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「診断書を持ってきた」その日から始まる休職対応—正しい発令と復職支援の実務ガイド

ある日、従業員が「病院に行ったら、しばらく休むように言われました」と診断書を差し出してくる。そのとき、担当者として何をすべきか、すぐに答えられるでしょうか。

沖縄県内の企業では、観光・飲食・小売・介護などの第3次産業が雇用の大部分を担っています。接客や対人業務の比重が高く、慢性的な人手不足のなかで働く従業員にとって、心身の不調は決して珍しいことではありません。実際、沖縄では健康診断の有所見率が高く、生活習慣病をはじめとした健康上の課題を抱える労働者が多いことは、県内の事業者であればどこかで感じていることではないでしょうか。

「しばらく様子を見よう」「本人が戻ると言っているから」と場当たり的に対応してきた結果、気づいたときには就業規則に根拠がなく、復職の条件も曖昧なまま—という状況に陥っているケースが少なくありません。担当者が正確な知識を持っていれば、こうした混乱の多くは防ぐことができます。

 

休職は「権利」ではなく、会社が下す「命令」です

まず、法的な整理から始めます。育児休業や介護休業は、法律によって従業員に認められた権利です。要件を満たせば、会社に拒否権はありません。一方、私傷病による休職は、労働基準法その他の法律に直接の定めがありません。会社が就業規則によって任意に設ける制度であり、会社側が発令する「業務命令」に位置づけられます。

この違いを曖昧にしていると、従業員が「明日から休職します」と一方的に宣言し、会社がそれに追随する形になってしまいます。業務の引き継ぎもできず、期間の見通しも立たず、チームへの影響も最小化できない。こうした事態は、制度の性質を誤って理解しているところから始まります。

休職の法的根拠は、労働契約における労務提供義務の不履行と、会社の安全配慮義務の2つです。健康上の理由で契約通りのパフォーマンスを発揮できない状態は、厳密には労務提供が一時的に困難な状況です。同時に、無理に働かせて症状が悪化した場合、会社は安全配慮義務違反として損害賠償請求を受けるリスクがあります。「本人が働きたいと言っているから」という理由だけで就労を継続させることは、会社にとっても大きな法的リスクを伴います。

 

就業規則と産業医の連携が実務の基盤になる

休職対応を適切に進めるためには、就業規則に明確な規定があることが前提です。具体的には、休職を命じる条件(欠勤が一定期間に達した場合など)、診断書の提出と産業医面談の受診義務、休職期間の上限と満了後の取り扱い—これらを明文化し、従業員・管理職・人事担当者の共通認識として機能させておく必要があります。

規定があいまいなまま休職対応を進めると、後から「そんな取り決めは聞いていない」「期間の計算がおかしい」といったトラブルの原因になります。就業規則は、従業員を縛るためではなく、双方にとって安心して働ける環境の土台となるものです。

産業医との連携も欠かせません。主治医の診断書は、あくまで患者側の立場から作成されます。会社の業務内容・職場環境・業務負荷を熟知したうえで判断できるのは産業医です。初回の産業医面談は、単なる状況確認にとどまらず、会社が安全配慮義務を誠実に果たしていることを示す重要な機会でもあります。

 

ただ、「産業医に相談を」と言われても、従業員が50人未満の事業場では産業医の選任義務がなく、相談先がないと感じている担当者も多いのではないでしょうか。そうした場合に活用できるのが、沖縄産業保健総合支援センターが設置する「地域産業保健センター」です。労働者数50人未満の事業場を対象に、医師や保健師によるメンタルヘルスを含む健康管理相談、健康診断結果に関する医師からの意見聴取、長時間労働者や高ストレス者への面接指導などのサービスを無料で提供しています。利用は事業場あたり年度2回までとなっていますので、まず相談の場として活用することをおすすめします。

 

参考:地域産業保健センターのご案内

「相談するほどでもないかな」と思っていることが、実は一番大事だったりします。

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対応を誤ると何が起きるか

休職対応における失敗のパターンは、大きく2つに分かれます。一つは「放置」、もう一つは「見切り発車による対応」です。

休職規定がないまま長期欠勤を認め続けると、その従業員の処遇を正当に判断する根拠が失われます。期間が定まっていないため、職場の他のメンバーに過剰な負担がかかり続け、結果として周囲からの離職につながることもあります。沖縄県内の企業は離職率の高さという課題を抱えており、一人の不調対応がチーム全体の安定に影響することは珍しくありません。

逆に、本人の意向を十分に確認せず、または適切な医学的判断を経ないまま早期に雇用終了の判断をした場合、不当解雇や安全配慮義務違反として争いになる可能性があります。

採用難の観点からも見ておく必要があります。県内の観光・サービス業では、一人を採用・戦力化するまでに相当のコストと時間がかかります。医療の進歩により、適切な治療を受ければ職場に戻れるケースは増えています。適切な休職期間を設けて回復を支援することは、新規採用に頼るよりも合理的な人材確保の選択肢になり得ます。「休ませて終わり」ではなく、「戻ってきてもらう」ことを前提とした対応の設計が重要です。

 

発令の瞬間から「復職」を設計する

休職対応で最も多い失敗は、「とりあえず休ませてから後で考える」というパターンです。発令の段階から、復職に向けた道筋を書面で共有しておくことが実務の鉄則です。

具体的には、休職期間の満了日、復職の判断基準(主治医と産業医双方の意見を確認するプロセス)、休職中の連絡方法と頻度—これらを本人と合意した形で文書に残しておきます。連絡を完全に断ってしまうと、本人が孤立感を深め、復職への意欲が低下することがあります。一方で、頻繁な業務連絡は休養を妨げます。適切な距離感を保つことが、担当者として求められる判断です。

メンタルヘルス不調による休職は、長期化する傾向があります。満了直前になって慌てて復職の話を進めるのではなく、休職期間の中盤以降からリハビリ的な出勤(試し出勤)の可能性を示唆し、段階的な再適応を支援することが、スムーズな職場復帰につながります。復職後の配置や業務内容の調整も、事前に検討しておくことが望ましいです。

 

適切な休職管理は、組織全体の回復力・対応力が高まります

休職制度は、不調になった従業員を職場から切り離すための仕組みではありません。一時的な不調をリセットし、再び働ける状態に戻るための支援の仕組みです。適切な発令と復職支援が機能している職場では、従業員が「何かあっても相談できる」という安心感を持てます。その安心感が、日頃の業務における信頼関係と定着率の向上につながります。 

就業規則に休職規定があるか、産業医との連携体制が整っているか、復職支援のプロセスが明確になっているか—これらは「あって当たり前」ではなく、整備できていない企業のほうが多いのが実情です。まず現状を確認することが、最初の一歩です。

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発令から復職支援まで、整理すべきポイントを一緒に確認します。まず現状をお聞かせいただくだけで構いません。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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