その懲戒処分、進め方は大丈夫ですか 担当者が押さえておきたい処分の「段階」と正しい手順

その懲戒処分、進め方は大丈夫ですか 担当者が押さえておきたい処分の「段階」と正しい手順

遅刻を繰り返す社員、周囲への態度が問題になっている社員。「さすがに何か処分を」という話が社内で持ち上がったとき、その進め方をどう組み立てるか、担当者として悩まれる場面は少なくないと思います。

経営者から「もう辞めてもらうしかない」と強い言葉が出ることもあれば、現場からは「あの人だけ何のお咎めもないのは不公平だ」という声が上がることもある。その板挟みのなかで、法律上どこまでが許されるのかを整理しなければならない—こうした状況、実は多くの人事労務担当者が直面しています。

沖縄では有効求人倍率が長期にわたり1倍を超え、全産業で人手不足が続いています。一人ひとりの人材が貴重だからこそ、問題が起きたときの対応は慎重にならざるを得ません。同時に、定期監督における法令違反率が全国平均を上回る水準で推移していることもあり、労務管理の一つひとつが後々問われる可能性を意識しておく必要があります。懲戒処分は、その典型的な場面のひとつです。

 

懲戒処分は「雇用の終了」だけではない まず知っておきたい段階

 

懲戒処分と聞くと、雇用契約を解消する重い処分をまず思い浮かべる方が多いかもしれません。ただ実際には、行為の程度に応じていくつもの段階が用意されています。一般的には、将来を戒めるための戒告、始末書を提出させて反省を促す譴責、給与から一定額を差し引く減給、一定期間の就労を禁じる出勤停止、役職や職位を引き下げる降格、退職を勧告して本人の納得のうえで退職に至る諭旨退職、そして最も重い懲戒解雇、といった順に整理されます。

これらの名称は法律で一律に決まっているわけではなく、就業規則に定めることで各社が独自に用いることもできます。大切なのは呼び名そのものよりも、どの行為に対してどの処分が対応するのかを就業規則に明記し、その要件を満たしているかどうかを丁寧に確認することです。

なかでも諭旨退職は、懲戒解雇の一歩手前に位置づけられる処分として、実務上の役割を担っています。本人に考える時間を持ってもらい、退職金を支給したうえで区切りをつけるという選択肢は、双方にとって納得感のある解決につながりやすく、後の紛争を避けるための現実的な進め方として検討する価値があります。

 

一つの事案に二つの処分は科せない 二重処罰の禁止という原則

 

「これだけ損害を出したのだから、減給に加えて出勤停止も」と考えたくなる場面もあるかもしれません。ただ、一つの事案に対して複数の処分を重ねて科すことは、原則として認められていません。いわゆる二重処罰の禁止という考え方です。複数の処分を積み重ねてしまうと、後に紛争となった際、処分が過剰であったと判断され、かえって企業側が難しい立場に置かれることがあります。

感情ではなく、その行為に対してどの段階の処分が最も釣り合うのかを冷静に見極める。この一つを選び取る姿勢が、結果として企業を守ることにつながります。

 

処分の重さは「金額」だけで決まらない 役職や社会的影響も判断材料に

 

処分の重さを決めるうえでは、行為そのものだけでなく、それが組織や社会に与えた影響も総合的に考慮する必要があります。たとえば顧客から預かった資金の着服といった事案では、金額の大小以上に、信頼関係を損なったことや企業の社会的責任という観点が重く見られる傾向があります。

 

また、同じハラスメント行為であっても、管理職による場合は一般の従業員による場合より重く判断されることがあります。役職者の不祥事は「この会社は大丈夫だろうか」という不安を職場全体に広げやすく、組織の規律を保つマネジメントの観点から、影響力に応じた責任が問われるためです。処分は本人への対応であると同時に、他の従業員の信頼を維持するための判断でもある、という視点を持っておきたいところです。

「相談するほどでもないかな」と思っていることが、実は一番大事だったりします。

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適法に進めるために 担当者が押さえておきたい実務のポイント

 

ここまで整理してきた内容には、いくつか法令上の裏づけがあります。まず減給には上限が定められており、一回の額は平均賃金の一日分の半額まで、総額は一賃金支払期における賃金総額の十分の一までとされています。この範囲を超えた減給は認められません。

雇用の終了に踏み切る場合も、原則として少なくとも三十日前の予告、または三十日分以上の平均賃金の支払いが必要です。労働者の責に帰すべき事由がある場合などの例外はありますが、その判断は慎重を要します。

そして最も重要なのが、懲戒処分そのものの有効性です。処分が、その行為の性質や態様に照らして客観的に合理的な理由を欠いていたり、社会通念上相当と認められなかったりする場合には、権利の濫用として無効とされます。つまり、就業規則に根拠があり、事実関係が確認され、行為と処分の重さが釣り合っていて、かつ本人に弁明の機会を与える—こうした手続きの積み重ねがあって初めて、その処分は有効なものとして扱われます。

 これらの要件を一つずつ確認しながら手続きを進めるには、相応の工数と法令知識が求められます。事実関係の整理、就業規則の該当条項の確認、処分内容の妥当性の検討、本人への通知手順の設計と、担当者お一人で抱えるには負担の大きい作業が続きます。

 

処分の前に、まず「仕組み」と「対話」を

 

懲戒処分が必要になる場面は、多くの場合、個人の資質だけでなく、会社の管理体制に見直しの余地があったことを示していることもあります。たとえば高額な着服が長期間見過ごされていたとすれば、それを可能にしていたチェック機能のあり方も、あわせて点検する価値があります。起きた結果への対応だけでなく、そうした事態を生まない環境づくりに目を向けることが、根本的な改善につながります。

経営者から「すぐにでも処分を」という声が上がっている段階でご相談をいただくことが多いのですが、法的なトラブルを避けるうえで大切なのは、一呼吸置いて事実関係を整理し、適切な段階を踏んでいくことです。あらかじめ「無断欠勤が何日続いたらどの処分に該当するか」といった目安を就業規則とあわせて整えておけば、判断のぶれを防ぎ、いざというときにも落ち着いて対応できます。

 懲戒規定は、社員を裁くためだけのものではありません。社員に改善の機会を示し、組織の秩序と尊厳を守るための、揺るぎない軸として機能させることができます。その軸づくりのお手伝いを、私たちにお任せいただければと思います。

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就業規則の該当条項の確認から、処分内容の妥当性、通知手順の整理まで、一緒に組み立てていきましょう。まずは今の状況をお聞かせいただくだけで構いません。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

特定社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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