「傷病手当金の申請書類、また郵送で時間がかかってしまった」「給付金の審査状況が分からず、従業員から何度も問い合わせがくる」――こんなお悩みはありませんか?
令和8年1月から、協会けんぽ(全国健康保険協会)が電子申請サービスを開始します。これにより、これまで紙の申請書と郵送でしか対応できなかった健康保険の各種手続きが、インターネット経由でオンライン完結できるようになります。
この記事では、沖縄の中小企業の経営者・人事担当者の皆さまに向けて、電子申請サービスの具体的な内容、メリット、そして利用開始に必要な準備について分かりやすく解説します。読み終えたら、まずはマイナンバーカードの準備から始めてみましょう。
協会けんぽの電子申請サービスとは?令和8年1月開始の新制度を解説
紙の申請書から解放される!電子申請の基本的な仕組み
協会けんぽの電子申請サービスは、これまで「紙の申請書」に記入し、郵送や窓口持参で行っていた健康保険・船員保険の各種手続きを、インターネットを通じてオンラインで完結できる新しい仕組みです。
従来の方法では、申請書をダウンロードして印刷し、手書きまたはパソコンで入力・印刷したものに、医師の証明書や領収書などの添付書類を同封して郵送する必要がありました。郵送には往復で数日から1週間程度かかり、書類に不備があれば再送付の手間も発生していました。
電子申請では、スマートフォン、タブレット、パソコンのいずれかから協会けんぽの専用ウェブサイトにアクセスし、必要事項を入力。添付書類はカメラで撮影した画像データをアップロードする形式となります。申請が完了すれば即座に協会けんぽ側に届き、審査状況もリアルタイムでオンライン上から確認できます。
このサービスは令和8年1月13日に開始予定で、健康保険の現金給付申請(傷病手当金、出産手当金など)をはじめとする主要な手続きが対象となります。
マイナンバーカードで簡単認証、どこからでも申請可能に
電子申請サービスを利用する際の本人確認(認証)は、マイナンバーカードを使用します。これにより、申請者本人であることを確実に証明でき、セキュリティ面でも安心です。
具体的な流れとしては、スマートフォンやパソコンから協会けんぽの電子申請サービスにアクセスし、マイナンバーカードをスマートフォンのカメラ機能(NFC機能)やICカードリーダーで読み取ります。これにより、申請者の健康保険資格情報が自動的に取得され、氏名や生年月日などの基本情報を手入力する手間が省けます。
なお、マイナンバーカードは「マイナ保険証(健康保険証との紐づけ)」の設定をしていなくても利用可能です。カード取得時に市区町村の窓口で設定した4桁の暗証番号(利用者証明用電子証明書のパスワード)があれば、電子申請サービスを利用できます。
事前にマイナポータルアプリのインストールが必要となりますが、無料でダウンロードできます。沖縄県内でも多くの自治体がマイナンバーカードの交付を推進しており、申請から約1か月程度で受け取れます。
電子申請で効率化できる主要な手続きと具体的なメリット
傷病手当金・出産手当金など、オンラインで申請できる給付一覧
電子申請サービスで対応可能な主要な申請書類は以下の通りです。
| 申請の種類 | 対象となる主な給付 | 利用できる方 |
|---|---|---|
| 現金給付 | 傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料 | 被保険者本人(一部は被扶養者も) |
| 療養費 | 立替払、治療用装具、海外療養費 | 被保険者・被扶養者 |
| 高額療養費 | 高額療養費、限度額適用認定 | 被保険者・被扶養者 |
| 任意継続 | 資格取得申出、資格喪失申出、被扶養者異動届 | 任意継続被保険者 |
| その他 | 高齢受給者証再交付、特定疾病療養受療証交付 | 被保険者・被扶養者 |
特に利用頻度が高いのが、病気やケガで休業した際に支給される「傷病手当金」と、出産に伴う休業期間の「出産手当金」です。これらは従来、医師の証明欄を含む複数ページの申請書を郵送する必要がありましたが、電子申請では医師の証明書を画像データとしてアップロードすることで手続きが完了します。
