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施行まで半年、こども性暴力防止法への準備は今どこまで進んでいますか

今年12月の施行が迫る中、保育園や認定こども園、学校、学習塾、そして児童を対象とする一部の介護・福祉サービスなど、こどもと接する現場を抱える事業者様から、「準備が思うように進んでいない」というご相談が増えています。今年初めにガイドラインが公表され、春にはGビズIDの取得が一つの目安とされていましたが、日々の業務に追われる中で着手が後回しになり、気づけば施行まで半年を切っていた—そういう状況に、実は多くの担当者様が直面しています。

特に沖縄県では、保育・教育・介護のいずれの分野も慢性的な人手不足が続いています。有効求人倍率が長期にわたって1倍を超え、現場は日々の人員確保に追われているのが実情です。そうした中で「新しい確認制度に対応しながら、いまいる職員も守り、現場を回し続ける」という三つの要請を同時に満たすことは、決して簡単ではありません。施行日まで残された時間が限られているからこそ、いま自社の準備状況を一度棚卸しし、残りの期間でやるべきことを明確にしておくことに大きな意味があります。

このコラムでは、こども性暴力防止法が事業者様に求める対応を、人事労務の実務という視点から整理します。専門用語をできるだけかみ砕き、担当者様が「次に何をすればいいか」をイメージできることを目指します。

 

施行までのスケジュールと、押さえておきたい全体像

 

こども性暴力防止法は、児童等に教育・保育等を提供する事業者に対し、従事者による性暴力を防止するための措置を講じることを義務づける法律で、2026年12月25日に施行されます。注目を集めている「犯罪事実確認」、いわゆる日本版DBSの仕組みはその一部であり、法律の本質は、採用から日々の職場運営、情報管理に至るまで、組織全体の安全確保のあり方を見直すことにあります。

施行に向けた準備は段階的に進んできました。今年1月にはガイドラインが公表され、対象範囲や「不適切な行為」の考え方が示されました。確認手続きの基盤となるGビズIDの取得は春ごろが一つの目安とされており、これは法人・運営者単位で進める必要があるものです。この夏には事務手続のマニュアルが公表される見込みで、事案が疑われる場合の報告・対応ルールの整備が、これから本格的に求められていきます。そして12月25日の施行をもって、犯罪事実確認の実施と安全確保措置の運用が始まり、その後、現職者についても順次確認の対象が広がっていく予定です。

ここで担当者様に意識していただきたいのは、これらが単独の事務作業ではなく、互いに連動しているという点です。GビズIDの取得が済んでいなければ確認手続きに着手できず、就業規則の改定が間に合わなければ確認結果を人事上の措置に反映できません。一つひとつは小さな手続きに見えても、全体が噛み合って初めて機能する仕組みだということを、最初に押さえておく必要があります。施行まで半年という時期は、これらを慌てずに積み上げられる、ぎりぎりの準備期間といえます。

 

 

 

採用・契約の段階で整えておきたいこと

 

確認制度への対応は、人が組織に入る入口、つまり採用の段階から始まります。日本版DBSによる照会が可能になるのは内定後や採用後ですが、その前段階で募集要項や誓約書を整えておくことが、後の手続きを円滑に進める土台になります。

具体的には、募集要項に特定性犯罪の前科がないことを採用条件として明記し、内定時や入社手続きの際に、本人から所定の誓約を得ておく形が基本になります。誓約の内容としては、特定性犯罪事実に該当しないこと、犯罪事実確認の対象となることへの同意、そして提出書類や申告内容に偽りがないことなどが想定されます。政令の整備状況によっては、青少年健全育成条例や迷惑防止条例といった条例レベルの取扱いも視野に入れて文言を検討しておくと、制度の移行期にも対応しやすくなります。

あわせて、内定通知書や入社時の契約において、重要な経歴の詐称があった場合や、法定の期限までに必要な確認手続きへの協力が得られない場合の取扱いを、あらかじめ明確にしておくことが望まれます。これは応募者を疑うためのものではなく、こどもと働く大人の双方にとって、ルールが事前に共有されている状態をつくるための整備です。採用に関わる書式は一度作れば長く使うものですから、自社の実情に合わせて個別に検討しておくことをおすすめします。

 

就業規則と服務規律の見直し

 

採用の入口を整えたら、次は就業規則です。犯罪事実確認の結果や、職場で起きた問題を人事上の措置に結びつけるためには、その根拠となる規定が就業規則に置かれている必要があります。規定が抽象的なままだと、いざ事案が起きたときに、どのような対応が許されるのかの判断が難しくなってしまいます。

懲戒に関する規定では、採用時に前科を秘匿して虚偽の誓約をしていた場合や、法に定める児童対象性暴力等を行った場合、刑罰を科されたにもかかわらず報告を怠った場合、確認手続きや安全確保のための配置転換等の業務命令に正当な理由なく従わない場合などを、具体的に位置づけておくことが考えられます。

