産性向上にもつながるとされています。


障害者雇用で活用できる支援制度

制度への対応と並行して、障害者が職場で本来の力を発揮できる環境づくりに取り組む企業が増えています。「障害者雇用はCSRや社会貢献ではなく、経営戦略として取り組んでいる」という声が実際に聞かれるようになってきました。

現在、事業主が活用できる支援制度にはいくつかの選択肢があります。

まず、令和6年4月から始まった「障害者雇用相談援助事業があります。これは、障害者雇用に関する相談援助を行う事業者から、原則無料で、雇入れや雇用継続に必要な雇用管理についての相談援助を受けられる制度です。雇用に踏み出せていない企業様や、採用後の定着に課題を感じている担当者様にとって、活用しやすい制度として設けられています。

また、障害者の雇用環境整備や職場適応を支援するための各種助成金も拡充・新設されています。加齢により職場適応が難しくなった方への業務転換支援、介助者の能力開発への経費助成、職場実習・見学の受入れ助成などが追加されています。要件を満たす場合に助成を受けられる可能性がありますので、まずは管轄のハローワークへご相談ください。

職場定着支援として「職場適応援助者(ジョブコーチ)」の支援も無料で利用できます。職場を訪問し、障害者本人への業務遂行支援や、事業主・同僚への助言を行ってくれる実践的な支援です。 


担当者様へ—「今の状態の確認」から始めてみてください

令和8年7月の法定雇用率2.7%への移行と、すでに施行された除外率の見直しを踏まえると、まず現状の雇用率を正確に把握することが出発点となります。

算定方法の変更点を反映した上で、自社の雇用率が新基準を満たしているか。対象事業主に新たに該当する可能性はないか。活用できる助成金や支援制度はあるか。これらを整理するだけでも、かなり多くの確認項目があります。

 

「自分の計算で合っているのか自信がない」「役員や上司に報告する前に一度整理したい」というときこそ、専門家への相談が役に立ちます。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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