「知らなかった」では済まされない。職場のメンタルヘルス対応、3つの意外な落とし穴

沖縄の職場は経営者や上司と従業員の距離が近いことが魅力です。しかし、メンタルヘルス(心の健康)の問題に関しては、その「家族のような親しさ」があだとなり、大きなトラブルに発展するケースが後を絶ちません。

部下を心配してとった行動が、実は法律違反になったり、会社やあなた自身を訴訟のリスクにさらしたりすることがあります。「知らなかった」では済まされない、善意が招く3つの意外な落とし穴について、専門用語を使わずに分かりやすく解説します。

 

家族への無断連絡はNG。「心配だから」は通用しません

沖縄では、従業員の家族とも顔見知りというケースが珍しくありません。そのため、部下が調子を崩していると、親心から「親御さんに相談してみよう」と電話をしてしまうことがあります。

しかし、これは非常に危険です。法律やプライバシーの観点から、「命の危険が迫っている緊急時を除き、本人の同意なく会社が家族に病状や勤務状況を伝えてはいけない」という厳格なルールがあるからです。

「家族に知られたくない」という事情は、人それぞれです。家庭環境が複雑な場合もあれば、単に心配をかけたくないという思いもあるでしょう。この境界線を会社側が勝手に越えてしまうと、「信頼を裏切られた」と感じさせ、修復不可能な関係悪化を招きます。

大切なのは、勝手に動くことではなく、本人に対して「一人で抱え込まず、家族や専門家の力を借りることも大切だよ」と、選択肢を提案することに留める姿勢です。

 

「会社の問題」では済まない?上司個人が訴えられるリスク

「従業員の安全を守る義務(安全配慮義務)」というと、「それは会社が負う責任でしょ?」と考える管理職の方が多くいます。

確かに、第一義的な責任は会社(事業者)にあります。しかし、法律の解釈では、現場で部下を指揮監督する立場にある上司もまた、会社の義務を履行する「補助者」とみなされます。

つまり、現場で部下の不調に気づいていたのに放置したり、誤った対応をして悪化させたりした場合、「会社だけでなく、上司個人も損害賠償請求の対象になる」可能性があるのです。実際に、過去の裁判では上司個人に賠償を命じる判決も出ています。

法律を守り、正しい対応の手順を踏むことは、会社を守るためだけではありません。現場で汗をかくあなた自身と、あなたの家族の生活を守るための「盾」になるのです。

 

支援の拒否は「わがまま」ではない。「決められない」という症状です

「産業医と面談してみないか」「少し休んだらどうだ」と提案しても、本人が頑として首を縦に振らないことがあります。何度も拒否されると、「せっかく心配しているのに、わがままだ」と苛立ちを感じてしまうかもしれません。

しかし、ここで感情的になってはいけません。うつ状態などのメンタルヘルス不調に陥ると、脳の機能が低下し、「正常な判断や決断ができなくなる」という症状が現れます。本人はわがままを言っているのではなく、「怖くて決められない」「悪い方向にしか考えられない」という状態に陥っている可能性が高いのです。

この状態の相手に決断を迫っても、追い詰めるだけです。「今は決めるのが難しい時期なんだな」と理解し、無理に答えを出させようとせず、まずは安心できる環境を作ることから始めましょう。

 

心の健康問題こそ、プロの知識を「お守り」に

今回ご紹介した「同意なき連絡」「個人の賠償責任」「拒否という症状」の3点は、いずれも「良かれと思って」やりがちな行動の裏側に潜んでいます。

沖縄の企業が持つ温かさを活かしつつ、法的なトラブルを防ぐためには、正しい知識という「お守り」が必要です。従業員を守り、そして経営者や管理職であるあなた自身を守るためにも、自己判断で動く前に、まずは専門家へご相談ください。

 

専門家がお答えします(Q&A)

よくあるご質問をまとめました。

専門家がお答えします(Q&A)

Q. 部下が明らかに不調そうですが、病院へ行くよう命令できますか?

A. 原則として「受診命令」は非常にハードルが高い行為です。
就業規則に明確な根拠規定(受診命令の条項)がない限り、強制することはできません。無理強いすると「パワハラ」と言われる危険性もあります。まずは産業医との面談を勧めるなど、段階を踏んだ対応が必要です。

Q. 休職していた従業員が復職する際、気をつけることはありますか?

A. 主治医の診断書だけで判断せず、会社側が求める業務が可能か確認することが重要です。
「日常生活に支障がない」レベルと「以前と同じように働ける」レベルには差があります。短時間勤務から始める「慣らし勤務」の導入など、再発を防ぐためのプラン作りを専門家と一緒に進めましょう。

 

まとめ

沖縄の労務管理・メンタルヘルス対応のご相談なら

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「こんな時どうする?」という小さなお悩みからお聞かせください。

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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