従業員との「別れ」で揉めないための正しい手順と心の準備

沖縄県内でも人手不足が叫ばれる昨今、せっかく採用した従業員には長く活躍してほしいと願うのが経営者の本音です。しかし、無断欠勤を繰り返す、業務命令に従わない、あるいは職場の和を乱すといった問題に直面し、苦渋の決断として「辞めてもらうしかない」と考える場面があるかもしれません。

特に沖縄は横のつながりが強く、悪い噂はすぐに広まります。また、近年はインターネットで労働者側も知識をつけており、感情に任せた対応は、後々「不当解雇」として訴えられる大きな火種となりかねません。

今回は、経営者が知っておくべき「労働契約終了」のルールについて、解説します。会社を守り、かつ従業員の尊厳も守るための「正しい手順」を一緒に確認していきましょう。

 

「解雇」は最後のカード

まず理解しておきたいのは、法律における「解雇」の重みです。解雇とは、従業員が「働きたい」と言っていても、会社側が一方的に契約を終わらせることを指します。これは、相手の生活の糧を奪う非常に強い力であるため、法律(労働契約法)によって厳しいブレーキがかけられています。

裁判になった場合、裁判官は主に2つのフィルターを通して、その解雇が正しかったかを判断します。

1つ目は「就業規則などのルール違反があるか」です。遅刻や業務命令違反など、会社のルールに反した事実があることが大前提です。

2つ目は「社会的に見てやりすぎていないか」です。これが非常に重要です。例えば、数回の遅刻ですぐにクビにするのは、罪と罰のバランスが取れておらず「やりすぎ(権利の濫用)」と判断される可能性が高くなります。過去の裁判例でも、能力不足を理由とした解雇について、会社側が十分な指導や教育を行っていなかったために無効とされたケースがあります。

つまり、解雇が認められるためには、「会社として指導・教育を尽くしたけれど、それでも改善されなかった」という事実の積み重ねが必要なのです。

 

沖縄に多い「有期契約」の落とし穴

沖縄県の雇用情勢の特徴として、契約社員やパートタイマーなどの「有期雇用(期間の定めのある契約)」の割合が高いことが挙げられます。「契約期間が終われば自動的に終了できる」と考えている経営者様も多いですが、ここにも注意が必要です。

契約書上は「1年更新」となっていても、実態として何年も自動更新を繰り返していたり、「次も更新するからね」と期待させるような発言をしていたりする場合、従業員には「次も働けるだろう」という期待(期待権)が生まれます。

この期待が法的に保護されるレベルになると、会社が一方的に「今回は更新しません(雇い止め)」と告げても、解雇と同じように厳しいルールが適用されることがあります。契約満了で終了する場合でも、あらかじめ面談を行い、更新しない理由を丁寧に説明するなど、誠実なプロセスが求められます。

 

「辞めてやる!」と言われた時の対応

感情的になった従業員から「もう辞めてやる!」と言われた経験はないでしょうか。これを「退職の申し込み」と受け取って即座に手続きを進めるのは危険です。

過去の裁判例では、興奮状態での発言は「真意(本心)」ではないとして、退職が無効とされたケースがあります。売り言葉に買い言葉で「じゃあ辞めろ」と返すのではなく、まずは冷静になる時間(冷却期間)を置くことが大切です。

その上で、後日のトラブルを防ぐために、必ず「退職届」という書面を提出してもらいましょう。「いつ、誰が、確かに辞めると言ったか」という記録を残すことが、会社を守る最大の防御策となります。

 

指導の記録が会社と従業員を守る

解雇や雇い止めといった重い判断をする前に、経営者がすべきことは「記録」です。

・いつ、どのような問題行動があったか

・それに対して、いつ、誰が、どのような注意

・指導をしたか ・本人はどう答えたか

これらをノートや日報に具体的に残してください。これは裁判対策のためだけではありません。記録を見返すことで、「こちらの指導不足だったかもしれない」「配置転換をすれば輝くかもしれない」という、解雇以外の解決策が見えてくることもあるからです。

人を大切にするということは、甘やかすことではありません。ダメなことはダメと伝え、改善のチャンスを与え、その過程を誠実に記録する。この積み重ねこそが、紛争を未然に防ぐ唯一の方法です。

 

まとめ

専門家がお答えします(Q&A)

Q. 何度注意しても遅刻が治らない社員を、すぐに解雇できますか?

A. 「すぐに」解雇するのはリスクが高いです。
まずは口頭注意、次は始末書の提出、その次は出勤停止など、就業規則に基づいた段階的な処分(懲戒処分)を行い、改善の機会を与える必要があります。これらの指導を行っても改善が見られないという記録があって初めて、解雇の正当性が認められやすくなります。つまり、我慢の限界で突然クビにするのではなく、手順を踏むことが重要ということです。

Q. 「退職勧奨」と「解雇」は何が違うのですか?

A. 決定権が誰にあるかが違います。
「解雇」は会社側の一方的な通告ですが、「退職勧奨」は「辞めてもらえないか?」と会社がお願いし、従業員が「合意」して初めて成立するものです。退職勧奨であれば、双方が納得して雇用契約を解消するため、トラブルになりにくいというメリットがあります。ただし、執拗に退職を迫ると違法な「退職強要」になるため注意が必要です。

項目 解雇 退職勧奨(合意退職)
決定権 会社の一方的な意思表示 従業員の同意が必要
リスク 不当解雇として訴えられるリスクが高い 合意形成ができればリスクは低い
必要なもの 就業規則の根拠、正当な理由、解雇予告 話し合いの記録、合意書

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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