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10月施行・カスタマーハラスメント防止義務化―人事担当者が今すぐ確認すべき実務ポイント

「対応はしているつもり」が通用しなくなる時代へ

「クレームへの対応は、ずっとベテランのパートさんに任せてきた」「とにかく謝って、その場を収めるようにしている」――現場からそんな声をよく耳にします。

観光・飲食・小売・介護など第3次産業が中心を担う沖縄では、従業員が日常的にお客様と接する機会が多い分、行き過ぎた言動に対してどこまで毅然と対応してよいか、判断に迷う場面も少なくありません。

令和8年10月1日、その状況が法律上の「義務」として明確に整理されます。カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)防止のための措置を講じることが事業主の義務となり、厚生労働省は同年4月24日付でその解釈事項をQ&A形式で公表しました。

「うちはもう対応している」と思っている担当者様にこそ、この機会に確認していただきたい内容があります。

 

カスハラの「対象範囲」は思っているより広い

最初に押さえておきたいのは、誰が「顧客等」に含まれるかという点です。

Q&Aでは、まだ購入・契約関係が発生していない潜在的な顧客や、今後顧客になることが想定されない施設の近隣住民からの言動も、カスハラの要素を満たせば対象になることが明示されています。また、業務で訪問した先で受ける言動――たとえば訪問介護先での利用者やその家族からの行為も、カスハラに該当しうるとされています。

カスハラの判断は、言動の「内容」と「手段・態様」の両面を総合的に見て行うとされており、どちらか一方だけが社会通念上の範囲を超えている場合でも該当しえます。

「店舗に来るお客様だけが対象」という前提で対応を整備してきた担当者様は、対象範囲の見直しが必要になる場合があります。

 

「顧客対応のない部署」も周知の対象です

「接客しない部門の従業員には関係ない」と考えている方は注意が必要です。Q&Aでは、カスハラに関する方針の周知・啓発は、所属部署や雇用形態を問わず「事業主が雇用するすべての労働者」に対して行う必要があると明示されています。

対処の内容についても同様で、社外の人と接する機会があるかどうかに関わらず、全従業員への周知が必要とされています。バックオフィスや管理部門にも研修や方針の共有が求められる、ということです。

また、今回の法改正では「求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置」も新たに義務化されています。採用面接の場や、インターンシップの受け入れ時など、採用活動にかかわる場面での性的な言動への対応も、整備しなければならない事項に含まれます。採用活動を担当している部署の方には、特に確認が必要な領域です。

 

なお、カスハラの相談窓口については、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの窓口と必ずしも一体である必要はないとされています。現場の上司が一次的な相談受付を担う体制も認められており、自社の実情に応じた設計が可能です。

 

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「知らなかった」では済まされない―未対応のリスク

義務化の意味するところは、対応していない場合に行政指導の対象になりうる、ということです。現時点では罰則規定の直接適用よりも是正指導が先行する形ですが、厚生労働省がQ&Aまで整備して解釈を明確にしてきた以上、「制度の存在を知らなかった」という言い訳は通りにくくなります。

より現実的なリスクとして意識していただきたいのは、対応の遅れが採用・定着に影響を及ぼす点です。沖縄県は全国的に見ても離職率が高く、若年層の転職意向が強い傾向があります。職場でのカスハラ被害が放置されている、あるいは相談できる体制がないと感じた従業員は、声を上げる前に離職という選択をすることが少なくありません。

法対応として整備することは、同時に従業員が安心して働ける職場環境をつくることでもあります。この二つは矛盾しません。

 

10月1日までに最低限整えておきたい社内体制

実務対応として、まず着手すべきことは以下の3点に整理できます。

一つ目は、方針の明文化と周知です。カスハラには毅然として対応し、従業員を守るという姿勢を文書化し、全従業員に伝えることが出発点になります。就業規則や社内規程への反映も、あわせて検討が必要です。

二つ目は、相談体制の整備です。現場の上司が一次受付を担う形でも構いませんが、誰に相談すればよいかを従業員が明確に把握できるよう整理しておく必要があります。

三つ目は、採用プロセスの点検です。求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置が義務化されたことを受け、面接担当者への周知と、採用場面でのルール整備を行っておく必要があります。

 

「何から手をつければよいかわからない」という段階からでも、専門家と一緒に整理することで、貴社の実情に合った現実的な対応の順序が見えてきます。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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