観光業の回復や建設需要の高まりにより、沖縄県内の人手不足感は依然として高い状態が続いています。事業を拡大するために、新しく正社員やアルバイトを雇い入れようと考えている経営者様も多いのではないでしょうか。
「忙しいから早く来てほしい」「細かいことは働きながら決めよう」と、口約束だけで雇用をスタートさせてしまうと、後々大きなトラブルにつながることがあります。
労働基準法は、働く人のための法律というイメージが強いですが、実は「ルールを明確にすることで会社を守る」ためのものでもあります。今回は、初めて人を雇う際に必ず押さえておきたい3つのポイントを、わかりやすく解説します。
「口約束」はトラブルの元!条件は必ず書面で渡す
採用が決まったら、「いつから」「いくらで」「どんな仕事をするのか」といった労働条件を、必ず書面で伝えなければなりません。これを「労働条件の明示」といいます。
法律では、以下の項目などを書面(労働条件通知書や雇用契約書)で渡すことが義務付けられています。
・契約期間(いつまで働くか)
・仕事をする場所と業務内容 ・始業と終業の時刻、休憩時間、休日
・お給料の決め方と支払日 ・退職に関すること(辞め方や解雇のルール)
書面がないと「言った・言わない」の争いになりやすく、結果として信頼関係を壊してしまいます。お互いが気持ちよく働くためにこそ、最初の書面交付が重要です。
お給料の支払いには「5つの決まり」がある
毎月のお給料(賃金)の支払い方にも、法律で定められた厳格なルールがあります。これを「賃金支払いの5原則」と呼びます。
・通貨払いの原則:日本円(現金)で支払うこと。銀行振込にする場合は、ご本人の同意が必要です。
・直接払いの原則:必ず本人に渡すこと。未成年の従業員でも、親に渡してはいけません。
・全額払いの原則:勝手に天引きをしてはいけません。税金や社会保険料など、法律で決まっているもの以外を引く場合は、従業員代表との協定が必要です。
・毎月1回以上払いの原則:少なくとも月に1回は支払う必要があります。
・一定期日払いの原則:「毎月25日」のように決まった日に支払います。「毎月第4金曜日」のような変動する設定はできません。
なお、沖縄県の最低賃金は毎年引き上げられています。知らず知らずのうちに最低賃金を下回っていた、ということがないよう、最新の金額を確認しておきましょう。
働く時間は「1日8時間・週40時間」が原則
法律上の労働時間の上限は、原則として「1日8時間、1週間に40時間」までと決まっています。これを超えて働いてもらう場合や、休日に出勤してもらう場合には、あらかじめ従業員の代表と書面で協定を結び、労働基準監督署へ届け出る必要があります。これを一般的に「36(サブロク)協定」と呼びます。
また、残業や深夜(午後10時から午前5時)、休日に働いてもらった場合は、通常のお給料に上乗せした「割増賃金」を支払わなければなりません。
・時間外労働(残業):2割5分以上
・休日労働:3割5分以上
・深夜労働:2割5分以上
「うちは小さい会社だから」という理由は通用しません。長時間労働は従業員の健康に関わる重大な問題です。適切な勤怠管理を行い、過重労働にならないよう配慮しましょう。
まとめ
専門家がお答えします(Q&A)
Q. アルバイトにも有給休暇を与えなければなりませんか?
A. はい、条件を満たせば与える必要があります。
雇い入れの日から6ヶ月間継続して働き、決められた労働日の8割以上出勤していれば、正社員だけでなく、パートやアルバイトの方にも年次有給休暇が発生します。働く日数や時間に応じて付与される日数が決まります。
Q. 試用期間中であれば、すぐに解雇しても大丈夫ですか?
A. いいえ、簡単には解雇できません。
試用期間中であっても、入社から14日を超えて雇用している場合は、解雇するために少なくとも30日前の予告か、30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。また、解雇には客観的で合理的な理由が必要です。
Q. 休憩時間はどのように与えればよいですか?
A. 労働時間の長さに応じて与える必要があります。
1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、仕事の途中で与えなければなりません。休憩中は電話番などをさせず、完全に業務から離れさせる必要があります。
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このコラムを書いている人
玉城 翼(たまき つばさ)
社会保険労務士/1級FP技能士/キャリアコンサルタント/宅地建物取引士
沖縄県宜野湾市出身。大学時代より地域貢献に関心を持ち、卒業後は販売・イベント・不動産業務など多分野を経験。その後、労務管理やキャリア支援に従事し、実務を通じて社会保険労務士を志す。
2021年より総務部門を統括し、給与計算・労務管理・制度改定・電子申請導入など業務改善を推進。社労士試験に一発合格し、2025年「つばさ社会保険労務士事務所」設立。地域の中小企業を支えるパートナーとして活動中。
▶コラム: 私が社労士になった理由



