算定基礎届の対象月、その判断で合っていますか—担当者が押さえたい基本

毎年7月がやってくると、人事労務のご担当者様の机の上には算定基礎届の用紙が並びます。給与計算や入退社の手続きに追われる日々のなかで、「4月から6月の給与をまとめて、標準報酬月額を見直す」というこの作業に、毎年どこか身構えてしまう—そうした状況、実は多くの担当者様が共通して経験されています。

 

特に沖縄県では、観光・飲食・小売といった産業を中心に、パートタイマーや短時間で働く従業員が職場の大きな戦力となっています。求人倍率が長く1倍を超え、人手不足が続くなかで、働き方も勤務日数も一人ひとり異なるのが実情です。だからこそ、月によって支払基礎日数が変わる従業員をどう扱えばよいのか、判断に迷う場面が生じやすくなります。算定基礎届は一見すると単純な集計作業のようでいて、実は従業員ごとの事情を一つずつ確認していく、繊細さの求められる手続きなのです。

 

標準報酬月額と算定基礎届の基本的な仕組み

 

 

健康保険や厚生年金保険の保険料は、従業員の毎月の報酬をそのまま使うのではなく、報酬をいくつかの等級に区分した「標準報酬月額」をもとに計算されます。この標準報酬月額を年に一度、実際の報酬額と照らし合わせて見直す手続きが定時決定であり、そのために提出するのが算定基礎届です。

決定の基礎となるのは、原則として4月・5月・6月の3か月間に支払われた報酬です。ここで一つ目の、そして特に注意したいポイントが「支払われた」という考え方です。算定基礎届では、締め日ではなく実際に支払いが行われた日を基準に報酬を集計します。たとえば毎月20日締め・当月25日支払という給与規定であれば、4月・5月・6月に実際に支払われた給与を対象とすることになります。

 

 

ここで気をつけていただきたいのが、労働保険の年度更新との違いです。同じ時期に行う手続きでありながら、年度更新では賃金を「締め日ベース」、つまりその月に支払いが確定した賃金として集計するのが原則です。一方、算定基礎届はあくまで「支払日ベース」で考えます。両者は集計の基準となる日が異なるため、同じ4月から6月の給与を扱っていても、対象に含まれる範囲がずれることがあります。年度更新の感覚のまま算定基礎届を処理してしまうと、対象月の報酬を取り違えてしまう原因になりますので、それぞれ別のルールであることを意識して進めることが大切です。

二つ目のポイントが「支払基礎日数」です。これは、その報酬の支払い対象となった日数を指します。月給制であれば原則として暦日数が基礎日数となりますが、日給制や時給制では実際に勤務した日数が基礎日数となります。そして、算定の対象とできるのは支払基礎日数が17日以上ある月に限られます。3か月すべてが17日以上であれば、その3か月の報酬を合計して3で割り、標準報酬月額を算出します。算出にあたっては1円未満を切り捨てる、といった細かな取り扱いも定められています。

 

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ここで実務が一段と複雑になるのが、月によって基礎日数が異なる場合です。3か月のうちに17日未満の月が含まれているときは、その月を除き、17日以上の月だけで平均を出します。たとえば5月だけが17日未満であれば、4月と6月の2か月の合計を2で割って報酬月額を求めることになります。

 

さらに、短時間就労者、いわゆるパートタイマーには別の取り扱いが用意されています。1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者と比べて4分の3以上である従業員が対象で、まず17日以上の月で算定するのが原則です。しかし3か月とも17日未満であった場合には、15日以上の月を対象として算定するという特例が設けられています。3か月すべてが15日も満たない場合には、また別の判断が必要になります。一人の従業員の勤務状況を月ごとに追いながら、どの月を対象月とするのかを正しく見極めなければならないわけです。 

 

このように、算定基礎届は従業員ごとに雇用形態や勤務日数を確認し、対象月を判定し、現物給与や通勤手当の取り扱いまで含めて集計していく作業です。従業員数が増えるほど、また雇用形態が多様であるほど、確認すべき項目は積み重なり、担当者様の工数は決して小さなものではありません。

算定の判断を誤ったときに生じうること

 

算定基礎届で決定された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの保険料の計算に用いられます。つまり一度の判断が一年間にわたって効力を持つため、対象月の選び方や集計を誤ると、その影響も一年単位で続いていくことになります。

たとえば、本来は除外すべき17日未満の月を含めて平均してしまった場合や、パートタイマーの特例を適用し損ねた場合には、標準報酬月額が実態とずれてしまいます。その結果として、保険料の金額が本来あるべき水準と異なってしまうだけでなく、従業員が将来受け取る年金額など、給付の面にも関わってくる可能性があります。社会保険は、要件を満たすことで給付が受けられる制度です。だからこそ、その土台となる標準報酬月額が正しく決定されていることが、従業員の安心にもつながります。

沖縄県では、定期監督における法令違反率が全国平均を上回る水準で推移している実態もあります。これは労務管理全般に言えることですが、社会保険の手続きについても、正確さと適切な届出が求められる場面が確実に存在するということを示しています。誤りに後から気づいた場合には訂正の手続きが必要となり、その対応にはさらなる時間と労力がかかります。最初の段階で正確に処理しておくことが、結果として担当者様の負担を最も軽くする道筋になるのです。

 

迷ったときは、早めに専門家へ

 

算定基礎届は、ルール自体は明確に定められている一方で、従業員一人ひとりの勤務実態に当てはめていく場面で判断が求められる手続きです。月給制と日給・時給制の違い、17日基準と15日特例の使い分け、現物給与や通勤手当の扱いなど、確認すべき論点は思いのほか多岐にわたります。「これで合っているだろうか」という小さな迷いを抱えたまま提出してしまうより、提出前の段階で一度整理しておくほうが、安心して手続きを進められます。

 

つばさ社会保険労務士事務所では、算定基礎届をはじめとする社会保険の手続きについて、貴社の実情に即したご相談をお受けしています。沖縄県内の事業所ならではの雇用形態の多様さも踏まえながら、対象月の判定から書類の整え方まで、担当者様と一緒に確認していくことができます。毎年の手続きを少しでも確かなものにしたいとお考えのときは、お気軽にご相談ください。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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