「試用期間なら辞めさせても大丈夫」は大きな誤解。沖縄の経営者が知るべき正しいルールと社会保険

沖縄でも多くの企業が採用時に設けている「試用期間」。 「最初の3ヶ月は様子見期間だから、合わなければ契約を終了すればいい」「社会保険は本採用になってからで大丈夫」 もし、そのように考えているとしたら、少し注意が必要です。

実は「試用期間」を巡るトラブルは非常に多く、経営者が「お試し期間」という軽い感覚で対応してしまうと、後から法的な問題に発展することがあります。 今回は、試用期間に関するよくある勘違いと、会社を守るための正しいルールについて、わかりやすく解説します。

 

試用期間は「仮採用」ではありません

まず押さえておきたいのは、試用期間中であっても、法律上はすでに「労働契約」が成立しているということです。 「お試し」という響きから、アルバイト感覚や仮の契約だと思われがちですが、法的には「解約権留保付労働契約」と呼ばれ、すでに御社の立派な従業員です。

つまり、労働基準法や最低賃金法などの法律は、入社初日から全面的に適用されます。 沖縄県の最低賃金を守ることはもちろん、残業があれば残業代を支払う必要がありますし、仕事中にケガをすれば労災保険の対象になります。

「試用期間だから」という理由だけで、給与を最低賃金より低くしたり、労働条件を曖昧にすることはできません。

 

「相性が悪いから契約終了」はリスクがあります

最も多い誤解が、「試用期間中なら会社側の判断で自由に契約を終了(本採用拒否)できる」というものです。

確かに、試用期間は適性を見極める期間であるため、通常の正社員に比べれば、契約を終了するための範囲は少し広いとされています。 しかし、それでも「気に入らないから」「なんとなく合わないから」といった理由で一方的に本採用を見送ることはできません。

過去の裁判例でも、会社側が「能力不足」を理由に本採用を拒否したケースで、「指導不足であり無効」と判断された事例があります。 人を雇う以上、会社には「育てる義務」があると考えられているのです。 もし、「能力が足りない」と判断する場合でも、具体的な指導を繰り返し行った記録や、改善のチャンスを与えた事実が必要になります。

 

知っておきたい「14日ルール」

ただし、法律には例外もあります。それが「14日ルール」です。

通常、会社側から契約終了(解雇)を伝える場合、30日以上前に予告するか、30日分の予告手当(給与)を支払う必要があります。 しかし、試用期間中の従業員で、入社してから「14日以内」であれば、この予告や手当なしで即時に契約を終了できるという特例があります。

ここで注意が必要なのは、この「14日」は出勤日数ではなく、カレンダーの日数(暦日)で数えるという点です。 例えば4月1日に入社した場合、4月14日が期限となります。4月15日になってしまうと、たとえ試用期間中であっても、契約を終了するには30日前の予告か手当の支払いが必要になります。

この計算を間違えてトラブルになるケースが多いため、日付の管理は非常に重要です。

 

社会保険は「入社初日」からが原則です

もう一つ、非常に多い勘違いが社会保険(健康保険・厚生年金)の加入時期です。 「試用期間が終わって、本採用が決まってから加入手続きをする」という運用をしている会社を見かけますが、これは基本的にNGです。

正社員と同じ時間(またはそれに近い時間)働くのであれば、試用期間の有無にかかわらず、入社初日から社会保険に加入させる義務があります。 「2ヶ月以内の契約なら加入しなくて良い」というルールもありますが、試用期間が3ヶ月や6ヶ月と決まっている場合や、最初から長く雇用する予定がある場合は、この例外には当たりません。

もし未加入のまま放置し、後から年金事務所の調査が入ると、過去にさかのぼって保険料を請求されることになります。その場合、会社だけでなく従業員本人にも多額の負担がかかってしまいます。 働く人の安心のためにも、入社手続きと同時に加入手続きを行うことを強くおすすめします。

 

まとめ

専門家がお答えします(Q&A)

Q. 能力不足を感じる社員を、試用期間満了で本採用見送りにできますか?

A. 簡単ではありません。
単に「期待外れだった」という理由だけでは認められないことが多いです。会社としてどのような指導を行い、どう改善されなかったかという具体的な記録が必要です。まずは本人とよく話し合い、指導の機会を設けることが先決です。

Q. 試用期間中に給与を低く設定することは可能ですか?

A. 最低賃金を下回らなければ可能です。
ただし、求人票や雇用契約書にあらかじめ「試用期間中の給与額」を明記しておく必要があります。また、沖縄県の最低賃金を下回ることはできません。

Q. 試用期間を延長することはできますか?

A. 条件付きで可能です。
就業規則に「延長する場合がある」という規定があり、かつ延長する合理的な理由が必要です。なんとなく判断できないからといって、無制限に延長することはできません。

項目 試用期間中の取扱い
社会保険・雇用保険 入社初日から加入が原則
解雇予告義務 14日以内なら不要(以降は30日前の予告が必要)
残業代 支払う義務がある
最低賃金 沖縄県の最低賃金以上が必要

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このコラムを書いている人

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玉城 翼(たまき つばさ)

社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士

沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。

2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。

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