給与計算も勤怠管理も一通りこなしてはいるけれど、「今のやり方で本当に法令に沿っているのか、自信を持って言い切れない」。そうした引っかかりを抱えながら日々の業務にあたっている、という状況、実は多くの担当者様に共通しています。とりわけ沖縄県では、令和7年の有効求人倍率が1.09倍となり、ほとんどの産業で人手不足が深刻な状況です。少ない人員で総務・労務を兼任し、制度改正を追いかけながら現場を回している企業様も少なくありません。
その一方で、沖縄県の労働行政には全国とは異なる特徴があります。令和6年に労働基準監督署が実施した定期監督等は合計2,033件で、労働基準関係法令の違反率は74.6%でした。全国平均の違反率70.1%を上回る水準が続いており、これは決して一部の企業だけの問題ではないことを示しています。日々まじめに対応していても、知らないうちに見落としが生じている可能性は、どの企業様にもあるのです。
定期監督で確認される項目は、想像以上に多岐にわたる
定期監督とは、労働基準監督署が年間の計画に基づいて事業場を選定し、労働基準関係法令が守られているかを確認するために行うものです。労働者からの申告をきっかけとする調査とは異なり、特定のトラブルがなくても対象となる点が特徴です。沖縄県では令和6年、労働者からの申告を端緒とする申告処理も443件(前年比14.5%増)と増加傾向にあり、平時からの備えの重要性が高まっています。
確認される項目は幅広く、労働時間の適正な把握、時間外・休日労働に関する36協定の締結と届出、割増賃金の正しい計算と支払い、就業規則の作成・届出と記載内容、賃金台帳や労働者名簿といった法定帳簿の整備などが代表的です。さらに令和7年度には沖縄県の最低賃金が時間額1,023円へと引き上げられ、各従業員の時給換算額が最低賃金を下回っていないかの確認も改めて求められる状況です。
産業医の選任義務がない規模の事業場では、健康管理や労働時間の確認役を社内だけで担うことになり、負担が一点に集中しがちです
従業員50人未満の事業場では産業医の選任義務がなく、健康管理や労働時間の確認を社内の担当者だけで担うことになります。そのため、専門的な視点でのチェックがどうしても後回しになりやすいのが実情です。下記は、定期監督でよく確認される項目を、自社で一度見直すための簡単な確認リストです。
・タイムカードや勤怠システムで、始業・終業時刻を客観的に記録できているか
・時間外休日労働をさせる場合、36協定を締結し、有効期限内のものを届け出ているか
・割増賃金(時間外・休日・深夜)の割増率と計算根拠は正しいか。固定残業代がある場合、その金額と対応する時間数を明示できているか
・就業規則を作成・届出し、最新の法令や実態に合った内容になっているか(常時10人以上の事業場)
・賃金台帳・労働者名簿・出勤簿の法定三帳簿が整っているか ・各従業員の時給換算額が、令和7年度の沖縄県最低賃金1,023円を下回っていないか
これらは一つひとつは基本的な事項に見えても、自社の実態に照らして網羅的に点検しようとすると、相応の知識と時間を要します。変形労働時間制を導入している場合の協定や規程の整合性確認などは、特に専門的な視点が欠かせません。担当者様お一人で、通常業務と並行してすべてを確認しきるのは、現実的に大きな負担となります。
「相談するほどでもないかな」と思っていることが、実は一番大事だったりします。
初回無料相談はこちら見落としを放置した場合に生じうること
労務管理上の見落としは、それ自体がすぐにトラブルになるとは限りません。ただ、定期監督で是正すべき点が見つかった場合には是正勧告や指導票が交付され、期日までに改善状況を報告する必要が生じます。たとえば割増賃金の計算方法に誤りがあった場合、過去にさかのぼって差額を精算するよう求められることもあり、対象となる労働者数や期間によっては相応の金額になります。
また、こうした対応は本来の業務に上乗せされる形で発生します。資料の収集、計算のやり直し、規程の改定、報告書の作成といった一連の作業に追われ、ただでさえ人員に余裕のない職場に大きな負荷がかかります。日頃から整っていれば数時間で確認できることが、後手に回ると数週間がかりの対応になってしまう、ということも起こり得ます。これは行政が厳しいということではなく、平時のうちに整えておくことの価値が大きい、という話です。
整えておくことは、働く人にとっても会社にとっても安心につながる
労働時間や賃金の管理が整っていることは、行政対応のためだけではなく、そこで働く方々が安心して働ける環境づくりそのものです。沖縄県では正社員での人材確保の動きが高まっており、労務管理がきちんとしている職場であることは、定着や採用の面でも企業様の強みになります。法令を守ることと、働きやすい職場をつくることは、本来同じ方向を向いています。
とはいえ、何から手をつければよいのか、自社の状況が基準に照らしてどうなのかを判断するのは容易ではありません。だからこそ、外部の専門家を確認役として活用していただく意味があります。現状をお聞かせいただければ、点検すべきポイントを優先順位とともに整理し、無理のない形で改善を進めるお手伝いができます。調査の連絡が来てから慌てるのではなく、平時の落ち着いたタイミングで一度ご相談いただくのが、結果的に最も負担の少ない進め方です。
定期監督への備え、自社の労務管理を確認しませんか
労働時間の管理や就業規則の整備など、どこから手をつけるべきか、現状をお聞かせいただくところから一緒に整理しましょう。まずは気になる点をお話しいただくだけで構いません。
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



