「休職していた社員から『戻りたい』と連絡があったが、本当に大丈夫だろうか?」 「復帰しても、またすぐに体調を崩してしまうのではないか……」
県内の事業所様から、このようなご相談をいただく機会が急増しています。メンタルヘルス不調による休職・離職は、ご本人にとって辛い経験であると同時に、組織にとっても貴重な人材の損失につながりかねない重大な課題です。
特に沖縄県は、第3次産業が約8割を占める産業構造上、対人業務によるストレス負荷がかかりやすい傾向にあります。また、非正規雇用の割合が全国的に見ても高く、キャリア形成への不安や雇用の流動性が、メンタルヘルスに影響を与えるケースも少なくありません。
本記事では、つばさ社会保険労務士事務所の経験に基づき、沖縄の地域特性を考慮した「再発させない職場復帰支援」のポイントを解説します。
メンタルヘルス対応の難しさと「3つの視点」による判断
身体的な怪我や病気と異なり、メンタルヘルスの不調は回復の度合いが目に見えにくいのが特徴です。ご本人が「もう大丈夫です」と言っても、焦りから無理をしているケースは多々あります。
再発を防ぎ、長く安心して働いてもらうためには、以下の3つの視点から客観的に判断する仕組みが必要です。
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ご本人の視点: 生活リズムは整っているか、通勤への不安はないか。
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医学的な視点: 主治医や産業医による「就業可能」の判断はあるか。
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職場の視点: 受け入れ体制や業務調整が可能か。
特に沖縄では、台風時の出退勤ルールや、旧盆などの地域行事と業務の繁忙期が重なることがあり、これらが復職直後の社員にとって予想以上の負荷となる場合があります。こうした地域特有の環境要因も考慮に入れた計画が必要です。
職場復帰支援プログラムの整備
厚生労働省の指針でも推奨されている通り、あらかじめ「職場復帰支援プログラム」を策定しておくことが重要です。ルールが曖昧なままだと、場当たり的な対応になり、トラブルの原因となります。
まずは、貴社の現状と照らし合わせ、以下のチェックリストを確認してみてください。
職場復帰準備チェックリスト
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【無料ダウンロード】 両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成例 職場復帰またはリハビリ出勤に際してはプランを作成して従業員の方と共有しておくことが重要です。
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主治医との連携:曖昧な「復職可」を防ぐために
よくあるトラブルとして、主治医の診断書には「復職可」とあるのに、実際に出勤してみると業務に耐えられなかった、というケースがあります。これは、主治医が「日常生活が送れるレベル」で判断しており、「職場で求められる業務レベル」を把握していないことによるギャップが原因です。
このギャップを埋めるためには、事業所側から主治医へ積極的に情報提供を行う必要があります。
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業務内容の詳細: 立ち仕事か、デスクワークか、対人折衝の有無など。
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勤務条件: 残業の有無、通勤手段(沖縄では車社会のため、運転の可否や渋滞ストレスも考慮)、シフト体制など。
これらをまとめた「勤務情報提供書」を主治医に提示し、より精度の高い「主治医意見書」を作成してもらうプロセスが、再発防止の鍵となります。
【実録事例】復職支援の成功モデル
ここで、円滑な復職を実現した企業の事例を(個人・企業が特定されないよう加工して)ご紹介します。
事例:IT関連業務(30代女性・勤続5年)のケース
【状況】 業務量の増加とプロジェクト責任者への抜擢によるプレッシャーから精神障害を発症し、3ヶ月間休職。本人は早期復帰を希望していましたが、通勤時のバス利用に強い不安を抱えていました。
【課題】
通勤時に発作が起きる懸念。
責任感の強さから、復職直後にペースを飛ばして再燃するリスク。
【当事務所の支援と解決策】 私たちは、ご本人、会社側担当者、そして(ご本人の同意を得て)主治医と連携し、以下の段階的なプランを策定しました。
通勤訓練の実施: まずは業務を行わず、ラッシュ時間を避けた時間帯に「会社まで来て帰る」だけの訓練を実施。
- 短時間勤務からのスモールスタート: 最初は週3日、1日4時間の勤務から開始。業務内容も責任の重い業務からは一時的に外し、定型業務を中心としました。
- 定期面談の実施: 復帰後3ヶ月間は、2週間に1度、人事担当者との面談を設定し、体調や業務量の過不足を細かく調整しました。
【結果】 段階的な慣らし期間を経たことで、ご本人の「また迷惑をかけるのではないか」という心理的負担が軽減されました。半年後にはフルタイム勤務へ移行し、現在は再発することなく、以前のスキルを活かして活躍されています。
この事例の成功要因は、会社側が「焦らせない」という姿勢を明確に示し、主治医の意見を取り入れた柔軟な働き方(時差出勤など)を認めた点にあります。
専門家と共に「人が辞めない組織」を作る
メンタルヘルス不調者の対応は、労働安全衛生法などの法律知識だけでなく、ご本人への繊細な配慮と、現場の業務調整という高度なバランス感覚が求められます。対応を誤ると、安全配慮義務違反などの法的リスクが生じるだけでなく、他の社員のモチベーション低下や連鎖的な離職にもつながりかねません。
つばさ社会保険労務士事務所では、沖縄の地域性や貴社の実情に合わせた「就業規則のメンタルヘルス規定」の整備から、個別の「復職支援プラン」の作成まで、一貫してサポートいたします。
「対応に迷っている社員がいる」「制度を整えたいが何から始めればいいかわからない」という経営者様・ご担当者様は、まずはお気軽にご相談ください。
このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
1982年沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



