「厳しく指導したら、翌日から来なくなってしまった」 「注意したいけれど、パワハラと言われるのが怖くて何も言えない」
沖縄県内の経営者様から、このようなご相談をいただくことが増えています。 特に沖縄は全国的に見ても若年層の離職率が高く、慢性的な人手不足に悩む企業が少なくありません。「せっかく採用したのに辞められたら困る」という不安から、部下の顔色をうかがってしまう。その結果、本来必要な指導ができず、組織の規律が緩んでしまうという悪循環が起きています。
ハラスメント対策というと、「言葉遣いに気をつける」「アンケートをとる」といった表面的な対策に終始しがちです。しかし、本質的な解決策は、上司個人の性格を変えることではなく、会社の中に「叱らなくても伝わる仕組み」を作ることにあるのです。
今回は、ハラスメントを恐れずに、堂々と部下を育成できる組織にするためのヒントをお伝えします。
なぜ「熱心な指導」がハラスメントになってしまうのか
「部下に成長してほしい」という熱意があるのに、なぜそれがハラスメントと受け取られてしまうのでしょうか。 その大きな原因の一つは、指導する側に「余裕(キャパシティ)」がないことです。
忙しすぎて時間がない、プレッシャーがかかっている、あるいは私生活での悩みがある。こうした「心のバケツ」がいっぱいの状態で部下のミスに直面すると、理性が効かなくなり、つい感情的な言葉が出てしまいます。 沖縄特有の「飲みニケーション」の場でも同様です。お酒で理性が緩んだ状態で指導を行えば、意図せず相手を傷つける表現になりかねません。
また、会社として「何が良くて、何が悪いか」という基準(ルール)が曖昧なことも原因です。基準がないため、上司は自分の「感覚」や「感情」で怒ってしまいます。受け取る部下も「課長の機嫌が悪いから怒られた」と捉えてしまい、反発心が生まれるのです。
「感情」ではなく「ルール」で向き合う
ハラスメントを防ぎながら適切な指導を行うための鍵は、「感情」を捨てて「ルール」で語ることです。これを私たちは「マネジメントの仕組み化」と呼んでいます。
例えば、交通違反の取り締まりをイメージしてください。警察官はドライバーに対して個人的な怒りをぶつけることはありません。「一時停止違反がありましたね。だから反則金です」と、事実とルールに基づいて淡々と処理します。これと同じことを会社でも行うのです。
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感情で怒る:「なんでこんなこともできないんだ!やる気あるのか!」
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ルールで指導する:「就業規則の第○条にある通り、この手順は守る必要があります。今回は手順が守られていなかったので、改善してください」
このように、会社のルール(就業規則や評価制度)という「モノサシ」を使って指導すれば、そこに感情が入る余地はありません。上司も「私が怒っているのではなく、会社のルールとして伝えている」というスタンスをとれるため、精神的な負担が減りますし、部下も「上司の機嫌」ではなく「自分の行動」に目を向けるようになります。
信頼関係を作るための「心の余白」
もちろん、ルールだけで人が動くわけではありません。普段からの信頼関係があってこそ、厳しい指導も受け入れられます。
そのためには、経営者や管理職が「心の余白」を持つことが重要です。現場のリーダーに業務を詰め込みすぎていませんか? ハラスメントが起きやすい職場は、総じて余裕がありません。経営者の役割は、現場のリーダーが理性を保って部下と向き合えるよう、業務量を調整し、組織全体に「余裕」を持たせることです。
「感情」ではなく「仕組み」で人を育て、「余裕」を持って接する。 これこそが、離職を防ぎながら強い組織を作るための、最も確実なハラスメント対策なのです。
まとめ
専門家がお答えします(Q&A)
Q. 部下にミスを指摘したいのですが、パワハラと言われるのが怖くて言えません。
A. 事実とルールに基づいて伝えれば問題ありません。
大声を出したり人格を否定したりせず、「どの行動が」「会社のどの基準に反しているか」を具体的に伝えてください。感情的にならず、業務改善のための助言として伝えることが大切です。つまり、怒るのではなく「教える」「正す」という姿勢を持つということです。
Q. メンタルヘルス不調を訴える社員への対応に困っています。
A. 自己判断せず、専門家と連携して慎重に進めましょう。
無理に退職を促したりすると法的な問題になる危険があります。医師の診断を仰ぎつつ、休職制度の活用や業務内容の調整など、就業規則に基づいた適切な対応が必要です。
| これまでの指導(属人的) | これからの指導(仕組み化) |
|---|---|
| 「俺のやり方に従え」と感情で怒る | 「会社のルール」を基準に諭す |
| 上司の機嫌によって言うことが変わる | 誰が言っても基準が一貫している |
| 部下が反発し、ハラスメントのリスク増 | 部下が納得し、成長につながる |
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