加えて重要なのが、性暴力に至る前段階の「不適切な行為」をあらかじめ定義しておくことです。たとえば、SNSや私的な連絡手段を使ってこどもと個別にやり取りすることや、死角となる場所で必要もなく二人きりの状態を続けることなどを、服務規律の中で明確に位置づけておく。こうした線引きを事前に共有しておくことは、従事者にとっても「何が許されないのか」がはっきりし、無用な疑いから自分自身を守ることにつながります。就業規則の改定は施行直前に慌てて行うものではなく、すでに公表されているガイドラインの内容を踏まえながら、いまのうちに自社に合った形に仕上げていくことが大切です。

 

「疑い」が生じたときの対応と、賃金の扱い

 

実務上、最も判断が難しいのが、性暴力の疑いがあると認められた場面での初動です。被害の拡大を防ぐための迅速さと、従事者の権利を守るための慎重さを、同時に求められるからです。

まず前提として、こうした事案の事実確認は、専門的な配慮を要します。確認の進め方を誤れば、こどもの記憶に影響を与えてしまったり、後の手続きで証言が活かせなくなったりするおそれがあります。だからこそ、自社だけで抱え込まず、必要に応じて弁護士などの専門家や関係機関と連携する初動フローを、あらかじめ用意しておくことが望まれます。

そして人事労務の観点で見落とせないのが、事実確認の間に従事者を一時的に通常業務から外す場合の賃金の扱いです。事業者側の判断として調査のために就業を見合わせてもらう場合、その期間の賃金をどう扱うかは、労働基準法の定めに照らして慎重に整理する必要があります。賃金の支払義務は法律上の最低基準が定められており、安易な取扱いは、後に賃金をめぐるトラブルや、確認の結果問題がなかった場合の従事者との関係悪化につながりかねません。「疑い」の段階はあくまで疑いであって、従事者の名誉や生活への配慮を欠いた対応は、別の労働紛争を生む火種になります。

 

この賃金の整理や暫定措置のルールづくりは、就業規則・労働契約・実際の運用フローが噛み合って初めて機能します。条文を一つ確認すれば済むという性質のものではなく、自社の体制全体を見渡したうえで設計する必要があるため、担当者様お一人での判断が難しいと感じる場面も少なくないはずです。

「相談するほどでもないかな」と思っていることが、実は一番大事だったりします。

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機微な情報をどう守るか—情報管理体制の整備

 

こども性暴力防止法への対応では、犯罪事実確認の結果という、極めて機微な個人情報を扱うことになります。この情報をどう管理するかは、施設の信頼に直結する重要な論点です。万一の漏えいは、法的な責任にとどまらず、保護者からの信頼を損ない、事業の継続そのものを脅かしかねません。

情報の管理方法は、組織の規模や運用体制に応じて設計します。責任者を一人に絞り、システム外に情報を保存しない形であれば管理はシンプルですが、複数拠点を本部で一括管理するような場合は、閲覧できる人を厳格に限定し、より高度なセキュリティ対策が求められます。物理的な面では、画面の覗き見を防ぐ間仕切りや、端末の固定といった対策が考えられます。

実務上の盲点になりやすいのが、担当者の異動や担当変更のタイミングです。離職時の権限削除は意識されやすい一方で、異動の際にアクセス権限を消し忘れるケースは見落とされがちです。一度仕組みを作って終わりにするのではなく、定期的に権限の棚卸しを行う運用まで含めて設計しておくことが、情報を確実に守ることにつながります。情報管理は単なるシステムの問題ではなく、退職後も含めた秘密保持を従事者に徹底してもらうという、組織のガバナンスの問題でもあります。

 

施行までにやっておきたいことの整理

 

ここまでの内容を、準備の優先順位という形で整理します。第一に、確認手続きの基盤となるGビズIDの取得を、まだ済んでいなければ最優先で進めること。第二に、懲戒事由の具体化と「不適切な行為」の範囲の定義を含めた、就業規則等の改定に着手すること。第三に、条例違反への対応や確認への同意を盛り込んだ採用書類の更新を行うこと。第四に、組織の規模に合わせた情報管理規程を整え、閲覧権限を限定すること。そして第五に、事案が疑われたときの関係機関・専門家との連携フローを、あらかじめ確立しておくことです。

これらはいずれも、施行直前に一度に片付けられるものではありません。この夏に予定される事務手続マニュアルの公表といった節目を踏まえながら、残りの半年で段階的に積み上げていく必要があります。沖縄の現場が人手不足の中で日々の運営に追われていることを考えれば、なおさら早めの着手が、現場の負担を平準化することにつながります。

 

こども性暴力防止法への対応は、こどもの安全を守ると同時に、誠実に働く従事者の権利と職場の安心を守る取り組みでもあります。法律の趣旨を正しく踏まえながら、自社の実情に合った仕組みを無理なく整えていくことが、結果として現場で働く一人ひとりを支えることになります。準備の進め方に迷われたときは、人事労務の専門家とともに、自社にとって現実的な道筋を描いていただければと思います。

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就業規則の改定から情報管理体制の整備まで、施行までにやるべきことを一緒に整理しましょう。まずは現状をお聞かせいただくだけで構いません。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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