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産業医が辞めたら14日以内に動く—沖縄の人事担当者が今すぐ確認すべき法定手続き

ある日突然「辞めます」と言われたら

「来月で契約が切れます」「一身上の都合で辞任させていただきます」産業医からそう告げられた瞬間、頭が真っ白になった担当者の方は少なくないと思います。

観光・ホテル・福祉・医療・建設と、多様な産業が集まる沖縄では、従業員50人以上の事業場も数多く存在します。そして沖縄は全国的に健康診断有所見率が高く、生活習慣病リスクを抱える労働者の割合も相対的に大きい地域です。だからこそ産業医が果たす役割は大きく、その選任や管理にまつわる手続きは、担当者にとって見落とすことのできない業務です。

とはいえ、「産業医の辞任後に何をどの期限でやればいいか、正直なところよくわかっていない」という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が2026年4月に改めて周知を図ったリーフレットの内容をもとに、担当者として押さえるべき法定手続きを整理します。

 

50人以上の事業場が確認すべき3つの法定手続き

労働安全衛生法に基づき、従業員数50人以上の事業場には産業医の選任が義務付けられています。この前提をおさえたうえで、以下の3点を確認してください。

まず、産業医の辞任・解任・退任があった場合、事業者はその日から14日以内に新たな産業医を選任しなければなりません。「次の先生を探している途中だから」という事情があっても、この期限は変わりません。選任が遅れること自体が法令違反に該当しうるため、後任の選任は産業医との契約満了前から動き始めることが重要です。

次に、産業医が辞任または解任された場合は、遅滞なくその旨とその理由を衛生委員会または安全衛生委員会(衛生委員会等)に報告しなければなりません。この内部報告は書面で記録として残しておくことが望ましく、委員会議事録に反映しておくことが実務上の基本です。

そして、定期健康診断を実施した際に所轄労働基準監督署へ提出する「定期健康診断結果報告書」には、担当産業医の氏名を記載することが求められています。産業医が不在の状態で健康診断を実施した場合、この記載が困難になるという実務上の問題も生じます。健康診断の実施時期と産業医の任期の関係は、年間スケジュールの中でしっかり管理しておく必要があります。

 

令和8年8月から変わること

2026年現在、産業医を選任したときは所轄労働基準監督署長への報告が義務付けられています。ここに加えて、令和8年(2026年)8月1日からは、産業医の辞任・解任・退任があった場合にも、遅滞なく電子申請により所轄労働基準監督署長へ報告することが新たに義務化されます。

ただし、前任の辞任等と新任の選任を同時に報告する場合は、辞任等の単独報告は不要とされています。電子申請の手段としては「e-GOV電子申請」のほか、「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」が利用できます。 

「まだ令和8年の話だから」と後回しにしがちですが、対応手順を確認しておくことと実際に電子申請のシステムに習熟しておくことは、別の話です。この機会に、担当者として操作感を確認しておくことをおすすめします。

「相談するほどでもないかな」と思っていることが、実は一番大事だったりします。

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手続きが漏れたとき何が起きるか

産業医に関する手続きは、労働安全衛生法上の義務です。選任義務の不履行や報告義務の懈怠は、法令違反として労働基準監督署の調査対象となりうるものです。

沖縄県は、全国と比較して労働基準法関連の違反指摘率が高い傾向にあります。産業医に関する手続きは、就業規則の整備や労働時間管理と並んで、監督指導の際に確認される項目のひとつです。「うちは小さいから大丈夫」という感覚は、残念ながら根拠にはなりません。

また、産業医が不在の期間が生じると、実務上も支障が出てきます。月80時間を超える時間外労働者への面接指導の実施、ストレスチェックの結果に基づく対応、長期休業者の職場復帰判断—これらはいずれも産業医の関与が前提となる業務です。担当者が一人でこれらをカバーしなければならない状況は、労働者の健康管理の観点からも望ましくありません。

さらに、産業医から受けた勧告の内容と、それに対して講じた(または講じようとする)措置の内容は、衛生委員会等に報告し、3年間記録として保存することが義務付けられています。この記録管理が形骸化している事業場は、整備の機会として捉えていただければと思います。

 

担当者一人で全部わかっている必要はない

産業医の選任・報告・情報提供・記録保存……これだけの義務を、人事担当者が日々の業務のかたわら漏れなく把握し続けることは、決して簡単ではありません。特に担当者が変わったばかりの事業場や、管理部門が少人数で運営されている企業様では、「前任者のやり方を引き継いでいるが、本当に正しいかどうかわからない」という状況も少なくないと感じています。

そのような場合こそ、社会保険労務士を活用していただきたいと思います。手続きの正確な把握だけでなく、産業医の紹介窓口との連携や、衛生委員会の議事録整備、健康診断結果の事後措置フローの整理など、実務に直結したかたちでサポートすることが可能です。「何がわからないかもわからない」という段階からでも、一緒に整理しましょう。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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