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障害者雇用の『丸投げ』はなぜ問題なのか—厚労省報告書が示した3つの課題

 

障害者雇用の担当者として、法定雇用率の達成は毎年プレッシャーのかかるテーマではないでしょうか。採用したいという気持ちはあっても、業務の切り出し、日々のサポート体制の構築、障害特性への理解といった実務的なハードルは決して低くありません。こうした現実的な困難を背景に、いわゆる「障害者雇用ビジネス」と呼ばれる外部業者のサービスを活用する企業が急増しています。

厚生労働省が把握した限りでも、こうしたビジネスを利用した障害者の就業者数は、2023年3月末の約6,600人から2025年10月末には約11,100人へと、わずか2年半で7割近く増加しています。沖縄は障害者の実雇用率が全国トップクラスに位置するエリアですが、それは多くの企業が障害者雇用に向き合ってきた証である一方で、雇用率達成へのプレッシャーが強い分、こうしたサービスへの利用ニーズも高まりやすい環境にあります。

2026年に入り、障害者雇用ビジネスを利用して雇用された在宅勤務の障害者が、実質的な仕事を与えられないまま自己学習を繰り返すだけの状態が続いていたという事案が報道されました。雇用主である企業と障害者の間に日常的な接点がほとんどなく、就労管理が外部業者に委ねきりになっていたことが問題の根本にあるとされています。この問題は一部の事例に留まらず、制度全体の設計に関わる構造的な課題として、行政機関も正式な検討に乗り出しています。

 


厚生労働省の研究会が示した「雇用の質」への問題提起

令和8年2月、厚生労働省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」が報告書をまとめ、同年4月の労働政策審議会障害者雇用分科会でその内容が報告されました。この報告書は、障害者雇用ビジネスを巡る課題を公式に整理しており、その内容は障害者雇用ビジネスを利用しない企業にとっても無縁ではありません。

まず報告書が指摘するのは、業務内容と就業場所の分離によって生じる雇用責任の希薄化です。利用企業の本業と障害者が従事する業務の関わりが薄く、他の従業員と就業場所が切り離されることで、「障害の有無にかかわらず共に働く」という制度の理念から離れていくとされています。企業側の障害者への理解が深まらず、キャリア形成を含めた雇用管理の意識にまで至らないことも、同じ文脈で問題視されています。

これと関連して報告書が挙げるのが、付与される業務の固定化です。習熟に応じた職務内容のレベルアップが図られない状態や、組織的な関与が薄いために適正な雇用管理や合理的配慮がなされないケースが課題として記されています。さらに、障害者の能力発揮の成果が企業の事業活動に十分結びついていない場合、法定雇用率の達成のみを目的とした雇用となり、働く障害者自身の意欲を損なわせることにつながるとも指摘されています。

なお報告書は、これらの問題は障害者雇用ビジネスを利用しない一般的な障害者雇用においても生じ得るものであると明示しており、すべての企業の人事担当者にとって自社を点検するきっかけになる内容です。

 

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制度の方向性—今後求められる企業側の対応

研究会の報告書では、現状把握の取り組みだけでは十分でないとした上で、二つの制度的対応の方向性が示されています。

 

一つ目は、障害者雇用状況報告への報告項目の追加です。障害者雇用ビジネスを利用している場合に、就業場所や業者の情報、業務内容、利用予定期間などの報告を求めることで、行政が網羅的に実態を把握し、必要に応じた指導監督を行えるようにする方向で検討が進んでいます。企業名の公表を求める意見も一部から出ており、今後の議論の行方が注目されます。

 

二つ目は、事業者と利用企業の双方を対象としたガイドラインの策定です。利用企業向けには、障害者の就業成果を自社の事業活動に有効活用すること、一定期間の利用後は自社内での直接雇用への移行を目指すことが望ましいとする方向性が示されています。また、障害者本人・利用企業の人事担当者・業者の三者間で、合理的配慮の内容を含めた定期的なコミュニケーションを確保することをガイドラインに明記する方向でも検討が進んでいます。

 

これらはまだ検討段階にあるものの、制度の方向性は明確に「雇用の量から質へ」のシフトを示しています。今後の法改正や行政指針の整備を見据え、現在の雇用体制を早めに見直しておくことが、担当者として取り得る最善の準備です。

 


適正な障害者雇用を実現するために、今確認したいこと

制度対応の準備を進める上で、まず確認しておきたいのは、雇用している障害をお持ちの方との直接のコミュニケーションが確保されているかどうかです。外部業者を介している場合であっても、定期的な面談や業務報告のルートが貴社と障害者本人との間に存在しているかを確認してください。研究会のガイドライン案では三者間の定期コミュニケーションが明示される方向にあり、その基本的な仕組みを今から整えておくことが大切です。

あわせて見直しておきたいのが、外部業者との委託契約の内容と責任範囲です。業者に何を委託しているのか、どこからが自社の責任領域なのかを書面で整理しておくことが、実際に業務が適切に提供されているかの確認とセットで、行政への説明責任を果たす上でも重要になってきます。

沖縄において障害者雇用に取り組んでいる企業の多くは、数字の達成だけでなく、地域の中で障害者が働ける場を真剣に考えてきたはずです。今回の制度的な動きは、その取り組みの「中身」を問い直す機会でもあります。現状の雇用体制が適正かどうか判断に迷う場合は、ぜひ専門家への確認を活用してみてください。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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