また、治療用装具(コルセットや義足など)の療養費支給申請や、海外で医療を受けた際の海外療養費なども対象となっており、多様な業種で活用できる内容となっています。
郵送の手間・時間・費用を削減できる実務上のメリット
電子申請の最大のメリットは、「郵送」に関わるあらゆる負担を削減できることです。
まず時間の削減です。紙の申請では、申請書を印刷し、必要事項を記入し、添付書類を同封して郵便局やポストに投函するまでに少なくとも半日から1日程度の作業時間が必要でした。さらに、協会けんぽに届くまでの郵送日数(沖縄本島内でも2〜3日、離島の場合はさらに日数を要する)と、審査後の結果通知が返送されるまでの期間を含めると、最短でも1〜2週間程度かかっていました。
電子申請では、申請情報の入力と画像のアップロードだけで手続きが完了し、送信は即座に完了します。審査状況もオンライン上で随時確認できるため、「申請書が届いているか」「いつ頃結果が出るか」といった従業員からの問い合わせにも、迅速かつ正確に対応できます。
次に費用の削減です。定型郵便であれば84円、速達や書留を使えば数百円の郵送費が1回の申請ごとに発生していました。年間で複数回の申請がある企業では、年間数千円から数万円のコスト削減につながります。
さらに再提出の負担軽減も重要なポイントです。紙の申請では、記入漏れや添付書類の不備があった場合、協会けんぽから返送された書類を再度郵送し直す必要がありました。電子申請では、不備があった場合でも申請データがオンライン上で返却されるため、修正箇所を直接編集して再送信するだけで済みます。
電子申請を始める前に知っておきたい準備と注意点
マイナンバーカードとマイナポータルアプリの事前準備
電子申請サービスを利用するには、事前に以下の準備が必要です。
1. マイナンバーカードの取得
マイナンバーカードをまだお持ちでない方は、お住まいの市区町村に申請してください。沖縄県内の各市町村でも、窓口や郵送、オンラインでの申請が可能です。申請から交付まで約1か月程度かかるため、早めの手続きをお勧めします。
カード受取時に設定する「利用者証明用電子証明書の暗証番号(4桁)」は、電子申請の際に毎回必要となりますので、忘れないよう管理してください。万が一忘れた場合や、3回連続で間違えてロックされた場合は、市区町村の窓口で再設定が必要です。
2. マイナポータルアプリのインストール
スマートフォンやタブレットから電子申請を行う場合は、デジタル庁が提供する「マイナポータルアプリ」を事前にインストールしてください。このアプリは、App Store(iPhone/iPad)またはGoogle Play(Android)から無料でダウンロードできます。
パソコンから申請する場合は、ICカードリーダーが必要です。ただし、パソコン画面上にQRコードを表示させ、スマートフォンのマイナポータルアプリで読み取る方法もあるため、ICカードリーダーを持っていない方でも対応可能です。
3. 推奨動作環境の確認
電子申請サービスは、Windows 10以上、Mac OS 13以上のパソコン、iOS 16以上、Android OS 12以上のスマートフォン・タブレットで利用できます。ブラウザは、Microsoft Edge、Google Chrome、Safariの最新版を推奨します。
沖縄県内の中小企業では、従業員が個人のスマートフォンを使って申請するケースも多いと想定されます。その場合、事前に動作環境を確認し、必要に応じてOSやアプリのアップデートを行っておくとスムーズです。
まとめ
今日から始められる3つのステップ:
- マイナンバーカードの取得・確認: まだお持ちでない方は、お住まいの市区町村で申請手続きを開始しましょう。既にお持ちの方は、暗証番号が分かるか確認してください。
- マイナポータルアプリのインストール: スマートフォンまたはタブレットに、マイナポータルアプリを事前にダウンロードしておきましょう。
- 対象となる申請書類の確認: 自社でよく利用する申請(傷病手当金、療養費など)が電子申請の対象かどうか、協会けんぽのウェブサイトで確認してください。
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



