最近、ニュースなどで雇用保険料率の変更について耳にすることはありませんか。厚生労働省の審議会において、2026年(令和8年)4月から雇用保険料を引き下げる方針が了承されました。
雇用保険料0.1ポイント下げ 1.35%に、来年4月(共同通信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/35a1ccb288ac102f0a33671a459d514a71ae55e3
沖縄県内では最低賃金の引き上げや、観光業を中心とした雇用の活発化が続いています。人件費の管理がますます重要になる中で、法定の保険料がどのように変わるのかを知っておくことは、安定した経営のために欠かせません。
雇用保険料は全体で1.35パーセントになる方針
現在、多くの事業所における雇用保険料率は全体で1.45パーセントとなっています。これが2026年4月からは1.35パーセントに引き下げられる見込みです。2年連続の引き下げとなりますが、その内訳を見てみましょう。
雇用保険料は、大きく分けて3つの柱で構成されています。
・失業等給付:失業した際の手当などの財源
・育児休業給付:育児休業中の給付金の財源
・雇用保険二事業:雇用の安定や能力開発のための財源
今回の変更では、このうち失業等給付の料率が現在の0.7パーセントから0.6パーセントに下がります。一方で、育児休業給付(0.4パーセント)と二事業(0.35パーセント)の料率は据え置かれる方針です。
なぜ保険料が下がるのでしょうか
保険料が下がる大きな理由は、全国的に雇用情勢が堅調で、失業手当を受け取る人が想定よりも抑えられているからです。
雇用保険制度には、緊急時のために蓄えておく積立金という仕組みがあります。この積立金の残高が一定の基準を超えて余裕がある状態、つまり弾力倍率と呼ばれる指標が良好な数字を示しているため、法律の定めに則って、労使の負担を軽くする調整が行われることになりました。
ただし、これまでの景気後退期にはこの積立金を取り崩して対応してきた歴史もあります。そのため、将来の不測の事態に備えて、全額を使い切るのではなく、一定の資金を確保しながらの慎重な引き下げとなっています。
▲第208回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会【資料】財政運営について
会社と従業員への影響
雇用保険料は、種類によって会社と従業員の負担割合が異なります。
失業等給付と育児休業給付の保険料は、会社と従業員で半分ずつ負担する、つまり労使折半となっています。今回の引き下げは失業等給付の部分ですので、会社側も従業員側も、それぞれ0.05パーセントずつ負担が軽くなります。
例えば、月給30万円の従業員がいる場合、従業員本人の負担額は月額で150円ほど少なくなります。会社側の負担も同様です。金額としては小さく感じるかもしれませんが、従業員数が多い事業所や、長期間の経営で見れば、決して無視できない数字です。
なお、雇用保険二事業の保険料については、全額を事業主が負担しています。こちらは今回は変更ありません。
給与計算での注意点
料率が変わるのは2026年4月分以降の給与からです。給与計算を自社で行っている場合は、システムの設定変更を忘れないようにしましょう。
特に、4月の給与をいつ支払うかによって適用される料率が変わるため注意が必要です。多くの会社では、4月に支払う給与から新しい料率を適用することになりますが、締め日と支払日の関係を事前に確認しておくと安心です。
沖縄は全国的に見ても離職率が比較的高く、労働者の入れ替わりが多い傾向にあります。入退社時の手続きだけでなく、毎月の正確な保険料計算を行うことは、従業員との信頼関係を築く第一歩となります。
専門家がお答えします(Q&A)
Q. 雇用保険料が下がることで、将来もらえる失業手当の額も減ってしまいますか?
A. いいえ、失業手当(基本手当)の給付額そのものが減るわけではありません。
保険料率はあくまで財源を確保するためのものであり、受け取れる手当の額は、退職前の給与額や年齢、被保険者であった期間などによって決まります。つまり、保険料の支払いが少し安くなっても、万が一の際の保障内容は変わらないということです。
Q. 建設業を営んでいますが、一般の事業と同じ料率が適用されますか?
A. 建設業や農林水産業、清酒製造業などは、一般の事業とは異なる料率が設定されています。
これらの業種は季節的な影響などにより雇用の変動が大きいため、一般の事業よりも少し高い料率となっています。2026年度の正確な料率については、今後発表される詳細を確認する必要があります。専門家に相談することで、自社の業種に合った正確な計算方法を確認できるメリットがあります。
| 期間 | 雇用保険料率(全体) |
|---|---|
| 2025年度(令和7年度) | 1.45パーセント |
| 2026年度(令和8年度)予定 | 1.35パーセント |
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



