沖縄の熱中症労災が、過去10年で最多に
2025年、沖縄労働局が発表した熱中症による労働災害(休業4日以上)の件数は16人。2021年・2024年と並び、過去10年間で最多となりました。業種別では建設業が4人で全体の25%、続いて接客娯楽業が3人、警備業が2人。発生事業場の64%以上が従業員50人未満の規模で、午後3時台や朝9時前といった、日差しが最も強い時間帯の前後に多く発生している点も特徴的です。
第三次産業の比率が高く、年間を通して屋外作業や接客が活発な沖縄では、夏季の熱中症対策は事業継続上の重要なテーマです。特に職場に60歳以上の従業員がいる場合、若年層と比較して体温調節機能や喉の渇きへの感度が低下しやすく、重症化への配慮が一段と求められます。
「対策の必要性は分かっているが、何から手を付ければいいのか整理できていない」「機器を購入したいが、補助金は使えるのだろうか」という状況、実は多くの担当者様が直面しています。本稿では、令和8年度のエイジフレンドリー補助金「熱中症対策コース」を活用するうえで押さえておきたい要件と実務上のポイントを整理します。
エイジフレンドリー補助金「熱中症対策コース」とは
エイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者が安全に働ける職場づくりを支援する制度で、その「熱中症対策コース」は、暑熱環境で就労する60歳以上の労働者向けの機器導入費用を対象としています。原資は労災保険料であり、社会保険とは区別されている点が、社会保険料関連の手続きとは異なる特徴です。
申請にあたっては、事業者の属性と作業環境の双方が一定の要件を満たしている必要があります。
対象事業者と作業環境の要件
まず事業者要件として、業種ごとに定められた従業員数の上限を満たすことが求められます(例:サービス業や医療・福祉業は常時100人以下)。ただし、日雇い・2か月以内の期間雇用・季節的業務(4か月以内)・試用期間14日以内の者は人数に含めません。1年以上事業を継続していることも条件で、新設したばかりの事業場や倉庫への導入は対象外となります。
見落としがちなのが、労働保険の加入・納付の証明書類です。最新の「労働保険概算・確定保険料申告書」と、対応する年度の「領収済通知書」または「領収証書」の提出が必須となります。「納入通知書」では領収の証明として認められない点には注意が必要です。
作業環境については、室温31℃以上またはWBGT値28℃以上の暑熱環境で60歳以上の労働者が就労していることが条件です。労働安全衛生規則第606条に基づき冷房や通風などの措置を講じてもなお基準を下回らない事情を、具体的に説明できることが求められます。屋外作業で遮るものがない、熱源の影響で空間全体の冷却が困難である、といった作業の特性を文書で示せると、申請の説得力が増します。
補助対象になる機器・ならない機器
補助の対象になるのは、「直接的に身体を冷却する機能」を備えた機器に限定されます。具体的には、熱排気が可能な移動式スポットクーラー、水の気化熱を利用するミストファン、電動ファン付き作業服、アイススラリー用冷凍ストッカー(最大400Lまで)などが該当します。
一方で、熱中症対策として販売されていても対象外となる物品が多くあります。気化式冷風機・水冷式エアコン、一般的な扇風機やサーキュレーター、WBGT指数計(令和8年度の規定により対象外)、保冷剤や首用冷感グッズなどの消耗品、冷蔵庫や保冷温庫(冷凍専用でないもの)、建物の遮熱塗装や断熱改修工事は、いずれも本コースの対象になりません。「熱中症対策に使えるはず」と思って購入したものが、後で対象外と判明するケースは少なくありません。
数量と組み合わせ
補助対象の個数は、その暑熱作業に従事する60歳以上の労働者数が上限です。1名の労働者が複数の作業場所を移動する場合でも、原則として1名につき1台までとなります。
組み合わせにも制限があります。スポットクーラーとミストファン、スポットクーラーとファン付き作業服のように、「身体を冷却する」という目的が重複する機器の組み合わせは認められません。一方、スポットクーラーと冷凍ストッカーは、「冷却機器」と「冷却材の保管設備」で用途が異なるため、組み合わせが可能です。
申請計画を立てる段階で、対象となる労働者数・機器の種類・組み合わせの可否を整理しておくことが、後の修正作業を防ぐ近道です。
「相談するほどでもないかな」と思っていることが、実は一番大事だったりします。
初回無料相談はこちらタイミングと支払方法—ここでつまずくと不支給になる
要件を満たし機器も選定できたとしても、実務段階の手続きで不支給につながる典型的なつまずきが2つあります。
ひとつは発注のタイミングです。「交付決定通知書」を受領する前に発注・契約・購入した経費は、いかなる理由があっても支給対象外となります。ECサイトの注文ボタンのクリックも「発注」とみなされ、ポイント利用や事前決済も対象外の取扱いです。発注書の日付は交付決定通知の日付よりも後である必要があり、同日付の場合も到達時間の前後を証明することが難しいため、対象外と判断される可能性が高くなります。
もうひとつは支払方法です。認められるのは銀行振込のみで、現金払い・ローン・小切手・手形・電子マネー・プリペイド・ポイント利用はいずれも対象外となります。振込時には「銀行振込明細書(振込証)」の原本または写しを必ず保管しておく必要があります。また、補助対象外の備品や消耗品を補助対象機器と同じ請求書にまとめてしまうと、計画通りの実施かどうかが確認できないとして、支給が見合わせられることがあります。
実績報告に必要な書類と最終締切
最終的な実績報告の期限は令和9年1月31日です。それまでに支払を完了し、以下の書類を整えて提出します。
機器購入の場合の必須書類は、発注書(日付入り)・納品書・請求書・銀行振込明細書の4点です。これに加えて、実際に高年齢労働者がその機器を使用している設置・活用状況の写真や、機器の型番・仕様(排熱機能の有無等)が確認できるカタログの写しを求められることがあります。
また、リースやレンタルは対象外で、機器の購入が条件です。自社で据付作業を行った場合の材料費や人件費も対象になりません。そして重要な点として、社会保険労務士や販売業者による提出代行は認められず、事業主自らが責任をもって申請・提出を行う必要があります。
「自社で完結させる」申請だからこそ、準備段階の整理を
「書類の日付が1日ずれていた」「ポイントをわずかに使ってしまった」—こうした細部のミスが、数十万円規模の支給差につながるのが補助金実務の特徴です。経理部署との連携、社内での情報共有、申請スケジュールの管理が欠かせません。
代行申請が認められない制度であるからこそ、申請そのものは担当者様が進める前提で、要件確認・機器選定の妥当性・証憑書類の準備・スケジュール設計といった「申請前の整理」を、専門家の視点でいったん点検しておくことが有効です。要件を満たす場合に補助が受けられる制度ですが、整理が不十分なまま手続きに入ると、後から修正がきかない場面が出てきます。
「これで合っているのか」と一人で抱えながら進めるよりも、早い段階で全体像を整理しておくことが、結果として確実な手続きへの最短ルートになります。
エイジフレンドリー補助金の活用、自社の要件を一緒に確認しませんか
対象機器の選定から証憑書類の整理、申請スケジュールの設計まで、要点を押さえながら準備を進めましょう。まずは現状をお聞かせいただくだけで構いません。
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



